校内探険4
裏庭にやってきた。
植えた植物はまだ芽すらもでていない。
そりゃあ植えて三日やそこいらではほうれん草ですらでてこないだろう。
あ、いや、何の葉っぱかしらんけど二本ほど出てるわ。
前々から育っていた植物にはしっかりと実がついているので新鮮な野菜を手に入れることは可能だが、流石にまだ俺達全員分の食材となると全然足りない。
そろそろ食料も少なくなっているし、節制を考えるべきだろうか?
ああ、でも、全員が揃っていたらと思うと殺人が起こったことはまだマシだったのかもしれない。
もしもこの日まで全員が生き残っていたら、多分食材が足らなくなって食料確保による大乱闘に発展していたことだろう。
そうなれば今よりももっと殺伐としていて、互いに互いを信じられない裏切りの連鎖が始まっていただろう。
つまり、今みたいに校内探索楽しいな。なんて状況にはならず、互いにテリトリー内を死守しつつ食糧確保の為に殺しやすい存在から奪い取って裏切って殺し合う状況になっていた筈だ。
それはおそらく、今までこの世界に飛ばされたしまった先達たちが体験したものなのだろう。
ある意味、大河内はそうならないために殺害を起こし、自らを殺すことで殺人は断罪されるもの。という制約を俺たちに掛けてくれたのかもしれない。
呪いと言えば呪いだが、今の俺達が理性的に行動出来るのは、最初の殺人が起こったことに寄る所が多いのかもしれない。
結局殺人が起きているのはどうかと思うが、結果的に人数が減ったことで俺たちは生き残っていると言っても良かった。
そう思える状況下なのがおかしいが、現実問題食料は一番のネックだ。
どうにか確保出来る状況にしておかないと今からでも食糧での殺し合いが始まりかねない。
一度誰かが始めてしまったらもう終わりだ。皆が殺しを許容してしまう。
「たぶん、この納屋の中ね」
はっと木場の言葉で我に返る。
変な考えをしていたが今の目的は宝探しである。
納屋に入った面々が捜索を開始する。
ただ、納屋の内部は狭いので俺達全員が入るとぎゅうぎゅう詰めで身動きが取れなくなる。
「ねぇ修……」
結局納屋に入らず見学組になった俺と木場。
暇を持て余したのか木場が尋ねて来た。
「どうした?」
「私達のこと、疑ってるんでしょ」
びくり、思わず身体が反応した。
誰にも聞こえないよう囁く声だったのだが、正直生きた心地がしない。
「な、なんのことだ?」
「足立君と田淵さん。こそこそやってたのはそのことでしょ?」
俺は答えない。答えられない。
しばし無言でいると、それを肯定と取ったのか、木場が話しだす。
「何を疑ってるの? 殺人者候補? 貴方を殺しそうな人物? それとも……この位相世界に連れて来た人物?」
位相……世界? なんだそれは?
木場、お前何か知って……?
俺が木場に視線を向ける。その時にはすでに木場はそこにおらず、納屋へと入って皆の捜索に参加していた。
今の言葉、どういうことだ?
位相世界? この世界はそう呼ばれている?
ならばなぜ、彼女はそう呼ばれることを知っている?
自分で今呼び名を考えたのか? それとも……
待て。確かに大河内も光葉も怪しいが。木場も候補者の一人だ。
何しろ前回の生存者には、木場姓の人物も生き残っていたのだから。
位相世界という呼び方、木場は親から聞いていた?
ならば脱出方法も知ってるのでは?
それよりもなによりも。大河内も木場も光葉も、前回の生存者の関係者と思しき人物が全員ここに集結してるのって、偶然か?
待てよ。こんな偶然がありうるとしたら、だ。最初に見つけた紙切れに載ってた二人の関係者、紛れ込んでてもおかしくない?
名前、分かるか?
卒業生名簿を見れば分かるかも?
確かあの切れ端は図書室に置いていたな。戻った時に調べてみるか。
とりあえず何期生に当るか調べて、卒業生の名前を調べて、いや、故人になるのか? そのあたりも調べないとダメか。確か卒業生名簿は校長室だったな。
じゃあ足立達に調べて貰うのがいいか。
夜食終了後に紙切れ渡して、その後調べて貰うのが良いかな。
そんなことを思っていると、納屋の捜索が終わったようだ。
木場が紙切れを持って出て来た。
「今度はどこだ?」
「それが……屋上みたい」
「屋上? そんな場所に隠すところなんてあるか?」
「さぁ? 行くだけ行ってみましょう? 多分この場所なら給水施設の辺りになる筈よ」
「タンクの中だったりしてな」
「流石に入りたくないわね。細菌が繁殖してそうだし」
「そっちの心配かよ」
「あら。病気になるのは危険だわ。特に今の状態だと、ね」
確かに病気は危険だ。医者にも掛れない状態だとただの風邪でも死に繋がりかねない。