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最初の殺人2

「な、なんだよ、これ……」


 ちょ、ちょっと待て。本当に待て。なんでクラスメイトから死人がでるんだ?

 これじゃまるで本当に、殺し合いのゲームじゃないか!?

 どうしてそんな事が起こる? 現実なのかと思わず頬を抓る。痛い。


 木場がハッと我に返って電灯のスイッチを入れる。

 光が灯り、薄暗い照明に照らされた遺体が露わになった。

 見間違いは無い。間違いなく牧場伊織だ。


 瞳孔が見開かれ、首を絞められた跡がくっきりと残っている。

 どうやら自殺の線は完全に消えて犯人がいる事が確定してしまっているようだ。

 首を絞めたあと無造作に投げ捨てられたような姿だ。おそらく相手は衝動的に殺したのだろう。慌てて逃げたんだと思う。


「どうした? 何かあったのか?」


 次第、人が集まってくる。

 悲鳴が聞こえたのは学校内だけだったようで、普通チームや屋上待機組は来なかったが、オタクチーム全員、リア充チームの女子。そして小川才人がやってくる。


 小川がふら付きながら皆を掻きわけ遺体の前へとやってくる。

 ドサリ、膝を突き、モノ言わぬ躯と化した少女の肩を揺する。

 涙を流し、彼女の名を呼び。えづき、しゃくりあげ、何故彼女が死ななければならないのかと咆哮する。


 小川にとっては彼女を殺されたという衝撃的事実だ。

 現実を受け入れるまでしばらくかかるだろう。

 いや、それだけじゃない。怒りで腸が煮えくりかえり、憎悪の瞳で俺達を睨みつけた。


「――してやる。殺してやるッ。誰だっ! 殺したのはッ、お前か? お前かっ。お前かァッ!!」


 鬼の形相で小川が叫ぶ。視線の合った少女達が怯えているが、誰もフォローしようとはしない。

 指差されたのは小川のオッカケ三人だ。十勝、川端、中田が怯えた顔で一歩後退さる。

 今、小川の中で一番犯人に近いのが彼女達三人。牧場が消えれば小川の彼女という地位が自分に転がり込むかもしれない三人だ。

 誰かに掴みかからんばかりの小川の肩を、友人が手を置き宥める。


「才人、落ち着いて……」


「斈っ!? 落ち着けだって!? ふざけるなっ! 伊織が、伊織が殺されたんだぞ!?」


「だからこそだよ才人ッ! 感情のままに暴れたって何にもならないだろっ! 僕達で、犯人を見付けよう? 彼女の無念を晴らすんだ!」


「伊織の……無念を? あ、ああ。そうか……そう、だな」


 少し言葉に詰まり、しかし冷静な思考を少し取り戻せたようだ。

 荒い口調を正すように深呼吸を繰り返し、徐々に怒りを押し籠めて行く。

 小川は落ち着きを取り戻し、最後に大きく深呼吸をした。


「ふぅ……すまない。皆、頼む。犯人を見つけ出したい。協力してほしい」


 やや取り繕った声で告げる小川。

 代表するようにモヒカン君が動揺しながらも声を返す。

 一応第一発見者の一人みたいだし、バツの悪そうな顔で頭を掻きながら告げた。


「い、いや、そりゃ別に協力はするがよ。具体的にどうすんだ?」


 そう言えば高坂と足立はどうしてこんな場所に居たんだ?

 第一発見者なのはいいけどこいつ等ってここに来るような理由……待てよ、確か大門寺たちのチームは大門寺が好きにしろって告げて最上と消えたことで女性陣は香中と足立が襲える立場になってたんだっけ。それで逃げてたとか? だったらここに田淵と香中がいなかったのって……


「皆の十分前までの行動を教えてくれ」


「十分前?」


「ああ。伊織は十分前まで、俺と一緒に居たんだ。俺たちの教室で、ヤッてた」


 おいっ!?

 俺たちの教室で何してんだお前らは。俺だって教室ではヤバいとトイレにまで向かったんだぞ。いや褒められたことじゃないけどさ。

 と、とにかく落ち付け。こいつと被害者が十分前まで会ってたってことはその短い時間で彼女は殺されたってことだろ?


「え? じゃあ伊織はたった十分の間に殺されたってことかい!?」


 驚いたのは大河内。さすがに幼馴染が短い時間で死んだと聞かされて驚きを隠せなかったようだ。


「それ以外にあり得るか! 呼び出しを受けてるからって出ていったんだ。そしたら十分後に悲鳴が聞こえて……」


 そうだとすればかなり有力な手掛かりがいきなり入ったことになる。

 ……なんか、不謹慎だけど犯人当てわくわくしてきたな。やはり他人が死んだということと、この中に犯人がいるってことで他人事なのだろうか? いまいち俺には犯人をどうにかしたいとかは思えない。ただ真実を明かしてみたいと思うだけだ。


「とにかく、屋上に行こう才人。ここの奴等だけじゃなく皆を集めた方がいい」


「あ、でしたら、私、校内放送して来ます!」


 十勝が慌てて去って行く。

 放送部に所属する彼女にとっては放送など朝飯前らしい。

 機械類が大量に存在するあそこは少々俺には危険な部屋だ。どこか触って壊しそうで恐い。


 大河内に促され、皆が去って行く。

 部屋を後にする際、小川は一度だけ伊織に向き直る。

 「必ず無念を晴らす」そう告げた彼は部屋を後にした。

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