表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/246

最初の殺人4

 屋上に皆が集まった。

 集まった人数は29人。被害者である牧場伊織を除いた全員だ。

 牧場には悪いが、死体の埋葬などは犯人を暴いた後になるようだ。


 屋上は白い石の床でできており、縁がある以外フェンスなどは設置されていない。

 あまり縁石に向かうと風に煽られ落下しかねないので普段は屋上への移動禁止になっていたのだが、この学園状況ではそれを守るクラスメイトは一人もいない。


 空は虹色に揺らめき、青空などは一切存在しない。しかし昼のように明るいので皆不安を抱いたりはしていないようだ。

 和気藹藹、自分たちがなぜ急に呼ばれたのか全く理解していない様子である。

 それを見た小川がイラついた顔をしているが、彼らに悪気は無いのだ、そこは許してやってほしいところである。流石に小川に直接言う気はないわけだが。


 円陣を組んで俺たちは互いに立ち向かう。

 この中に犯人がいるのだから、互いに互いを監視し、逃げたり、別の誰かを殺したりしないよう監視する意味もあるから、円陣を組むのが妥当らしい。

 大河内がわざわざ皆を並ばせてくれたので時間は掛からず皆が円陣を組んでくれた。


 本人もイラつきがあるだろうに、小川と比べると随分と落ち付いて見える。やはり普段からリーダーをいさめる役をやってるからだろう。彼が怒るのをいさめるためにも自分は怒れないようだ。

 少し可哀想に思う。

 一応、一班から時計回りに二班三班と順番に並び、所沢と大河内が隣り合って一周する状態になったところで各々話を始める。


「なぁなぁ、集まれって言われたけど何があったの?」

「ってか一人足りなくね?」

「ゲームしてたのに現実は面倒ですぞなもし」

「どうだったね篠原氏、原氏」

「ええ、これはこれでハマるわね」

「悔しいけど、この子可愛い。なんでこのボールは命中率低いのよっ」

「あ、皆、夕食作ったから後で食堂来てねー」

「井筒さんの手料理!? やべぇ、俺の為に味噌汁作ってくれたんっすか!?」

「私も作ったわ」

「ゴリ川はお呼びじゃねーんだよっ!?」


「黙れよッ!!」


 皆の話声をぶった切るように、小川がキレた。

 彼女を殺されたのだ、犯人を見付けたいのに皆が騒がしいせいで何も出来ずにイラついたようだ。

 大河内がまぁまぁと押さえに入り、皆もいつもと状況が違うことに気付いて押し黙る。

 困惑が場を支配する。代表するように大門寺が告げる。

 さすが大門寺というところか、多少威嚇気味になっているためか小川がうぐっと唸り後ずさりそうになる。


「俺達を集めた理由を聞こう。まだ集合までは時間があったはずだ」


「いつかとかは決めてなかったけどね。とりあえず、何があったか説明した方がいいか。えーっと、こういう時は誰か司会が欲しいんだけど、僕も才人もちょっと今は司会役とかしたくないんだよね、事情知ってる人で司会役誰かお願い出来ないか?」


 参った。と頭を掻きながら告げる大河内。

 皆が探り合う中、木場が仕方ないわね。と呟きながら立候補する。

 隣の俺に視線を合わせ、フォローお願いとか言って来た。

 冗談じゃない。俺みたいな人付き合いの苦手な男に弾劾裁判の司会助手とかやらせんな。


「まず初めに、今回ここに皆が集まって貰った理由を説明するわ」


「お、木場さん司会進行してくれるの? まぁ木場さんなら問題ないか。淡々と進めそうだし。んじゃ。お願い」


 大河内からもお願いされ、木場は話を続ける。


「つい先ほどの事よ。牧場伊織さんが購買部倉庫で絞殺されたわ」


「は?」


 口から漏れたのは、果たして誰だっただろう? 数人の声が重なったようにも思える。

 想定外過ぎる言葉が理解できなかったようだ。

 つい先ほどまで和気藹藹としていた皆が、生唾飲み込み意識を無理矢理シリアス方面に持っていき始める。


「ちょ、ちょっと待てよ。え? 絞殺?」

「死んだってこと? え? なんで?」

「死んだんじゃなく殺されたんだろ!? ってことは、俺たちの中に殺人者が居んのかよ!?」

「待って待って待って。う。嘘だよね? ねぇ、殺人なんて、同じクラスメイトだよ!?」

「信じたくないわね……」

「こ、これはまさか、アレではないですかですぞ。ダン○ンロンパですぞ!?」

「ちょ、マジソレな状態じゃないか。なんで殺人なんて起きるんだよ!? おかしいだろ!?」

「チッ、マジか……」


 どよめく皆。

 才人がイラついている理由がこれで明らかになった。

 幼馴染が殺されてるんだ。そりゃ気が気じゃないだろう。

 なんとしてでも犯人を見つけ出したいに決まってる。

 いや、見つけ出しただけじゃ終わらない筈だ。


「殺人者が……いるのか?」


「それをこれから調べるの。まずは発見状況を説明するわ。静かにしてくれるかしら?」


 香中の言葉に木場が淡々と答える。

 本当にコイツは司会進行役としては適任だな。

 お祭り騒ぎとかの司会には向かないけど、厳粛な司会としては優秀だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ