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校内探険6

 人数分のスコップを持って大門寺と二人戻ってくる。


「あれ? 光葉は?」


「忌引さんなら最上さんとトイレに行ったわ」


「もう少ししたら戻ってくるんじゃないかな」


 木場と壱岐が俺の質問に反応する。

 そうか、光葉はトイレに行ったのか。

 最上と連れションとか珍しいな。


「明奈とか? 今の明奈が他人と一緒に行くとは思えんのだが……」


「おいおい、引っ込み思案な光葉と最上だし気があったんじゃないのか?」


「あ゛? 明奈が引っ込み思案だってのか?」


「ええ!? そこ凄む所!?」


 俺の何気ない言葉に過剰反応する大門寺。お前最上のことに反応し過ぎだよ。


「どうせすぐに戻ってくるわ。ほら、男手あの辺り掘ってみて」


「うわーお、全員分持って来たのに掘るのは俺らだけかよ」


「チッ。付いてくるんじゃなかった」


 俺と大門寺が文句を言いながら言われた場所を掘って行く。

 流石に数メートル掘ったりはしないだろうから少し掘ったら少しずらして別の場所を掘るを繰り返す。

 五回目の移動の時だった。

 ガッと音がなり、硬い何かにスコップが阻まれる。


「何か当った?」


「それが目的の場所か?」


「分からんがこの辺りだろ」


「おし、重点的に掘るぞ」


 大門寺が掘るのを中断して俺の元へやってくる。

 女性陣も見付ったからだろう。近くに来て周辺の土を掘り始めた。


「ヒィッ!?」


 最初に気付いたのは壱岐だった。

 露出したそれを見て飛び退き、尻持ちを突く。


「どうしたの壱岐く……き、きゃああああああああああああああ!?」


 近くに居た井筒が土から出て来たそれを見て悲鳴を上げた。

 なんだなんだと俺達も横から覗き見て、ゾッとした。

 俺達以外の誰かの骨が、そこに埋まっていたからだ。


 既に分解され脆くなった骨が出土し、シャレコウベが恨めしげにこちらを睨んでいた。

 俺の掘った場所は何らかの箱だったのだが、その近くには骨が埋まっていたようだ。

 木場が真剣な顔で顎に手を当てる。


「どうした木場?」


「これ、私達が埋めた訳じゃないわよね?」


「ああ。俺達が埋めたのは今小川が居る辺りだ」


「じゃあ……まさか!」


 木場は何かに気付いたようでスコップを握り直し骸骨周辺を掘り始める。


「ちょ、ちょっと木場さん!?」


「皆お願いッ、手伝って!!」


「手伝うって、いや、良いんだけどさ」


 鬼気迫る表情で掘り始めた木場に、皆は恐る恐るガイコツ周辺を掘って行く。


「ひえぇ、なんまいだぶなんまいだぶっ」


「墓を暴いている気分だ」


「違いますよ賀田さん。気分じゃなく私達、多分墓を暴いてます」


「十勝? どういうことだ?」


「見てください、これ、他の骨が出てきました。しかも頭蓋骨。少なくとも二人以上ここに埋まってます」


「こっちは足が出て来たよ。しかもこれ、制服着てる!?」


 壱岐が、十勝が、賀田が無数の骸骨を発掘する。

 一時間程掛けて周辺を掘り進めた俺達の前には、四十人くらいの骸の群れが暴きだされていた。

 なんだ……これ? なんで俺たちの学校の校庭に、こんなに大量の骸骨が……?


「本当に……居た」


「木場?」


 ふらふらと、木場は骸の一つに歩み寄る。

 何が居たのか、旧式セーラー服を着た骸に近寄ると、懐から何かを取り出す。


「お父さん、見つけたよ。お父さんの恋人……」


 取り出したのは白い何か。

 骸の手を取った彼女は、その白い何かを骸に握らせる。


「来世では……一緒に幸せになってね?」


 木場……?

 初めて見る涙を流す木場の姿に、俺たちは何も言えずにただ立ち尽くす。

 木場の父親らしき人がこの位相世界に巻き込まれていたのは分かっていた。

 つまり、本来木場のお母さんになるかもしれなかった女性は、ここで死んだのだ。


「き、木場さん、何、してるの?」


「それは……後で、話すわ」


 何かを口にしようとして、光葉と最上が戻って来たのに気付き言葉を噤む木場。

 今のは、光葉を見て言葉を止めた?

 木場の父親と忌引光葉という卒業生が位相世界に巻き込まれたって事実もあるし、木場の奴、光葉の眼を気にしているのか? 何のために?


「何……これ?」


 最上が戦慄した顔で告げる。

 はっと気付いた大門寺が最上の元へ駆け寄ると、彼女の眼を塞ぐ。


「見るな明奈。ほら、校舎に戻ろう」


「え? う、うん?」


 そして大門寺に促されるようにして校舎に戻っていく大門寺。

 あれ? そうなるとこれ、俺らで埋め直すことになるのか?


「これ……もしかしてだが、今までの死者、なのか? 私達がこの世界に来るより前にここに連れて来られた学生たちの?」


「ちょ、ちょっと待ってよ。ほら、天ちゃん、この人スーツだよ?」


「それ、先生なんじゃ……」


 呆然としていると賀田、井筒、壱岐が騒ぎ出す。

 すぐさま動いたのは木場。

 俺が暴きだした箱を入手し、俺に寄ってくる。


「これ、足立君達と開きなさい」


 手渡す時に耳元で囁く。どういうことだ? と告げるより早く、箱を俺に持たせて皆の元へ向うと手を叩く。


「ほら、皆早く御墓に土を被せましょう。流石にこのままだと祟られるわよ」


 木場に促され、全員で遺骸を埋め直すことになったのだった。

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