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第一回学級裁判1

「第一発見者は高坂佐代里と足立次郎。で、合ってたわね?」


「お、おう……」


「合ってるわ。私が逃げた先で見付けたの。部屋に入ったら誰かいて、こんな所に座ってどうしたのって近づいたら……凄い顔で死んでて……」


 死に顔を思い出したのか、何かが込み上げて来たらしく慌てて口を塞ぐ高坂。顔はすこぶる悪い。吐くなら縁の外にお願いしたい。

 いや、やっぱダメだ。風に乗って広範囲に拡散しかねない。

 誰か袋持って来てっ。


「その後、高坂さんの叫び声を聞いて、隣の購買にいた私、木場実乃里。沢木修一、忌引光葉、所沢勇気、大河内斈が合流。さらに十勝眞果、川端美海、中田良子、オタクチームが合流。遅れて小川才人が合流したわ。殺害可能時間は発見までの10分間。牧場さんは10分前まで小川君と一緒に居たそうなの」


 これを聞いた面々はふぅっと胸を撫で下ろす。

 どうしたのかと思えば、自分たちのアリバイが成立したからのようだ。


「はっ、だったら俺らは関係ねーな」

「ああ。ずっと一緒だったから殺すとか無理だぜ。」

「ついでに賀田さんも犯行無理だぞ。剣道場でずっと瞑想してたからな」

「あ、私も及川さんとずっと食堂にいたよー」

「ええ。玲菜と一緒だったわ」

「俺と田淵も白だぜ。ずっと一緒だったからなァ」

「……ええ」

「あ、あの、私は、弘君と屋上に居ました、です」

「ふん。屋上に居た奴らは全員無理だ」

「えっと、大門寺と最上さん、日上さん、壱岐が屋上に居たんだっけ?」

「オタクチームはずっと教室でゲームしていたと保障しよう。この烈人が証人となる!」

「わ、私達はトイレに居たわよ!? 牧場さんが何処に居たとか知らなかったしっ」


 会話を聞き耳立てて拾って行く。

 今ので事件が起こった時、皆が何処に居たのかはよくわかった。

 まず、小川が俺たちの教室に一人居た。アリバイはないがあそこまで激怒してる彼がそんな演技ができるとは思えない。白と思っていいだろう。

 となると、彼の証言に嘘はないことになり、10分前までは牧場が生きていたことが確定する。

 その時他に一人だった存在が犯人候補に成る訳だ。


 まず、除外していいのは屋上組。

 大門寺たちが上がった時点から悲鳴が上がるまで彼らは一緒だったらしいので、この点から大門寺、最上、日上、壱岐の四人は消える。

 また、オタクチームは俺も覗いたが、あの教室でずっとゲームしてたんだろう。

 よって、貝塚、御堂、足立飽戸、山田、篠崎、原が犯人説も消していいだろう。


 普通チームは? 坂東達の言う通り、あいつら賀田さんを覗いていたみたいだから消えるし、井筒さんたちも食事を作っていてまだ味見とかして間食してたんだろうし、そっちは有罪でも殺人は無罪だ。

 そして俺達。俺達が購買に着いた後直ぐに悲鳴が響いたので、俺達五人の殺人者説も消える。


 残るのは動機のある十勝、川端、中田。なんかギスギスしている香中と田淵。

 第一発見者である高坂と、なぜか彼女を追っていたらしい足立次郎。

 まぁ、香中の証言に田淵が同意しているので一応二人も白と見ていいかもしれない。

 木場も同じ思いらしく、彼らに狙いを定めたようだ。


「さて、まずは第一発見者の高坂さん」


「え? 何?」


 突然槍玉に挙げられた高坂が慌てた顔をする。


「なぜあなたは購買倉庫に向かったの?」


 そう、まずはそこからだ。何故彼女はそこに向かったか、そして足立はなぜ彼女を追っていたのか。


「そ、それは……」


 言い淀み、困った顔で田淵に視線を向ける。

 しかし、田淵はキッと鋭い視線で睨み返した。

 あの二人、最上をイジめることで仲良い感じじゃなかったか?

 なんか今の二人は最悪の仇敵を目の前にしたような状態になってるぞ!?


「逃げてたのよ。足立から」


「おい、俺が悪いみたいに言うんじゃねーよっ!」


「あら、なら理由があるのよね?」


 思わず反論した足立に、木場が鋭く突っ込む。

 うぐっと呻いた足立だが、はぁっと溜息吐いて剃った側頭部を掻きながらバツの悪そうな顔で告げる。


「そこの二人が俺らの庇護を受けたいつって来てよ。最上の奴をレイプしていいから自分ら守れっつったんだ」


 あ、その話聞き耳立てたわ。

 大門寺が最上掻っ攫ってったんだよな。

 女性陣からブーイングが起こるが、想定していた足立は溜息吐いてさらに告げる。

 高坂が凄く複雑な顔をする。もともとは高坂と田淵がやらかそうとしたことだし、自分たちに非難が向かって来ないことに安堵しつつも自分等が非難されているように聞こえているのだろう。


「まぁ、大門寺サンが最上を連れて行っちまってな。この二人は好きにしていいっつったから、香中と一人づつ貰うことにしたんすわ」


 ああ、好きにしろって言葉をそう捉えたのね。

 大門寺がなぜか空を見上げて遠い目をしだした。

 言葉って難しいな。そんな表情から、彼には残された二人をこの二人が襲うという可能性を考えていなかったことは丸分かりだった。

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