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第五の殺人3

「いない……な」


 俺たちは捜索した。

 そりゃあもう校内も校外も行けるところは全部見たし、通気口とか食堂の冷蔵庫だって調べた。

 けれど壱岐の姿がどこにもない。


「流石に、変だな」


「クソ、どこ行ったんだよ壱岐は、これから学級裁判だってのに」


 小川は早く中田を殺したくて仕方ないらしい。

 しかし、壱岐が見つからないと裁判を始められない。何しろ、場合によっては二人の犯人探しになりかねないのだから。


「何か変わったところはなかったか? なかった筈の物があったり、あった筈の物が無くなってたり、違和感があれば教えてくれ」


 全員が再び屋上に集い、意見を出し合う。

 しかし皆うーんと唸るばかりで分からないようだ。

 この中の誰かが壱岐をどうにかしたのであれば、それなりの反応を誰かがしていてもおかしくないのだが、誰か演技してるのか?


「そう言えば、食堂の消費チェックノート、大河内君の名前入ってたよね。もしかして大河内君が壱岐君隠した、とか?」


 ちょ、井筒、その爆弾は今放り込む場面じゃ……


「どういうことだ井筒。斈の、名前?」


 ほら、小川が反応した。

 こいつ今危険な状態だからそんな危険物くべたら一気に燃え広がるぞ。

 現に井筒に駆け寄った小川は襟首掴んで思い切り井筒を振る。

 まさか血走った眼で近寄られるとは思っていなかったようで井筒が怯え、それを見た賀田が竹刀を二人の間に割り込ませ小川を牽制する。


「邪魔すんな賀田ァッ!!」


「落ち付け馬鹿者。私もノートには気付いたが、大河内の名前が書かれていただけだ。誰かの悪戯かもしれん」


「ふざけんなッ。だったら、だったらこの中にそんな悪戯するクソ野郎がいるってのか! 生きてるんだろッ、あいつが、生きてるんだろ賀田ァ!!」


 今度は賀田に喰ってかかりそうだったので溜息と共に大門寺が小川の頭を後ろから掴む。

 賀田に詰め寄ろうとした小川は物凄い力で頭を押さえられ、なんだ? と後ろを振り向く。


「落ち付け阿呆がッ」


 大門寺による威圧。冷や水を浴びせかけられたようで、小川も一瞬で押し黙った。

 怖っ、大門寺の一喝怖っ。


「だ、だが……」


「今話し合うべきは壱岐の居場所だ。殺されている可能性だってありうる現状、他の事を話し合ってる暇はねぇだろが。これ以上死人を出したいのか」


「そ、それは……」


 これから中田を殺したい彼としては言葉を濁すしかできなかった。


「そういえば、大門寺サン、確か桜並木ンところに跳び箱三段位ありましたよね」


「あン?」


 恐怖が支配した場の空気を変えようと、足立アニキが話題を変える。

 想定外の話題を振られ、小川を縊り殺しそうだった大門寺が間抜けた顔になった。


「ああ、アレは明奈が使うとかで持って来たが、どうした?」


「さっき見に行った時、なかったんスよね。なんか使いました?」


 ちょ……待て。

 俺と大門寺、そして木場が同時に気付いた。


「あ、足立君、そ、その、確か私達全員分の墓を掘っていたわよね。どこか……埋まってた?」


「あ? おいおい木場。流石にあんだけ穴開いてんだぜ。どこか埋まってても分かるかっつーの」


「「急ぐぞッ!!」」


 俺達が気付けたのは最上明奈が危険な状態だと知っていたから。

 彼女が跳び箱を墓場に用意した。そして今無くなっている。

 つまり、墓場で使用された可能性が、高い。


 ならばなぜ使ったか。墓場なのだから墓として、棺桶として使用したと思うのが妥当だろう。

 つまり、使われたのだとすれば、誰かを葬るための棺桶として。足りない存在は誰か。

 壱岐昴。彼はきっと土の中に居るッ。

 壱岐が生き埋めされているっ。


 俺たちは急いで階段を駆け降りる。

 時間との勝負だ。

 もしかしたらまだ生きてるかもしれない。

 だが、もう遅いかもしれない。


「大門寺、いつ埋められたか分かるか!」


「知るか。クソ、なぜだ明奈。いや、まだ、まだ決まった訳じゃねぇぞ! クソ、恨むぞ沢木」


「ふざけんな。俺だってこんな大それたことされるとは思っちゃいねぇ。それに最上の精神からして相手が死にたいとか死にそうな状態じゃないと動かない筈だ」


「つまり明奈の近くで壱岐が死にたいと抜かしやがったのか。アホなことしやがってクソがァッ」


「最上さんが消えたりした時はあるか、長時間」


「分からん。けど、壱岐は昨日まではいた。他に可能性は……待て、もしかしたらだが、さっきの違和感は……」


 墓場へと辿り着く。

 何処だ? 穴が開いてる場所は放置。穴が埋まっている場所、新しく埋められてる箇所は……


「待て。多分ここだ」


「大門寺?」


 そこは地面だった。他の地面同様に均されているが、掘られた跡が残っている場所だ。


「ここは俺が掘ったから分かる。明奈に頼まれて一番深く掘ったところだ」


「一番深く?」


「ああ。跳び箱三段が丸々入るくらいにな」


 俺たちは顔を見合わせ示し合う。

 近くに転がっていたスコップを引っ掴むと即座に穴掘りを開始した。

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