表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/246

第一回学級裁判3

「おいおい、どーなってんだよ!?」


 足立が焦ったように告げる。どうでもいいが足立って2班の不良チームと3班のオタクチームに居るんだよなぁ。足立次郎と足立飽戸。分かりにくいからモヒカンとデスゾとでも脳内変換しとこうかな。


「誰だよっ! 誰なんだよ伊織を殺したクソ野郎はッ!!」


 小川の怒声に皆が押し黙る。

 視線で互いを見合いながら、お前だろ? ちげーし。お前自首しろって。やってねーよ。

 と互いを牽制し始める。


「そ、そうだ。食事作ってるから、まずは食べよう? それで落ち付いてから改めて……ごめんなさいなんでもないです……」


 井筒が提案してみたものの、小川に睨まれ尻すぼみに声を無くしてしまった。

 しばし、皆が押し黙る。

 何もしてない筈なのになんだか怒られているような気分である。


「あー、小川よ」


「……なんだ大門寺?」


「本当に、お前と会った後に10分で間違いないんだな?」


「……そこまでの確証は無い。でも体感的にはそれくらいだ。何しろ教室の椅子に座って一息ついてただけだからな。伊織が用があるからちょっと行って来るって出て行ってからは俺は教室から一歩も外に出てない」


 体感で10分も結構長い気はするけどな。

 それでも寝ても無い訳だからほぼ正確な時間と見てもいいだろう。

 さて、となるとだ。もう一度アリバイを整理して行こうか。


 俺達が悲鳴を聞く手前の時間、オタクチームである貝塚、御堂、デスゾ、山田、篠崎、原は視聴覚室だったかでゲームをしていた筈だ。

 教室から出てなければ彼らは白だろう。


「貝塚」

「ん? なんぞ?」

「お前達のチームで誰かトイレ行った奴いるか?」

「いや。いなかったはずだけど、どうだ皆?」

「ゲームに夢中で他人など見てなかったぞなもし」

「あはは、私も見てなかったなぁ」

「烈人と拙者がちゃんと見てたから大丈夫だ」

「流石山田氏。良く目端の効く男ですぞー」

「まぁ、とりあえず、トイレに行ったりはしてなかったわよね。気付いたらトイレ行きたくなって来たんだけど……行って来ちゃダメ? だよねー」


 篠崎が控えめに言うが小川に睨まれ苦笑い。

 誰でもいいから早く犯人見付けてくれとトイレを諦めた顔になった。

 後確認すべきことは……


「大門寺」

「あ゛?」

「いえ、大門寺サン。屋上の方でトイレに行った人とかは?」

「俺と明奈はずっと屋上にいた。他の奴は知らん」

「ちょ、私達は犯人じゃありませんわよ!? トイレにも行ってないですし屋上でずっと空見てましたわ」

「えー。佳子それ証明出来る人いるのー?」

「う、煩いわね眞果。い、いますわよ。屋上には大門寺さんと最上さん、あと壱岐くんもいらっしゃいましたし。ねぇ壱岐くん」

「え? 何? 聞いてなかった」

「おいっ!?」

「屋上からどっかいったりしたか? あと屋上にいた誰かが下に降りたとか?」

「え? 知らないよ。僕が他人の行動なんていちいち注意するわけないだろ」


 ごもっともである。

 とりあえず屋上は四人もいたにも関わらず誰も周囲の人物に気を配っては居なかった……と。どんだけ他人に興味無いんだこいつ等。


「あ、あの……皆、ずっと屋上、でした……よ?」


 控えめな声で、最上が告げる。


「本当かよ?」


「あ゛?」


「いえ、ナンデモアリマセン大門寺サン」


 香中が疑わしげに告げるが、大門寺に一睨みされて押し黙る。


 というわけで、だ。オタクチームは無理、屋上組も無理、小川オッカケ三人組もトイレで互いのアリバイをフォローできてるし、小川もシロ、キャッキャウフフしていた香中と田淵もシロ、追いかけっこしていた足立と高坂もシロ。

 食事を作っていた井筒と及川、剣道場で瞑想していた賀田とそれを覗き見していた坂東、榊、三綴もシロ。

 ならば、消去法でも残ったのは……


「……変ね。誰かが嘘を吐いて……」


「嘘を吐く必要はない」


 気付けば、思わず声が出ていた。


「沢木?」


「思い起こせば、これは単純な事件だ。トリックなんか一つもない」


 そうだ。一つもない。単純すぎる衝動殺人だ。


「小川、一つ聞きたい」


「……なんだ?」


「このストラップ、知ってるか?」


 俺は預かっていたストラップを取り出す。


「ああ。俺達三人・・の友情の証だ。同じの付けてんだ」


「牧場のスマホには着いてた。お前は?」


「あるよ。これだ」


 見せてくれたストラップで、犯人は確定した。


「犯人が分かった」


「は? 今ので……まさ、か」


 小川も気付いた。というか、気付かない訳にはいかないだろう。

 何しろ同じストラップを持つ者は三人しか居ないのだ。

 二人が持っていれば千切れたストラップの持ち主は一人しか居ない。


 そう、初めからこれは犯人が分かり切った殺人事件だった。

 牧場を購買倉庫に誘ったのは?

 購買に俺達より先にすでにいたのは?

 牧場の首を絞め殺した犯人は……


 すっと、俺を腕を持ち上げ指先をそいつに向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ