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第四の殺人3

 トイレの天井に穴が一つ。

 俺たちはぽっかりと開かれた四角い穴を見上げる。


「たぶん、通気口ね」


「なるほど。で、ここにもしかして誰か上がった、とか?」


 俺が見た人影がここに入ったとか、かな?

 俺は洋式便器に足を掛けて穴へと両手を伸ばす。


「気を付けて」


「ああ。よっ、と」


 手を使って身体を持ち上げる。

 これ、降りる時気を付けないと便器に落下したりして危なそうだ。

 暗がりに身体を持ち上げる。

 暗過ぎて周りが見えな……


「木場、ライトを」


「あ、ごめんなさい、ライト全部屋上だわ」


 何と間の悪い。心の中で悪態付いた俺は、不意に気付く。

 なんだ? これ?

 手短に手に当った小物を掴む。

 誰かいるかすら分からない暗闇をこれ以上探索する気にはならなかったので、一度戻る。

 攻撃を受けなかった以上、危険人物がここに居るという訳じゃなさそうだ。

 もしかしたら榊だったのかもしれないし。暗闇の隅で震えてるのかも。

 あまり探索して刺激するのも危険なので俺は探索を諦めることにした。


 なんとか壁と便器を利用して降りる。

 ふぅ、これは結構面倒だな。誰だよここ上った奴。

 っていうか、これは……


「スマートフォンね」


 手に持ったモノを見てみれば、それは誰かの携帯電話。

 電源を入れて調べてみれば、使用者の名前は……


「これ、三綴のだ」


「なんでこんな場所に?」


「わからないけど、でもここにあるって言うのはある意味手がかりだよな。三綴は体育館倉庫で発見される前の間に一度はここに居た。あるいは遺体からスマホを抜き取りここに隠した誰かが居る。ってことか」


「コレが唯一の手掛かりかしらね。指紋採取とか出来ないかしら」


「出来たところでどうやって一致するか調べるんだよ。目視でとか俺は嫌だからな面倒臭い」


「やる気もないわよ。言ってみただけ。でも、スマホが三綴君のってことはそれには証拠とか残ってるのかしら?」


「さぁ? 一応調べてみるけど俺もあんま詳しくないんだよな。ゲームやるくらいしか使ってないし」


「そう。なら屋上に行きましょ。壱岐君や貝塚君辺りならスマホにも詳しいでしょ」


 つまり、木場も詳しくは無い、と。

 友達少なそうだもんな。そりゃ機能など殆ど使って……

 同情の視線を向けると睨まれたのでさっさと視線を逸らすことにした。




 沢木達が去って行く。そしてしばしの時間を置いて、皆が屋上に向かった頃、沢木が降りたトイレの個室に、そいつは天井の通気口から降りて来た。

 身体に着いた埃を払い、ふぅっと息を吐く。


「一応呪いを振りまいた訳だしね。犯人を当てて貰わないとこっちも困るんだよ。存分に殺し合ってくれないと……さぁ」


 通気口の蓋を戻し、しっかりと嵌め直す。

 後始末をきちんと終えて痕跡を消し、彼は個室からでて鏡で身支度を整える。


「でも、皆知ったら驚くかなぁ。この空間に引き込んだ犯人が、この中に居るって知ったなら……さぁて、そろそろ掻き回して行こうか」


 ニヤリ、口元を歪ませ、そいつは慌てることなくトイレから出て行くのだった。




 屋上に俺達が辿り着くと、既に皆が来ているようだった。

 時計回りに小川才人、川端美海、中田良子、日上佳子、大門寺弘嗣、最上明奈、足立次郎、田淵美里、貝塚烈人、原円香、山田壮介、坂東勇作、榊充留、及川清音、井筒玲菜、賀田天使、所沢勇気、壱岐昴、木場実乃里、忌引光葉、沢木修一、十勝眞果といった面子が集まっている。


 それだけで、今回の死体が誰か、殆どの奴が気付いたようだ。

 ちなみに、中田が小川の隣に陣取った十勝に気付いて「あっ」と声を上げていたが、当の十勝は小川には興味を示しておらず、俺の隣に居ることに意識を向けていた。

 歯ぎしりする中田には悪いがこいつが狙ってるのは光葉に惚れてる俺を横合いから掻っ攫うことだからな。既に小川には見向きもしてないぞこの娘。


 俺は改めてメンバーを見回す。

 小川と川端が寄り添い、中田と日上に敵意を向けている。

 大門寺は気付いてないようだが、最上がちらちらと壱岐に視線を送っている。

 なんだ、最上は大門寺から壱岐に乗り換える気か? 流石にそれはないか。何か指摘したいことがあるんだろう。その内勝手に話をするだろうから放置でいいか。


 貝塚と原がいつの間にかくっついていた。

 初々しいバカップル空間が醸し出てるので隣の山田と坂東が居心地悪そうである。

 同じカップルと言っても足立アニキと田淵の姐御を見ろ。落ち付きまくっているだろ。


 榊は爪を噛んで震えている。お前どんだけ怖がってんだよ。

 しかも今回は生き残ったとか呟いてることからしいて今回は全く関係なさそうだな。

 及川と賀田からは視線が合った瞬間殺意にも似た視線が返って来た。

 隣の井筒からは濡れた雌猫のような潤んだ瞳が……怖い、下手に視線を返すと隣の二人に何か感付かれそうでさらに怖い。


 所沢はブツブツ呟いているし、なんか沢木殺すとか不穏なフレーズが聞こえる気がするんだが、気のせいだと思っていいのだろうか。

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