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過去日記1

 大量の死者に土を被せた俺たちは、シャワーを浴びて夕食を取ることになった。

 時間的にもいい時間だったし、むしろシャワー浴びたせいで他のメンバーより遅く食堂に向かったせいで坂東たちに食事まだか。と怒られてしまった。

 といっても井筒が申し訳なさそうにもうちょっと待ってね? と告げただけで鼻の下伸ばして許してたけど。


 この時間になると所沢も戻ってきており、今回は全員が食堂に顔を出した。

 まぁ小川と中田は十勝たちが無理やり引っ張ってきた感じになってしまったが。

 山田の奴もじぃっと俺達を見つめながら食事をしている。

 本当に、こいつは一体何に気付いたのだろうか?


 食事を終えると俺は足立と田淵に連絡を入れ、話し合いの時間を取って貰う。

 木場はコレを察していたようで、他のメンバーが俺に近づかないよう食器を洗うように促す。

 その為俺はしばしの自由行動ができるようになったのである。


 保健室に向かい、先に戻っていた足立と田淵と会談する。

 今回は丸椅子を三つ使っての対面式対談らしい。

 既に白衣装備の田淵はにこにことしており、足立は顔を赤くして俯いている。

 なにがあったのかは聞く必要はないだろう。

 とりあえず二人の趣味には口出ししないようにして、俺は入手した箱を二人に見せる。


「これは?」


「皆で探索中に見つけた。まずは中身を見てみたい」


「そう。なら前置きは省いて見てみましょうか」


 田淵に促され、箱を開く。

 上蓋を取ると、中にはノートが一冊。それと、写真?


「随分古いわね」


「これは……たぶん昭和くらいの学生のモノだ。図書室の切り抜きにあった面子だな、これだ」


 図書室の切り抜きを持って来たので田淵に手渡す。

 切り抜きを読んだ田淵は眉根を寄せて呻く。


「それは、卒業者名簿を見た方がいいかしら。あとで校長室で調べておくわ」


「頼む」


「それと……このノートは何かしらね」


 俺は言われるままにノートを開く。

 こちらに回り込んで来た田淵が覗き込めば、俺と田淵の距離が近いことに気付いた足立がおもしろくなさそうな顔をする。


「あら次郎、やきもち?」


「ち、ちげぇし」


「気になるなら貴方も来なさい。ほら、そっちから覗いて」


「チッ仕方ねぇな」


 ブツクサ言いながらも左隣から覗いて来る足立。

 左右から視線を感じてちょっと居づらいが、真ん中でノートを開く役目を担わされているので仕方なくそのままノートに視線を向ける。


「これ、日記帳?」


 それは生徒の一人だろう少年の日記だった。

 日記を書き始めたのは二日目かららしく、最初に一日目にあった事をダイジェストで書いてあった。

 始まりは俺たちのように、突然旧校舎の教室で目覚めたらしい。

 その頃は木造校舎で三階建。

 校舎内に人気はなく、自分たちのクラスだけが取り残されていた。


 さっさと家に帰ろう。そう思っていた彼らは、校舎の窓から見えた虹色の靄で一頻り騒ぎ、確認の為に我の強いガキ大将が一人、虹の靄の先へと向かって行った。

 当然、ちょっと行って戻ってくると言っていたのに二日目に入った今も帰ってきていないそうだ。


 一時間程待っても戻って来ないガキ大将に、流石に不安が募ったらしい生徒たちは、委員長が食事を取ろうと告げたことで食堂へ移動、その日は食事を取って寝ることにしたのだそうだ。

 だが、そこで事件が起こった。

 先生など大人が居ないことに気付いた少年が、少女をレイプしたのだ。

 当然少年は槍玉に挙げられたが、この事件で皆は自分たちの行動が大人に知られることがないことに気付いてしまった。


 女性陣は塊り、男性陣から距離を取り出し、男性陣は力の強い者が上下関係を作りだし実効支配を始めた。

 しかし、均衡はすぐに破れた。

 次の日を迎えるより早く。一番の強者を気取っていた男性が下剋上を受け殺されたのである。

 殺した少年は事前に殴られ、裸に向かれ、女性の代わりに性の捌け口にされていたそうだ。

 日記を記した少年はその辺りは無関係だったようで、他人事として書かれていた。


 ただ、この事件をきっかけに、気に入らない人物は殺せばいい。

 そんな風潮が流れ始めた。

 男達は互いに上に立つために殴り合いを始め、殺し合いへと発展する。

 ここから逃げた負け犬たちはなんとか女性陣の元へ行こうとするも拒絶され、二日目には三つのグループに別れたそうだ。


 日記の少年は負け犬組。弱肉強食組には付いていけなかったそうで、メガネの委員長たちと別の教室に向かったようだ。

 これからどうなるのだろうか、と不安げな内面を日記に書きなぐっていた。

 

「切っ掛けは同じみたいね」


「ああ、俺達と違うのは大門寺さんクラスの奴が乱暴過ぎたことか」


「香中が生きてたら俺達もこうなってたかもな」


 思わず呟いてしまった俺を誰か殴り飛ばしてくれ。こいつ等に香中の話題は失敗だった。

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