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第五の真相2

 時が止まった。

 皆、俺が何を言ったか理解できず、想定していた中田でも十勝でもない人物が指し示されたことに呆然とそちらを見る。

 注目を浴びた日上佳子は、動揺したように怯えた瞳で俺を見ている。


「わ、わたくし、ですの?」

「お、おいおい沢木、いくらなんでも佳子を指名するのはおかしくないか?」

「あら小川さん、日上さんのこと日上ではなく佳子と呼ぶのですか」

「う、煩いな十勝。別にいいだろ!」

「そうだ、そんなことはどうでもいい。沢木、本気で日上を犯人だと告発する気か? 冗談でしたじゃすまんぞ!」

「賀田さんの言う通りだ沢木」

「むしろ間違えろ沢木!」


 おいこら坂東。あと榊。お前ら賀田が反対意見言った瞬間そちら側に回るのかよ。別にいいけどさ。


「で、本当に告発するのは日上佳子、でいいのか」


 足立の言葉に、俺は頷く。


「根拠は? なんですの?」


 自分と言われて不安げな日上が尋ねる。不安げにしている日上の手を小川がそっと握った。


「大丈夫だ佳子。俺が守ってやる」


「才人さん……」


 そして見つめ合う二人。ってこら、いちゃいちゃ禁止。

 というか小川、それ本気で言ってんの? 川端居なくなったからって次は日上に向かうのかよ。

 俺が言えた義理じゃないけど、ちょっと酷い気がする。


「修、日上さんだという根拠は?」

「いろいろと怪しい箇所はあるが、まずは十勝が宿直室で倒れていた時だな」

「確か、部屋の中には居なくて、私達が部屋を出た後、戻ろうとした小川君と鉢合わせしたんだっけ、部屋の中で」

「あ? 部屋の中? どういう状況だよ」

「十勝を起こして宿直室を出たんだ。そこで小川と別れを告げて、宿直室に戻ろうとした小川が宿直室から出ようとした日上と鉢合わせた」

「んん? 日上部屋に居なかったんだよな。どっから現れたんだ?」

「ですから、アレはトイレに行っていたと言ったではありませんか」

「そうだな。普通なら確かに違和感はない。けどお前、一体いつからトイレに籠ってたんだ?」

「どういうことかね沢木氏?」

「いいか貝塚。あの時日上は何が起こったのか分かっていない様子をしていた。つまり十勝が倒れていたことに気付いてなかったという状態になる訳だ。小川。お前が十勝発見して俺達と部屋に戻るまで、何分あった?」

「は? いや、あーっと。そんなこと言われてもな、わざわざ測ったりはしないし」

「少なくとも宿直室から図書館まで向かい、俺達を探した。そして図書室に戻ってきた俺達と合流して宿直室に戻るまで五分から十分」

「あ、ああ。まぁそのくらい、かな?」

「さらに十勝はその前の時間から倒れていた計算になる訳だが、日上が気付かずトイレに向かったとすればその後に十勝が部屋で倒れていたことになる。その間日上はずっとトイレだ」

「べ、別に大きな方を行っていれば二、三十分くらい掛かりますわよ」

「え? マジか?」

「便秘だと結構頑張るモノよ」


 驚く足立に田淵が告げる。

 そんなにトイレに籠ったことないからなぁ。


「だ、だが沢木、それが偽りだとしても、日上の犯行とは言えないだろ」

「ああ。日上の証言だけなら俺は違和感など抱かなかった。見付けちまったんだよ。疑惑の証拠って奴を」

「ぎ、疑惑の証拠、だと?」

「まぁ、そん時は何でもないゴミだとゴミ箱に捨てちまったけど」

「しょ、証拠を捨てたの!?」

「いや、関係ないと思って。でも中田も一緒に見てるし、宿直室のゴミ箱に置いてあるから気になるなら確認してくれ」

「で。何があったんだよ?」

「その前にもう一度尋ねるぞ日上」

「な、なんですの?」


 俺の言葉に身がまえる日上。その日上を俺から隠すように小川が陣取る。

 どうでもいいんだがちょっとウザい。

 騎士ナイト気取りみたいだがもしも本当に日上が犯人なら、お前彼女殺された相手を庇ってることになるんだけど、いいのか?


「お前は開かずの間への入り口が宿直室のどこにあるか、知ってるか・・・・・?」


「知りませんわ」


 当然のように告げる。

 コレが演技なのか素なのか。

 演技だったら怖いな。


「そうか。俺が開かずの間から隠し扉開いて宿直室の押し入れに付いた時、手に違和感があったんだ。まとわりつくような異物だ。押し入れから出て確認したところ、一本の長い髪だった」


「髪? そんなのが何の証拠になんだよ?」


「分からないか小川? 金色の長い髪が、隠し扉の出入口に挟まってたんだぞ」


「金髪なんぞそこいらに居るだろ」


「俺たちの中には一人しか居ないだろ」


「……あ」


 小川も気付いた。

 その金髪の髪。それは小川が悪役令嬢が好きだ。そう告げたことで金色くるくるカールの髪に変えた女の髪。

 彼の背後で怯えている筈の女の髪以外にありえなかった。


「つまり、日上佳子、あんたは開かずの間の場所を知っていた。動かぬ証拠だよ」


 ばかな。小川が慌てて背後を見る。

 困った顔の日上は周囲を見回し、疑惑の視線しかないことを見て息を吐いた。

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