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次の犠牲者は、俺

「で? なんでこの面子が集まってるんですか?」


 俺の腕に絡みつく十勝が悪戯っぽい笑みを浮かべてクスリと笑う。

 空元気な雰囲気が少し痛々しいが、それを隠そうとしているので皆察した者から気にしないように接し始める。

 一番に察したらしい光葉はぎるてぃと告げるとともに十勝を牽制しながら逆の腕に向かい、裾を掴む。

 私を忘れるな。ってことらしい。


「な、なんというか……沢木氏はなんでそんなにモテるんだ?」


「山田。俺に聞かれても困る。俺は光葉だけ居ればいいんだけど……」


 と、視線を木場に向ける。

 何故か親指を立てられた。

 何がグッジョブと言うのだろうか。


「確か、忌引はレイプされたのだろう。こんな下衆野郎に惚れる要素が分からんのだが」


 そして大門寺さんが辛辣だ。

 つい数時間前までは心の友みたいに接して来てたのに嫌悪感を滲みだした顔で睨んで来る。


「ん。私を好きって言ってくれた、から」


 そう言って頬を染めて俯く光葉。

 なんだこの可愛い生物。

 やっぱり俺、光葉が好……ふにょんと腕に感じた感触に意識を奪われる。

 見れば十勝が自己主張するように、クスクスと笑みを浮かべていた。


「ん、ぎるてぃ」


 待って。今のは、今のは俺のせいじゃ。ああ、欲望に忠実な青少年である自分が恨めしい。


「まぁ沢木君に関しては当事者が納得済みだから放置の方向で行きましょう。これ以上彼を攻めたところで意味もないし、忌引さんが問題にしてないし、沢木君から他の女性を襲ったら即死フラグだから」


 え? 俺から襲ったらアウトなの?

 光葉に視線を送ると、こくりと頷く。

 襲われるのはオッケーだけど襲うとぎるてぃだそうだ。

 何ソレ、聞いてないんだけど。


「で、私達が何していたか、だったわよね」


 話を強引に変えて、木場は十勝に確認する。こくりと頷く十勝に、この状況を説明し始めた。

 と言っても、もともと図書館組の俺達は普通にここに戻っただけで、外で三綴と及川の遺体を埋め終えた大門寺たちが報告にやってきただけである。

 暇だったらしい壱岐や山田も埋めるのに参加したらしく、そのまま付いて来たようだ。


「それで、今は寝床に付いて話している最中よ」

「寝床、ですか?」

「ええ。壱岐君は和室で寝ようとしてたんだけど、貝塚君と原さんがくっついたみたいで、甘ったるい空気に耐えかねて逃げて来たらしいの。体育館は倉庫から喘ぎ声が聞こえるらしいし。宿直室は女子が居るでしょ」

「ゆっくり寝れる場所は多いが、死体発見現場で寝るのもアレだろう。小川と川端が宿直室奪い取ったようだし、女性陣も寝場所がなくなったようなのだ」

「で、だ。体育館倉庫が開いた御蔭で体育館が再び使えるからな。男性陣はそちらに行くべきだと話し合ってたところ。女性陣については食堂で皆に聞こうかってことになってる」

「井筒さんは、どうする?」

「え? あ、うん。えーっと、ま、まだ考え中。かな。天ちゃんのこともあるし。放っとけないかな、でも……私が側にいたら迷惑になるかもしれないし……」

「つか沢木、お前井筒とヤッたんだよな。どうする気だ?」

「そこで俺に来る!? まぁ、なんだ。賀田次第だが、ここを使うのはいいんじゃないかな。とは思うが、むしろ足立、俺の護衛してください」

「あん?」

「今のところ、次に殺人が起こるとしたら寄せ集めの5班。つまり私達の班なのよ。その一番の被害者候補が数々の浮き名を流している沢木君な訳」

「ああ、いつ誰に刺されてもおかしくねぇもんな」

「ははは、一応雑誌は腹に入れてるけどこれで大丈夫なのかどうか」

「ふむ。5班は沢木、所沢、壱岐、忌引、木場、日上だったっけ。……確かにこの中だと沢木が一番死にそうね」

「もうちょっとオブラートに言おうぜ田淵」


 俺が呆れながら告げるが、田淵はどうでもいいとばかりに足立に絡みつく。


「残念だけど次郎は私が保健室で独占するから無理よ」


「あー。まぁ、そういうことらしい」


「お熱い事で……」


「拙者は暇になっているから護衛してやろうか?」


「この面子の中でよければ?」


「ケッ、リア充死すべし」


 山田がやさぐれた。

 大門寺には頼めそうな雰囲気じゃないし、自身で気を付けるしかなさそうだな。

 なんにせよ今日は問題ないだろうし、いや、三綴の件もあるし、殺されて次の日発見って可能性はあるか。


「とにかくまだ深夜だ。いや、もう夜明けぐらいか。常に明るいと分からなくなるな」


「寝る?」


 最上に尋ねられた大門寺が少し考え、そうだな。と首肯する。

 どうやら最上と大門寺は寝なおすようだ。


「ああ、そうだ十勝」


 図書室から出て行こうとした大門寺がふと思い出したように告げる。


「はい?」


「俺達が寝泊まりしている部屋の隣、開かずの間なんだがな。アレは宿直室の押し入れに隠し通路がある、そこから降りることで辿りつける場所だ。川端に一矢報いたいのならそこに連れ込んで一時間程閉じ込めてやればいい」


 それだけ告げて大門寺が去って行く。

 開かずの間の秘密、大門寺は知ってたのか。

 先生たちが秘密の会合を開く時に使う通常の方法では入ることの出来ない教室。


 昔は女生徒を襲う為の部屋であったとか噂を聞くが、最近は校長と教頭が酒盛りするために使っている部屋である。

 その秘密を知らされた十勝は、眼を見開き驚いたあと、いいこと聞いちゃったと言った顔でほくそ笑むのだった。

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