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第五の殺人5

 屋上に向かう前に購買に寄って制服を着替える。

 木場が中田と話をしながら幾つか物品を拝借して俺より先に去って行く。

 ついでにティッシュも無断拝借で壱岐に持たせる。

 好きなだけ鼻をかむがいい。


 落ち付いたらしい壱岐だったが、一人になるのが嫌らしく、俺の裾を掴んで一緒に付いてくる。

 なんというか、女性だったら普通に彼女候補になるんだけど、男に縋りつかれても嬉しくないんだが。

 まだ時折ぐずってる壱岐。余程暗闇に一人閉じ込められたのが怖かったらしい。


 待っていた木場、光葉、十勝と合流する。

 井筒、賀田は中田と共に既に上がってしまったらしい。

 三人は俺の裾に縋りついている壱岐を見て困った顔をしていたが、何を言うでもなく先導するように歩き出す。


 屋上へと着くと、大門寺と最上以外が揃っていた。

 思わずトラブルで遅くなったせいだろう。小川がぶすっとした顔をしながら腕を組んで仁王立ち。

 さっさと始めろとばかりに無言の圧力を出していた。


「大門寺サンたちが来てないけど、生存は確認できてっし始めようぜ」


 足立が空気を読んで告げる。

 俺としても否定する必要はないので頷き円陣に向かう。

 あの、壱岐さん、そこ、そのまま居るの?


 小川から日上、足立、田淵、貝塚、原、山田、所沢、坂東、榊、賀田、井筒、木場、中田、光葉、俺、十勝の順番で、所沢は五班の所に並ぶか迷って結局男と男が隣り合っていた山田と坂東の間に入ったようだ。

 ちなみに壱岐は十勝の後ろ。俺の裾を掴んだままである。円陣に入ろうとすらしていない。


「じゃあ、第五回学級裁判を始めましょうか」

「ああ、さっさと始めてくれ」

「ではまず、皆に共有して貰う為に何が起こったかを告げるわ。もう少し待ってくれるかしら小川君」

「いいからさっさと始めろよ。結果は見えてるんだ」

「だ、そうだ。とっとと言ってやれ。爆発するぞ」

「そうね。では、ええと、殺害現場は開かずの間。丁度大門寺君達が寝泊まりしていた教室の隣よ。常に内側から鍵が掛かっている部屋だから入ることのできない教室なの。そこで川端美海さんが殺されたわ」

「川端が……か」

「牧場に続いて川端……なんつーか小川に惚れれば死ぬみたいな、これが大河内の呪……」

「あ゛ァ?」

「な、なんでもアリマセン」


 ぷふっと噴いた坂東に反応して物凄い形相で睨んだ小川。慌てて口にチャックのジェスチャーをする坂東。

 ただ、隣の榊にはツボだったらしく腹を抱えて笑いを噛み殺していた。

 自分たちの死が遠のいた途端なんというか、こいつらホント現実感ないな。


「死因は心臓への一突き。鋭利な刃物が凶器よ。それについては川端さんの近くにいた中田さんが持っていた包丁だと思われるわ。血も付いていたし凶器と見て間違いないわね」

「は? ちょっと待て。川端の死体の近くに中田が居たのか? しかも包丁持って?」

「ええ。しかも密室となっている開かずの間で、ね」

「いやいやいや、密室で二人きりで包丁持って相手は刺殺体?」

「大門寺が蹴り破って俺達が入った時にその状態だったんだ」

「ほら見ろッ、どう見ても中田が犯人だろうが! 俺の美海を殺しやがって!」

「あー、確かに言い逃れ出来る状況じゃない……か?」

「ち、違うッ、私じゃないわッ、私は殺してないのッ」

「ふざけんな中田ッ! テメェ以外に誰が居るってんだよ!!」


 慌てて違うと告げる中田に小川が口汚く言葉を被せる。

 もはや言い逃れ出来ない状況で、中田は絶望的な顔で押し黙るしか……中田?


「そうよ。そうだわ! ほ、ほら、沢木言ってたわよね!」


 何かを思い出したらしい中田が希望を求める顔で俺に視線を向ける。


「俺?」


「あの開かずの間に行く押し入れに、有る筈の無い物があったって」


 有る筈の無い物? そんなのあったっけ?


「ストラップよ! 才人君が、眞果にあげたストラップ!」


「……え?」


 小川がその言葉に怒りを一瞬忘れる。

 驚愕の顔で間横に居た十勝を見る。

 彼の頭の中で何かの糸が繋がったらしい。


「十勝、お前、なのか?」


「……は?」


「お前が、中田に罪を被せようと川端を殺して、中田を犯人としてあの部屋に?」


「なぜ私が?」


 素で分かっていない様子の十勝が小首を傾げる。

 小川はなぜか憎しみの表情で十勝を睨みつけた。


「そこまで、憎かったのか。中田を排除して美海を排除して、次は日上か! そこまでして俺が欲しかったのか十勝ッ!!」


「……」


 驚愕する小川。白けた目をする十勝。

 しばし無言で見つめ合い、誤解は解けそうにないと気付いた十勝は溜息を吐いた。


「何を勘違いしてるんですか勘違いイケメンの小川さん。私が貴方の彼女になりたいが為に美海さん殺して中田さんに罪をなすりつけた?」


「そうだ! さっき大門寺から聞いたぞ! あの開かずの間、俺たちのいた宿直室の押し入れに通じてたんだろ! そこから入れるって。だから美海を殺し、中田を置き去りにした後、宿直室に戻ってきたお前はそこで倒れているフリをして俺に発見されたんだ」


 え? 消えた十勝が宿直室で見つかった時のこと言ってんのか小川さん!?

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