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賭け卓球

 体育館に付くと、坂東と榊がそこに居た。

 何してんだこいつ等。と思ったのだが、どうやら女性陣の誰が良いかを二人で話し合っていたようだ。

 俺達を見て露骨に顔を顰めていた。

 というよりは俺を見て、かな。


「チッ、良い御身分だなリア充野郎」


「女性陣全員自分の物ってか。刺されて死ね」


「お前らな……」


「そういう性根だからモテ無いと思うんだけど」


「う、煩いよ木場ッ。クソ、俺達だってなぁ」


 悔しげに喚く榊。

 しかしどれ程叫んでも意味は無いと理解していたようで途中で押し黙る。


「ええい。勝負しろ!」


「は?」


「勝負しろ沢木! 俺達が勝ったら誰か一人の胸揉ませろ!!」


 お前らそれ、俺と勝負してどうなるってもんじゃないだろ。


「あら、面白そうね。どうせだからやってあげたら」


 いいのかよ。


「で、なにで勝負するの? バスケ? バレー?」


「「卓球だ!!」」


 なんでだよ!?


「いいか! リア充相手にバスケやバレーなんぞで俺達が勝てる訳ねぇだろ!」


「そうだそうだ! しかし卓球。しかも二対一なら勝ち目はある!」


 二対一ってことはこっちに助っ人は無しが限定じゃねぇか。そんなもん負け確定だろ。


「それは流石に一方的ね。こっちにも一人増やして二対二ならそれでいいわよ」


「い、いいだろう! それで勝負だ!」


 こいつ等、胸揉む為なら何でもやる気だぞ。本気で良いのか木場?


「じゃあ、誰か卓球得意な子は……」


 木場は周囲を見回す。

 しかし卓球が得意な人物は居なかった。

 十勝が首を横に振り、賀田が視線を逸らす。

 井筒は運動音痴ですっと自信満々に告げ、壱岐はゲームしかしないから。と身体を動かすことは苦手だと告げる。


 ここでようやく自分の失策を悟る木場。

 策士策に溺れる。

 二人対二人にすれば勝てるだろうと思っていたのにまさかのド素人しか居ない件。

 これではせっかくの提案も足を引っ張る要素にしかならない。


「参ったわね。私も得意じゃないわよ卓球」


「ふっ。勝ったな」


「さぁ、沢木、誰の胸を揉ませてくれるんだ。ぐへへへへ」


 両手をワキワキする榊。

 危ない人物にしか見えないし、こんなのに女性の胸を揉ませる訳にはいかない。

 全力で、叩き潰さねば!


 卓球台を用意してラケットを掴む。

 二対一なので俺側からサーブを打つ。

 なんというか、ふと思ったのだが、これ、二対一って逆にハンデなんじゃね?


 左右に撃つと、榊が打って、下がり、代わりに坂東が入って打ってくる。

 ダブルスやってるみたいだけど、なんて言うか、ミスが多くなってるだけなのでは?

 ほら、坂東が下がるのミスって榊の邪魔してるし。リズム崩れたらむしろ一人の方がやりやすくね?


「あ、クソ、榊邪魔だ!」


「お前が邪魔なんだよ!?」


 女性陣は苦笑い。その笑い声が二人のミスをさらに誘発させていく。

 なんだか知らんが俺が何かするより先に自分たちで自爆し始めてしまった。

 結果を見れば、最初こそ善戦したものの、徐々に崩れた坂東、榊ペアの大敗北で終わった。


 良かった。最悪俺の胸を揉むがいい。とか言わなくて本当に良かった。

 俺たちの内の誰かってことだからもう安全パイと言えば自分くらいしか思い浮かばなかったしな。双方最悪な思い出とならなくて本当に良かった。


 気落ちする二人が崩れ落ちると同時に、光葉が戻ってくる。

 あれ? 所沢の奴いなくなってるのか?


「所沢はどうした?」


「ん? あれ? 居ない?」


 今気付いたとでも言うように振り返って告げる光葉。不思議そうに小首を傾げる姿はとてもチャーミングだ。


「えっと、何、してたの? ぎるてぃ?」


 なぜコレを見てぎるてぃ案件を行っていたと仮定できるのか。

 最近その台詞言うのが楽しくなってきてるでしょ光葉。


「なんかもう、球技で遊ぶ気力がなくなったわね。どうしようかしら?」


「体育館で出来る遊びですか。うーん」


「お、おに、ごっこ、鬼ごっこでどうだ! 俺が鬼になる。他のメンバーは体育館内で逃げるんだ」


「榊、それ女性の身体に合法的に触ろうとしてるだけじゃ……」


「沢木、しー。しーっ!!」


「もう遅いわよエロ男」


 めげない榊に溜息を吐く木場。

 しかし、こう毎日やることがないと暇になってくるんだよな。

 図書館で本を読むのもいいけどあまり根詰めると飽きてくるし。

 木場や光葉は何時間でも本を読めるみたいだが、俺にそんな胆力は無い。


 そして油断すれば井筒に襲われぎるてぃ案件に陥る悪循環。

 後やれることと言えば校庭や体育館で身体を動かして遊ぶくらいか。

 流石に好き好んで勉強する奴は居ないみたいだし。

 でも、この非常時に遊ぶのもなんか違う気がするしなぁ。


「そう言えばお前ら聞かれたか?」


「ん? 何をだ?」


「ああ、山田の奴がさ、この学園に俺たち送り込んだの誰か分かったみたいで、相手の協力者を探してるみたいなんだよ。アイツ一人の犯行か調べてるとか言ってたが」


 全員に告げて回ってるのかあいつは。

 しかしそうなると……山田の目的になっている犯人の身が危険だな……

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