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第四の殺人2

 俺たちは体育館倉庫へと辿り着く。

 そこには服を整えている最中の小川、川端、中田が待っていた。

 全裸の日上を見て、眼を見開いて驚いていたが、全裸のままで外に送ったのは自分たちだと気付いて真っ赤な顔で着替えを始める彼女に同情の視線を送っていた。


 日上が着替える間に俺たちは状況を確認する。

 照明の無い倉庫は扉を開いていても薄暗く、内部を見渡すのは難しい。

 倉庫入り口で現場を見ていると、小川がやって来た。


「やっぱり来たな沢木」


「ああ。で、死体はアレか」


「ああ。発見当時を維持してる。俺が跳び箱を蹴り飛ばしてそのままだ」


「了解」


 倉庫の奥まった場所に蹴り倒された跳び箱がある。

 その跳び箱の中に、三角座りの三綴がいた。

 首が折れているようで、力無くうなだれた頭がこちらを覗き込むように倒れている。

 視線が覗き込むようなのは意図した結果か偶然か。


「死因は首、でしょうね」


「ああ。一応箱から取り出してから調べないとだけどな」


「箱……ね。取り出しよろしく」


 俺と小川で死体を引き出す。

 こういう時男は不利だと思う。

 お前らも手伝えよ。死体運び俺も嫌だよっ。


 死体を白日の元に晒して調べる。

 やはり外傷は首だけだ。

 首を折って一撃死だろう。


 他に気になる外傷は無い。

 つまりは犯人は三綴の首を折って殺害し、体育館倉庫の跳び箱の中に隠したのである。

 他に怪しいところもないようだし、これは殺害現場も別と見た方が良いだろうな。


「小川達が使ってた訳だから、昨日には殺害されて跳び箱の中、か」


「それなんだがな、昨日の探索があったろ。三綴が居ないから手分けして探そうって」


「ああ。それがどうした?」


「その時ここを探したのが俺たちだ。この跳び箱の中も調べてる」


「なるほど、つまり探索終了後に三綴君はここに入れられた。そして小川君達が来た後はずっとここに居たから、殺害時刻は昨日の朝方から夕方に掛けて、と言う訳ね」


 今回は相手を指し示すようなヒントがないな……

 今までは証拠が散見していただけに、ここまで徹底してヒントがないとそれはそれで気になるな。

 今までは何も考えていない衝動殺人が多かった。

 でも、今回は……落ち付いて死体を隠しているような……知能犯、とか?


『緊急招集、緊急招集。死体が発見されました。全員至急屋上にお越しください』


 十勝が放送を開始したようだ。こんな深夜帯なのが皆には辛いだろうが。

 というか、一寝入りしてからでもいいような気がするぞ。俺もまだ眠いし。

 にしても……証拠らしい証拠が、ないな。


「何も無いわね」


 俺と木場は三綴の衣類を探って頷き合う。


「沢木、購買からライト持って来て貰ったぞ」


 川端と光葉にお願いしたらしい。二人が持って来た懐中電灯を手に、俺と木場は体育館倉庫を調べる。


「何かないかな?」


「何も無いと思うけど……他にどこか探す? 殺害現場が分からないとどうにもならないけど」


「闇雲に探しても、だよな?」


「では、一度屋上に向かいましょうか」


 俺たちは捜査を切り上げる。

 本当に怪しいモノが見当たらない。

 死体も首を折られただけのようだし、犯人に繋がる何かが全く無い。


「とりあえず状況証拠も物的証拠もない状態だし、アリバイを聞いて推理して行くしかなさそうね」


「犯人、流石に今回は分からないかもしれないぞ?」


「それでも、一応、集まってみましょ」


 俺と木場が屋上に向かうそぶりを見せたためだろう。小川たちも屋上向って歩きだした。

 下足場へと戻り靴を履き替える。

 そのまま普通に階段に向かって屋上に上がる、その直前だった。


「……え?」


「修君?」


 立ち止まった俺に、光葉と木場が気付く。

 遅れて小川達も立ち止まったが、彼らには一足先に屋上へ向かうよう告げて別れる。


「どうかしたの?」


「今、人影が見えた」


 俺はそう言いながら人影が消えた先へと向かう。


「ちょっと、そこ女子トイレなんだけど」


「ああ。そうなんだけど……悪い、二人で誰かいないか見てくれないか? 俺が入っちゃダメなんだろ?」


「まぁいいけど。ただトイレに入っただけなんじゃないの?」


 怪訝な顔ながらトイレに入って行く木場と不安げに付いて行く光葉。

 俺は女子トイレの前で二人を待つ。

 何か異変でもあれば即座に駆け付けるつもりだ。

 しかし、ドアを開き個室を覗く木場は、俺にため息交じりに告げる。


「誰も居ないわよ」


「そんなはず……」


「気になるなら入って来なさい。違和感でも見付けられる?」


 木場に許可を貰ったので女子トイレに入る。

 普段禁忌とされているだけに謎の感動を覚えたが、今はそんな暇は無いので個室を一つ一つ確認する。

 掃除用具入れも確認したが誰もおらず、窓も施錠されているので逃げることも出来ない。


「人なんていないじゃない」


「おかしいな。本当に見間違い……待て、アレはなんだ? なんであんなところに穴が?」


 気付いたのは多分偶然だった。

 木場が見ていた個室の上、天井部分に穴が一つ、開いていた。

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