表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/246

第五の真相4

「つまり……お前が、美海を殺した?」


「あら、わたくし中田さん拉致を認めただけですわよ才人さん」


「え? あ、そうか。確かに」


 一瞬疑惑の目を向けた小川。しかし佳子の事を疑いたくないのか、たった一言でじゃあ違うな。と信じ込む。

 アイツ抱いた女は二心無しとか思ってないだろうな?

 素直に信じ込んだ小川の今後が不安になってくるな。


「で、ご満足いただけまして、木場さん?」


「ご満足?」


「ええ。わたくし、足立さん拉致は認めましたのよ。あとは部屋に連れ帰っただけ。その後のことは川端さんにお任せしましたわ」


「では貴女が犯人ではないと?」


「さて。川端さんに中田さんを差し出した後はトイレに籠ってましたもの。沢木さんたちのお声が聞こえたのでトイレから出て、才人さんと鉢合わせしたのですわ」


 言い逃れにしか聞こえない。

 しかしこれ以上の証明が出来なければこれ以上証言を翻すことは無いだろう。

 証拠品などを突きつけるにもその証拠はない。

 ここからは口論だ。及川の時とは違い、日上は口論は弱そうだ。突き詰めればボロを出すだろう。


「なら折角だ日上、その時の事を詳しく証言してくれ」


「沢木さん? まぁ、いいですけど」


 うーんとしばし考える日上。思い出すという様子に見せているが上を向く視線が考える時の方向だ。

 人間、思考する時上を向いて考えることがあるんだけど、右上か左上かで考えてることがある程度分かるのだ。

 思い出そうとしている時と何かを考えてる時、使っている脳が違うから自然に起こってしまうことなのだが、日上の場合思い出す側ではなくどう見ても考えている側に視線が向かっている。


「わたくし、川端さんに脅されて中田さんを拉致しに行きましたの。理科室でクロロホルムを入手してハンカチに染み込ませ、油断している中田さんを背後から。丁度包丁も持っていましたし、偽装には丁度良かったのでそのまま連れ去りましたわ」


 ん?


「宿直室に戻ると川端さんが戻ってきていたので中田さんを差し出し、後はトイレに籠っておりましたの」


 一見問題は無いように見える。でもその時間となると川端はシャワーから戻り十勝を襲った後となる時間帯だろう。となると、彼女が証言した中に十勝が入っていないことが気になる。


「へぇ。じゃあ十勝さんは見なかったの?」


「……十勝さんは関係ないでしょう」


「そうね。関係ないわよね。その場に居なかったのだから。ええ。でもそうなると、疑惑が残るのよね」


「疑惑……?」


「その頃川端さんに拉致された筈の十勝さんがどこに居たのか」


「っ!? し、知りませんわそんなこと?」


「本当に? 十勝さんを見てない? つまりその時十勝さんは宿直室に居なかった。そう言うことでいいのね」


「そ、それはっ」


 再び動揺する日上。何か言おうとした小川の横槍を十勝が口を塞いで封じる。

 ナイス十勝。

 親指立てると十勝も親指立ててお返ししてくれた。

 小川が何か凄く言いたそうだったが、今は黙ってろ。


「そうなると十勝さんが居たのは川端さんが先に戻っていた訳だから、開かずの間に居たってことになるのかしら」


「な、何を言ってるの、その時十勝さんはいなかったのよ?」


「ええ。だから貴女が見付けられず気絶した十勝さんが居る可能性があり、川端さんが連れ込みそうなところと言えば、ほぼ確実に開かずの間よね。となると、川端さんにとっての邪魔者は中田さんな訳で……」


 思考する木場が少しずつ真実へと辿りついて行く。


「本来殺される予定になっていたのは、中田さんだった?」


「死んだのは川端さんでしてよ」


 なぜかさらに焦りだす日上。このことが分かることで何か不利にでもなるのか?


「つまり、中田さんが殺され、犯人にされるのは、連れ去られたもう一人。十勝さんが犯人予定」


「…………」


 苦虫を噛み潰した顔になる日上。

 だけどここまでならば問題ないと余裕が見える気がしなくもない。

 違うのか? 十勝が犯人役をさせられる予定、じゃない? となると……


「違うな」


「修?」


「犯人役にされる筈だったのは十勝じゃ無かった。そうだろう日上? 犯人役はお前だった。つまり犯人にさせられる筈だったのは日上だ」


「へ?」


 素で驚く木場と顔を青くする日上。

 ビンゴ。ここが日上の弱点だ。


「ど、どういうことですか修一様? 私が犯人役じゃ、なかった?」


「ああ。十勝はおそらく予備だ。ストラップを拾ったのはおそらく川端だろう。中田がさっき十勝に罪をなすりつけようとしたように、押し入れにストラップを転がしておき、宿直室に十勝を転がしておくだけで彼女が関わっている可能性を俺たちに推測させる。つまり素直に犯人が決まらなかった時の為に自分に犯行が向かない為の予備だったんだ。そもそもストラップを投げ捨てたことを知っていた川端がわざわざ十勝を犯人役にして追い落とす意味がない。彼女は既に小川の彼女候補からは撤退しているからな」


 つまりはどういうことか?

 十勝はただの予備、本命の犯人役は全てを投げ捨て小川の隣に居る事を許された邪魔な女の排除。

 そして自分を狙って来る危ない女を殺し、邪魔な女をも排除するための一手。


「なぜ川端が中田拉致を日上にさせたのか。理由は一つ。そのまま拉致した相手を殺した証拠を残すためだ」


「だから……犯人役にされるのは、日上さんだった?」


 木場の言葉に俺は頷く。

 日上を見れば、既に感情が消え去り能面のような顔になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ