第四回学級裁判3
三綴が消えたのは昨日の学級裁判前。俺たちは賀田や井筒と顔を合わせづらいから来なかったと思っていたが、もしかして彼が消えたのはその辺りから?
賀田の言葉からすれば三綴は賀田や井筒と顔を合わせる学級裁判に出るつもりだった?
ならばなぜ出て来なかったのか。
……でて、来れなかった?
待て。それはつまり、その時点で彼が拘束されて身動きを封じられたか、殺されたってことだよな。
だがその後三綴捜索が行われ、結局どこからも三綴は出て来なかった。
校舎の中にも、そして外にも居なかった……本当、に?
いや、待て。探してない場所で怪しいところはなかったか?
「皆に聞いてもいいか」
「なんだ沢木? 何かわかったか?」
「昨日三綴を探しただろ。あの時捜索し忘れた場所とか、なかったか?」
「はぁ? んな場所あるわけねーだろ。しっかり探したっつーの」
「俺達も必死こいて全部屋探したし」
「まぁ、見逃したら嫌だしねー」
「じゃあ見落としは無い。ってことでいいんだよな」
「当たり前だろ。それがどうした?」
つまり、皆各部屋を調べて誰も気付かなかった。ということは、三綴は本来探した場所以外の場所に居たことになる。
そして、怪しい場所を俺は、知っている。
すっと、ズボンのポケットに入れていたスマホを取り出す。
「誰か、こいつが何か分かるか?」
「何って、スマホだろ?」
そのスマホを操作して、とある画像を流す。
「なっ!? 沢木ッ!?」
おっと、あまり流すと危険だな。俺が殺される。
動画ではあるのだが、その内容は井筒と賀田の絡みである。
賀田が慌てて俺からスマホを奪おうとするので木場に渡してこれ以上何もしないとアピールする。
「何故貴様がソレを持っているッ!!」
「拾ったんだよとある場所で。で、賀田、こいつが誰のか分かるか?」
「あたりまえだッ! そいつは三綴のモノだろうッ」
そう、これは三綴のスマホである。
「そうだ。しかし、こいつは三綴の死体が持っていた訳じゃ無かった」
「あ? 死体が持ってないってことは三綴の周辺になかったっつーことか?」
「その通りだ大門寺。こいつが見つかったのは俺達が捜索担当だった一階。そして捜索していなかった場所から見つかった」
「オイコラ沢木。俺らが隈なく捜査したっつーのに、お前が捜索し忘れてんのかよ」
「悪いな坂東。流石にトイレの天井にある通風口の中まで捜索しようとは思わなかったんだ」
「通風……口?」
そう、このスマホは偶然見つかったようなモノだ。いや、あの人影を追って見付けることができたから、誘導されたのだろうか? ……まさか、な。
だが、これは重要過ぎる証拠だ。コレが一つ存在するだけで、今までの前提条件がひっくり返る。
「ああ。女子トイレの天井部にある通風口。そこにこいつが落ちていた。何故そんな場所にあったんだろうな?」
この言葉で木場が考えだす。
ふむ。と貝塚も何やら気付いたようで感心したように頷いた。
「つまり、そこに三綴氏が居た可能性がある。ということだな」
「ああ。多分そこに潜んでる間にポケットからスマホが落下したんだろう。暗い天井裏だから誰も気付かなかったんだ」
「良く見付けられたな」
「ああ。まぁな……」
本当に、よく見付かったものだ。もしもこいつが無かったら、今回誰が殺したかの真相には辿りつけなかっただろう。
でも、なぜあそこに三綴がいた?
いや、そうじゃないな。なぜ、あそこに三綴を保管しなければならなかった?
「それで? だから何?」
「田淵、俺達が三綴捜索したのはいつだった?」
「朝食の後でしょ。だからそれがなんな……」
「つまりよぉ。沢木はこういいたいらしいぞ美里。三綴が殺されたのは朝食の前後。三綴捜索時には既にトイレの天井裏に隠されていたっつー訳だ」
まぁ、その時点で死んでたか生きてたかは分かってないんだけどね。生きてたってなると説明ができないというか。殺されかけて逃げた? それだったら屋上に来て俺たちに報告する方が楽だと思うんだが。
まぁいい。これで前提条件が変わった。夕食時でも昼食時でもない。
三綴に異変が起きたのは学級裁判前後。
そして、三綴が何らかの危険に巻き込まれたのであれば……
「三綴を最後に見掛けたのが学級裁判呼びだし後。そこから皆が集まるまでの間のアリバイを、教えてくれ」
もしも三綴がその時点で死んだとするならば、三綴がそこで誰かに遭遇し、女子トイレの天井に収納されたことになる。
ならばその時、屋上に集まっていなかった者の中に犯人が居る筈だ。
まぁ、もしも居なかったら三綴が生存していて隠れてたってことになるんだけど、そうなるとまたややこしくな……
待てよ。そう言えばアイツ、あの時……そうか、アイツなら確かに犯行が可能だぞ。理由は、おそらくアレだな。
見付けたぞ犯人。後は皆のアリバイから、お前を暴きだす!