第四回学級裁判2
「それじゃあ、まずは昼食時に来てなかったメンバーから聞いて行きましょうか」
木場も同じ考えに行きついたようで、足立に視線を向ける。
昼に来てないのは大門寺、最上、足立、田淵、貝塚、山田、原、壱岐、榊、所沢である。
「あー、まぁ説明するまでもねぇとは思うが保健室に居たぜ。アリバイ立証は田淵と一緒だった」
「まぁ、私達が共犯だと言われれば何も言い返せないわね。他に誰かが見てたわけじゃないし」
「夜も同じだ」
「まぁ、足立さんたちが三綴殺す理由もないし信じていいんじゃないか?」
「甘いわ坂東君。理由なんてそこらへんに転がってるモノよ。彼なら大丈夫。そう思っていた大河内君が最初の犯罪者なんだから」
「そ、そりゃ、まぁそうか」
思わぬ木場の言葉に小川が苦虫を噛み潰す。
それに気付いた坂東は頬を掻いて困惑気味に頷く。
自分失言しちゃったか? そんな思いなのだろうが今のは確実に木場の失言だ。
「大門寺君たちは?」
「屋上だ」
「お昼は屋上から動いてないよ?」
「僕らは和室に居たよ。昼はずっとゲームしていた」
「居たのは私と、烈人、壱岐よ。坂東は食事しに行ったけど」
「ああ、坂東は確かに昼食来てたな」
「と言うことは……昼食時のアリバイが無いのは榊君と所沢君、ね」
視線を向けた木場、しかし榊はたすかったたすかったと壊れた視線を彷徨わせており、所沢は爪を噛みながら沢木殺すと繰り返している。
うん、こいつ等が三綴殺して体育倉庫に持っていくとか、できないだろ。
そんな冷静な思考状態じゃないぞコレ。
「この二人、犯人とは程遠い気がするわね」
「俺も多分違うと思う。所沢とか、三綴より俺狙ってるっぽいし」
「一応、拙者も居なかったから言っておくが、三綴を殺したとしたらその後はこうして彷徨う意味などなく布団にくるまって寝てるか、美哉の墓前で祝杯を上げているぞ」
ごもっともである。となると、昼食時には彼が移動させられた訳じゃないってことだな。
「では夕食時になるのかしら……」
「けど夕食に来てなかったのって、足立君と田淵さん、後は榊君だけだよね?」
「ああ。それと坂東が少し遅れて来たくらいだ」
「沢木。俺が怪しいみたいに言うけどな、遅れたのは五分くらいだろ。俺がどうやって三綴見付けて体育倉庫で殺すっていうんだ?」
「あら、私達はまだ貴方が殺したとは言ってないけど?」
木場が即座に反応した。
突然言い訳をして来た坂東が怪しいと思ったようで、畳みかけて見るようだ。
今回の犯人は証拠が少な過ぎるからな、少しでも怪しい人物が居ればぼろを出すようにしてみるつもりらしい。
それで間違ってたら、まぁ犯人当てだから許せ。みたいな感じになるんだろう。
坂東が犯人だったならさらに話しは早い。
「いや、でも疑ってんだろ。犯人は俺じゃねーよ」
「お、俺は違うぞ、三綴殺すも何も今まで一歩も理科準備室から出てなかったからな!」
ようやくこちらに意識が返って来たらしい榊。アリバイにはならないが、多分彼の言葉は本当だと思う。全身を震わせ壊れた瞳で俺違うから。違うから。と告げて来る。コレが演技だと言われればどれ程の男優なのか。それこそ脱帽せざるをえない。
そもそもずっと寝てないようで眼にクマ作ってる彼は、引き籠ってなければおかしいくらいに精神的に病み始めているようだ。
「さて、どうしたものかしらね」
木場が俺の側に寄って来て小さく呟く。
「沢木君、どう思う?」
「どう、と言われてもな……」
そもそも前提条件内で怪しいのは坂東だけだ。
しかしそれ以外だと体育館倉庫に小川と川端が居た訳だし……
中田と日上が早めに体育館倉庫に行ったけど、彼らは小川への夜襲を仕掛けるつもりだった訳で、二人が共同で三綴を跳び箱内に入れたのなら中田が驚いて夜這い失敗にはならなかった筈である。
ということは……前提条件が、間違っている?
落ち付け。
よく考えろ。
まずは原点に立ち昇ろう。
「あー。とりあえず皆に聞きたいんだが、最後に三綴と会ったのって誰だっけ?」
「……多分、私だ」
すっと、顔の横に手を上げて発言したのは賀田天使。
「賀田さん……ってことは、前回の時か」
「ああ。二人が殺され、篠崎が犯人だった時の死体発見直前。私と会話していた」
「それって、もしかして私との?」
「ああ。玲菜との情事をスマホで映したと脅された」
「その後はどこ行った?」
「死体が発見されたと放送があったから私と別れて屋上で会おうと、その、去って行った。その後は屋上に来ず、以降行方不明だ」
つまり、その後は誰も見ていない?
「他にその後に三綴見掛けた奴は?」
そう、居ない。三綴を捜索して校舎内も外も全て調べた。
ちゃんと三人組で調べたのでその三人が結託でもしていない限り三綴はその間この世界から消えていたことになる。
そして、いつの間にか一度小川達が調べた体育館倉庫の跳び箱内部に鎮座していた訳だ。
つまり……どういうことだ?