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第六回学級裁判1

「はぁ、日付変わった途端にこれかよ……」


 足立がため息を吐いている。

 俺としても同じ気持ちだが、死人が出た以上は皆で議論して犯人を見付けないと。

 今回メンバーとしては俺から光葉、壱岐、小川、中田、大門寺、最上、田淵、足立、貝塚、原、坂東、榊、賀田、井筒、木場、十勝の順だ。

 俺の隣に十勝が来たのはジャンケンで勝利したからのようだ。

 全員で楽しげに行っていたのだが、その間に光葉が俺の隣に来たことで勝利者は一人だけになってしまい、準優勝だった壱岐が悔しそうにしていた。


「それで、今度は何が起こったんだ」


「居ないのは……山田?」


 小川がどうでもいいといった様子で告げる。

 周囲を見回した榊が気付く。

 そう、居ないのは一人だけ。山田だけだ。


「では私から事件について説明するわ。つい先ほど、音楽室で山田君が首を吊っていたらしいの」


「は? まさか自殺?」


「いえ。山田君が自殺するとは思えないわ。おそらく他殺。それに、沢木君が一人で調べていた時、後ろから襲撃されたらしいの。その後、誰かが山田君の遺体を音楽準備室に移動させたわ。私が見たのは準備室に横たわった山田君の死体と言う訳ね」


「どういうことだよそれ? 誰かが沢木昏倒させて山田の遺体移動させたってことか? なんのために?」


 本当に、何のためにだろうな?

 坂東の疑問に木場は苦い顔をする。


「それが分からないから調べるのよ。とりあえず、最初に発見した修から説明、貰える?」


「まぁ、俺が第一発見者じゃないけどな。第一発見者は最上。一緒に居た俺と足立、それから音楽準備室で話し合いをしていたらしい田淵と光葉だ」


 簡単に全員に説明する。


「沢木氏、それはつまり、田淵氏と忌引氏は山田氏の死体があるすぐ側に居たということか?」


「まぁ、そういうことだな。光葉、田淵、何か聞いたりしたことは無いか?」


「……そうね。ずっと準備室に居たけど何も聞いてないわ」


「……ん」


 田淵の言葉に光葉が頷く。

 なぜだろう。ただ肯定されただけの筈なのに疑惑が鎌首をもたげる。


「あー、それで、死体を見付けた俺は足立と最上に木場と大門寺を呼びに行って貰い、田淵と光葉に十勝を呼んで放送して貰うように指示出して一人で調べることにしたんだ」


「それはそれで怪しくも見えるな」


「でも坂東、沢木が発見した時には既に死んでたんでしょ。だったら問題ないんじゃない?」


「甘い、甘いぞ原! 第一発見者が犯人の可能性は高いじゃないか」


「いや、それだと最上になるじゃんか」


「……あ」


 やんのかコラ? と大門寺が睨むと、即座に視線を逸らす坂東。

 既に負けを認めているようだ。


「んじゃ沢木、そこでわかったことあるの?」


「一応な。おそらくだが山田は首を吊って殆ど時間が経っていなかった、あるいは気絶した状態で首を吊られたんだと思う。音楽準備室に移動してから見た山田の遺体は首吊り特有の現象が起きていたが、俺が最初に見た時は眼を瞑った状態で首に縄を……待てよ」


 記憶を手繰れ。本当に首に掛かっていたか?

 いや、確かに首に掛かっていた。

 ただ、その続きがあった筈だ。

 服の中に続いているロープを見た気がする。

 急に考え出した俺に、皆が注目する。


「修、自分の中でだけ納得しないで。何か覚えてるの?」


「え? あ、ああ」


 どう説明したものかと頭を掻く。


「いや、気のせいかもしれないんだが、俺が見た首吊り死体、まぁ山田なんだがな。首に括った縄がそのまま背中に回ってたようなきがするんだよな」


「なんだそりゃ?」


「それ……もしかしてその時は山田が生きてたって言いたいの?」


「可能性の段階だがな。いや、でもそれがフェイクで既に死んでたということも……」


「結局なんなんだよ?」


 焦れた坂東がイラッとした顔で告げる。


「ああ、スマン。とにかく俺は山田の首吊り死体と思われる遺体周辺を調べたんだ。床に三つの証拠品を見付けた。それと……」


 言葉を止め、困ったように光葉を見る。

 光葉は気付いてないようで、小首をかしげてみせた。

 うん、可愛らしい。コレが三十代とかまずあり得ないって。それだったらロリババァとか妖怪でン千年生きてますと言われた方が納得できる。


「それと、山田が学生証を握ってた」


「学生証?」


「ああ。光葉の学生証だ」


 告げられたことで光葉が驚き慌てた様子で学生証を探す。

 しばし探していたが、どうやら持っていないようだ。

 一瞬にして顔を青くする。


「おいおい、そりゃぁ沢木、自分の彼女を犯人だッつーわけか?」


「まだ犯人だとは言ってないぞ坂東。事実を述べただけだ。光葉の学生証を山田が持っていた。といっても、次の瞬間後ろから誰かに襲われて気を失ったんだけどな」


 まだ痛いんだこれが、コブになるかもしれないな。

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