第五の殺人7
「じゃあまずは開かずの間への入り方を知っている人」
俺の言葉に意味が分からないと言った顔で手を上げる面々。
手を上げたのは賀田、井筒、俺、木場、光葉、十勝。
うん、大門寺が告げた時に図書館に居たメンバーだな。
当然ながら他のメンバーは知らなかったようだ。
「って、おい沢木。なんでお前らは開かずの教室への入り方知ってるんだ?」
「足立は聞いてないのか? 大門寺が図書室に来た時言ってたんだ。その場にいた全員が聞いてる。そういう理由もあって大門寺と最上も知ってる」
「ん? でもそうなると、中田は知らなかったのか?」
「知る訳ないでしょ開かずの間なんて! 入口知ったのも沢木に連れらて宿直室まで出た時初めてよ! 事件後に知ったのに行けるわけないでしょ!」
「いや、でも、行ってたんだよな。開かずの間。じゃないと殺人起こせない訳だし」
「坂東ッ、私やってないって言ってるじゃないッ」
「ひぃっ!?」
鬼気迫る顔で叫んだ中田の怒声に坂東と横に居た榊がびくっとする。
「しかし、もしも中田が殺してないとなると、やはり十勝犯人説が浮上してしまうのだが」
むぅっと唸るのは貝塚。
「あら、どうしてでしょうか?」
「怒らず聞いてくれたまえ。君は確かにストラップを捨てたと告げたが、証拠が小さ過ぎて投げたことを証明しきれていない。円香が証言しきれてくれていれば君が犯人だと言う可能性は無くなるが、現状はまだ灰色だ」
「まぁ、確かにそうなりますね。あそこで捨てたのは少々考えなしでしたね。皆さんの見てる前で捨てれば良かったです」
「そう言うこともあってだ。灰色な君は容疑者から外れていない。そして、開かずの間への行き方を知っているという事実もある。川端氏を殺す可能性がある人物を考える中で、中田氏を除くと怪しいのは君になってしまうのは仕方無いと思うんだが」
「みろ! やっぱり十勝じゃないか」
「なんですか小川さん、私を犯罪者に仕立て上げたいんですか。そこまで行くと貴方自身の自作自演にすら思えてきますね」
「なんだとッ」
成る程小川犯人説は俺も考えてなかったな。
しかしどいつも怪しいが犯人だと確定させるのは難しいな。
何かないだろうか?
「他に開かずの間のこと知ってる奴はいないのか?」
「居ないだろ。誰も聞いてないだろうし」
「じゃあ、あの開かずの間に入れたのは十勝だけってことになるぞ?」
「ちょ、坂東さん。流石にそんなはずは。それに、私は殆ど図書館組と行動を共にしていましたよ」
「そうは言ってもトイレとかで一人になった時有ったんだろ?」
「いえ、木場さんや井筒さんと一緒でしたから、一人になった時は、一度だけですね」
「一度?」
「はい。修一様が所沢さんに刺された時です。絆創膏を貰うために保健室に向かったのですが、そこで誰かに襲われまして。気付いた時には宿直室で寝ていたそうで」
「ああ、あの時か。あの後誰かに襲われたのか。確かに一時間くらい後に沢木達が探しに来たな」
「そら、その時だろ。俺がシャワーから戻ってくるまでに……」
「ちょっと待った」
新証言の可能性がするぞ。とりあえず待ったを掛けて俺は小川に視線を向ける。
「な、なんだよ沢木?」
「シャワーを浴びてた、そう言うんだよないつからいつまでだ? 誰かと一緒だったか?」
「あ、ああ。美海と一緒にシャワー浴びて、多分一時間くらいか」
「いや、どんだけ浴びてたんだよ」
「実際は五分くらいで浴び終わったんだが美海が出てくるのを待ってたんだよ。結局出て来なかったから先に帰ったんだけど……」
「ちょ、ちょっと待て小川。そこ、そことてつもなく重要じゃね?」
「あんた、それ、待ってたんじゃなくて先に行かれたんじゃないの?」
「美海が何で先に帰るんだよ。俺と美海はずっと一緒なんだぞ」
願望、と言う訳じゃ無く本当に川端と小川はほぼ一緒に居たのだ。川端も小川を放置することは無いだろう。
たとえば、そこで襲われた等の理由がない限り。
まずは時系列を整理しよう。シャワーを浴びるまでは小川と一緒だった川端。
そして保健室から戻る途中で襲われた十勝は川端に襲われたと証言している。
その後一時間のシャワーを終えて川端が来ないので部屋に戻っているのかと戻ってきた小川が部屋で倒れている十勝を見付ける訳だ。
つまり、小川がシャワーを浴びている間に校舎内に川端がいたことになる。
「修、何かわかった?」
「いや、新しい疑問が浮かんだだけだ」
「疑問?」
「ああ。小川がシャワーを浴びている間。おそらく待ち時間中に十勝が川端に襲われてる。つまりその頃にはシャワーを浴びてない川端が校舎内で十勝を襲っていることになるんだ。これって、どういう意味だと思う?」
「そうね……私としては、川端さんの方が田中さんを殺そうとしていたと思うわ」
それはまた斬新だな。その理由、聞かせて貰おうか。