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第五の真相1

 まずは新証言を含めて整理しようか。

 十勝がストラップを捨て、おそらくだが川端がソレを拾った。

 川端がシャワーを浴びに来て壱岐の墓を掘り終えた最上と鉢合わせ、開かずの間の情報を最上から得る。


 昼食を終え、小川と川端がシャワーを浴びに来る。

 小川はシャワーを普通に行い五分後、外に出て川端を待つ。一時間程。

 俺が刺され、十勝が絆創膏を貰いに保健室へ。

 帰り際、川端らしき人物に襲われ拉致。

 戻ってきた小川が宿直室に倒れた十勝を発見。

 おそらく犯行はこの辺りで行われたとみていいだろう。


 俺達が駆け付けて、十勝が眼を覚ますまでの間に、中田が拉致され川端と共に開かずの間へ。

 そして川端が刺殺され、その凶器を中田が持つ状態で放置された。

 つまり、あの時犯人は宿直室か開かずの間に居た可能性がある。


 あの宿直室に居たのは、小川と十勝だけだ……

 いや、違うな。もう一人居た筈だ。

 彼女には理由がないからと外していたが、思い起こせば怪しい行動はあった。


 トイレに行っていたと証言したが、水を流す音は聞こえなかった。

 そして部屋に居なかった筈なのに突然部屋に現れていたこともおかしい。

 まるで、慌てて自分のアリバイを作ろうと姿を露わしたように……

 いや、考えすぎか?


 ……待て。そう言えば俺はアレを見付けているはずだ。

 押し入れの、隠し扉を押し上げた時に付いた異物。

 それは何だった? なぜあそこにそれがあった?

 つまり、そこに隠し扉があることをあいつは知っていたんじゃないのか。

 あるいは、川端が使うのを、見た?


 ゾクリ。全身を嫌な汗が駆け廻る。

 今、俺は何を考えてる?

 そんなこと、有りうるのか?

 あいつが犯人だなんて、そんな……

 けれど、確かに可能性はある。ありえてしまう。


「あら、その顔。修は犯人に辿りつけたのかしら?」


 木場が意外そうに告げる。

 驚いた俺が顔を上げると、皆の視線が俺に集まっていた。

 なんか期待されている?


「ま、待ってくれ。とりあえずまだ確認することがあるだろ。ほら、中田。お前気絶する時何かなかったか?」


「え? あ、ああ。アレね。気絶する前、私口を塞がれたの。多分、花柄のハンカチだったとおもう。ちょっと高級感のある肌触りの奴で、少ししたら意識が薄れて……」


「つまり、中田を連れ去った犯人は女性である可能性が高い」


「それが、美海だってのか?」


「いいや、まだ分からない。だから皆、ハンカチを出してくれないか。中田の記憶にあるハンカチが出てくればすぐにわかる」


 そしてそいつが犯人だ。あるいは、ハンカチを無くしてしまっていたのなら……


「まずは十勝」


「え? あ、はい。これです」


 赤いハンカチを取り出す十勝。


「ありがとう。次に俺だが、俺はハンカチ持ってない。壱岐はどうだ?」


「え? あ、これ?」


 ネイビーのハンカチを取り出す壱岐。俺は視線を光葉に向ける。


「光葉は?」


「ん」


 純白のハンカチを取り出す光葉。それを見た木場が次は私か? とばかりに取り出して行く。

 これは意図的に俺が操作した順番だ。

 本来時計回りに行うはずの順番は、十勝から俺という経由地を通ったために逆時計回りになったのである。


 犯人に最後の方になってくれるようにと思ったのだが、さて、どうなる?

 皆がハンカチを見せたり持ってないと告げる中、そいつの順番になる。

 しかし、そいつはハンカチを取り出す様子もなく、ただ、戸惑ったようにきょろきょろと周囲を見回すだけだ。


「どうした?」


「その、ハンカチ、忘れたみたい。多分宿直室で服脱いだ時……」


「そっか。小川は?」


「ああ、紺色の奴だ。花柄じゃ無くて悪かったな。で? 花柄なんざ見当たらないが、犯人わかったのか?」


「そうだな。容疑者の段階ではあるが絞れたよ」


 少し俯き加減に告げる。

 この考えがもしも、本当にもしも当ってしまっていたのなら、小川はもう、二度と立ち直れないかもしれない。

 それでも、殺人を行った以上罪は暴かれなければ。


「川端を殺し、中田に罪を着せようとした犯人はこの中に居る」


 ここでアニメとかなら全員の顔アップが順々に映るんだろうけど、現実ではそんなことはあり得ない。なので俺はそのまま言葉を続ける。


「マジで、分かったのかよ」


「犯人は分かった。後は犯行動機やその他の事を明らかにして行かなきゃならない。前回の時みたいにシラを切り続けられて停滞する訳にはいかないしな。だから……」


 勿体付けるように俺は指先を上げ、ゆっくりとそいつに下ろす。


「教えてくれ。なぜ十勝を宿直室に放置したのか、なぜ中田を犯人にしようとしたのか、そしてなぜ、川端をあんたが殺したのか。なぁ、日上佳子。犯人はあんただっ」

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