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最後に笑うのはやっぱり私

 図書室に戻った俺たちはデスクを囲って椅子に座る。

 一緒に戻って来たのは俺、光葉、木場、十勝、井筒、賀田、中田ついでに壱岐が離れない。

 中田は気落ちしたままだったので十勝が隣に付いて席を促したりしていた。


 だが、当の中田はむしろすがすがしい笑みを貼りつけている。

 まぁ彼女にとっては殺したい相手が別の奴に殺されていて、次の邪魔者になりそうだった日上も殺人者として自殺してしまった。

 だから今、小川を取り囲むハーレムは一人もいないのだ。

 小川を好きなのは自分一人なのだ。

 彼女の一人勝ちであった。


「ふふ、ははは。あははははははははははっ」


「な、中田さん?」


「死にやがった、死にやがったのよ! あの憎い川端のクソ女も、全裸で奴隷みたいに才人にくっついていた金魚の糞も! 皆死にやがったのよ眞果っ!」


「え、ええ。そうね」


 笑い始めた中田に引き気味に答える十勝。

 中田は気付かず楽しげにげらげら笑っている。


「あんたも才人から身を引いたんでしょ! だったら! だったら私の一人勝ちよね! 誰も邪魔しないわよね! あははははっ」


「で、ですが今小川さんは傷心中ですよ」


「分かってる。分かってるわよ。もう少し、もう少しだけ待ってればいいんでしょ。ああタイミングをしっかりと見定めなきゃ」


 るんるんと楽しげに呟き席を立つ。


「中田さん、何処へ?」


「決まってるでしょ。才人の居る所。川端の奴みたいに側に居れば私が彼を手に入れられるでしょ。世話になったわね沢木、木場。あんたたちの御蔭で邪魔者が消えてくれてざまぁないわ。じゃあね!」


 屑な笑みを浮かべた中田が去っていく。

 後に残された俺たちは何とも言えない顔で顔を見合わせ、結局小川たちのなるように任せることにした。


「さて、今回のことで反省会でも開きます?」

「そうだな。前回のことを踏まえたつもりだったけど木場の弁舌がなければ日上は犯人と認めなかっただろうな」

「あら、結局貴方がトドメを刺したんじゃない」

「それでも木場の功績が高いよ。木場が追い詰めてくれたから日上は馬脚を現したんだ」

「そ、そう? だ、だったら……そうね、木場ではなく実乃里と呼んでくれないかしら」

「ぎるてぃ」

「ええ!? 名前呼ぶだけでか!?」

「あー、いいですねー。私も眞果って呼んでください修一様」

「私も私も、肉欲の関係だし玲菜って呼んで~」


 なぜか木場を基点に皆して名前呼びを強要させられる。

 待って光葉、ぎるてぃじゃないから、というか、そんなに近寄らないで。

 あ、ちょ、近い近い近い。ジト目で近づきすぎっ。


「あ、あの、僕も、えっと、昴で、いいよ」


 待てこら。壱岐をなぜ親しげに名前呼びせねばならんのだ。

 あと賀田さんは無言で殺意向けないで。


「と、とりあえず、その辺りの話は夕食後のゆったりした時間にでも話し合うとして、とりあえず今後の行動を、ほら、食事作るメンバーとか、な?」

「それよりも問題を先に片付けましょ」

「問題?」

「壱岐君の処遇」

「へ? 僕?」

「ええ。一応、ここには女性しかいないでしょ」

「いや、俺もいるんだけど」

「修は別にいいの。壱岐君の彼女とかはここに居ないでしょ。襲われる可能性もある男性が居るのはどうなのか、って話よ」

「ぎるてぃ」


 木場の言葉に皆が頷く。男性陣は俺と壱岐しか居ないのでもはや意見などあってないようなモノだ。

 どうしたものか、このままでは壱岐はほっぽり出されて一人きりに……


「お、女の子に、なればいいの?」


「壱岐君?」


「女の子になれば、沢木君と一緒にいれる?」


「え? いや、なればって……」


「ちょっと、行って来る!!」


 どこにっ!?

 俺達が反応するより早く壱岐は去っていく。

 なんだこの尻がゾクッとする嫌な予感は。


「……ぎるてぃ」


 光葉の言葉が嫌な予感を加速させる。止めて光葉、嫌な考えさせないで。

 そしてしばらく、戻ってきた壱岐の姿を見て俺は絶望した。

 天使の輪のように輝く綺麗な黒髪、なよなよした華奢な体躯に少し恥ずかしげなキュート顔。

 服はこの学校指定のセーラー服。

 女装した壱岐の姿がそこにあった。


「なに……してんの?」


「お、女になってきた」


 いや、それただの女装だから……


「あ、あのね壱岐君。女装したからいいって訳じゃ」


「女性は襲わない!」


「それを宣言されても……それにほら、修はエロ魔人のレイプ犯だから時々誰かを襲ってるのよ。そんな場面見せられてムラムラして他の女性に手を出さないって、誓えないでしょ」


「む、むしろそう言う時は僕も抱かれるからっ」


「ちょっむぐ!?」


 俺が驚きの声を上げた瞬間、なぜか賀田に口を塞がれた。


「そ、それはアレか! お、男同士の、アレなのか! あ、アリなのか?」


「僕、死ぬんだって思った時、沢木君が助けに来てくれて、優しく抱き上げてくれて、その、この人になら抱かれてもいいなって……」


 待て、人として待て壱岐、そこは開いてはいけない扉だっ!


「だ、だから、ここに居させてくださいっ」


「採用っ!」


 賀田の心からの叫びに、女たちが同意する。

 なし崩しに壱岐が図書館組に組み込まれることになった。

 俺の意見? そんなものここではクソの役にも立ちゃしねぇ。

 やばい、お尻の貞操が危機だ!?

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