3族会議(5)
最近、毎日短文で申し訳ございません…
敵、味方の頭上を所狭しと矢の雨が降る。
前の世界ではお目にかかれなかった光景だ。
まあ、実際にこの矢の下にいる身としては見たくない光景でもある。
「全軍、盾掲げ!!」
指示を出しつつ、自分も盾を上に向けた瞬間…
カキカキカキカキ ドスドスドスドス
いたる所で矢が刺さった。それは相手の陣営もそうである。辺りの草地は草に紛れて矢が生え味方の何人かも矢が刺さったようで呻き声が漏れ聞こえてくる。
現在、神族は人族と魔族を相手に扇状に軍を展開し2正面作戦を強いられている。不利になれば真っ直ぐ退却し、橋を渡れば安全に逃げられる…そういう状態を作っている。こういう戦闘が何度もあるためか魔族や人族側の兵士達もあまりここで攻めきるという雰囲気ではなく、追い返すという気がひしひしと伝わってくる。
「ボッシュ、カーネルのいる辺りはどこだ?」
「あそこの最前線ですね。行きますか?」
「ああ、あいつのことだ。戦闘中で呼んでも来れないだろ?」
笑うボッシュのみを連れて最前線へと向かう。
レディ達も付いて来たそうに見えたのだが… さすがに最前線に連れて行く気にはなれないので声は掛けない。何かあったらということを想像しただけで怖い。そんなことを考えていたらボッシュが質問してきた。
「でも、なぜ今この膠着状態でカーネルなんですか?私はまたあなたが前線に出て行って魔術で大量殺戮すると思ったんですが…」
「お前なぁ… 俺をいったいなんだと思ってんだ?」
「無自覚ジゴロ?最終兵器もありえますし、はた迷惑な暴走者、ああ… 世の中の男・女の敵っていうのもありえますね。」
「酷い言われようだな!しかも最後のはこの世界の人みんなの敵じゃねえか!?」
ククっと笑いながら二人して戦場を進んでいく。だんだんと敵兵も多くなってきた。
俺は刀を召喚しつつ後姿が見えてきたカーネルの元へと行くと声を掛けた。
「よお、カーネル。調子はどうだ?」
「おお、魔王様か。こっちはまずまずってところだな。そっちは大活躍だったじゃねえか。魔皇帝相手に素手でやり合うって奴はなかなかいないと思うぜ?で、こんな最前線に来たってのはそんな世間話するためじゃねえだろ?どうしたんだ?」
神族が雄叫びを上げながら数人カーネルに向かって槍を抱えて突っ込んできてるのだが、カーネルは大盾を横にするとなぎ払うような形で全てあしらう。あしらうと同時に反対の手で持っていた巨大な斧で相手を切り裂く。血飛沫を目の前で作り上げるカーネルを見て戦鬼という言葉が似合いそうだと笑いが込み上げつつ、俺は聞いてみた。
「今の状態から神族をこちら側へと誘い込むってできそうか?」
俺がそう言うとカーネルとボッシュは二人して驚いてきた。
「まさか、魔王様よ。あんたこの神族を壊滅させる気か?今の戦況の感じだとしばらく膠着状態続いて相手が疲れるのを待ってタイミングよく敵味方共に引くってのが普通だぜ?」
まあ、そうだろうな。敵味方そんなにやる気なさそうだったし…
「俺が普通で満足するとでも?」
「いや、でもどうやって… ってか、誘い込むのは難しいぜ?さっきも言ったようにしばらくしたら退却するのが目に見えてるようなもんだから敵さんもそんなに突っ込んで来ないしな。」
敵味方共に落ち着いていたら膠着状態からお互い下がるだけ…
なら、落ち着いていなかったら…?
そんな結論にいたった時、ボッシュと目が合う。
思わずニヤける俺を見てボッシュがげんなりとしている。
「よし、思いついたことあるからとりあえず試してみよう。カーネル、サンキュ!ボッシュ、一度本陣に戻るぞ!」
「おう、指示なかったらさっき言ったようにタイミング合わせて引くからな~。」
「あいよ~」
俺は片手を挙げて振りながら戻っていく。
「ボッシュ、脚力が一番強いのってどの種族だ?」
「恐らくですが、ユーシア達、ケンタウロス族でしょう。彼らの下半身は馬ですから、さすがにカーネルも脚力だと敵わないと思います。」
話しながら歩いていると本陣へと到着した。
戻ったところにミントがいたので早速、ユーシアを呼んで貰った。
「魔王様、我々ケンタウロス族に用事があると聞いてきたのだが?」
「わざわざすまないな。実はだな… こういったものを用意するので手伝ってもらいたい。」
俺が考えたのは最初に最前線近くでは新しい道具を撒いてもらい、その後長い木の板と岩で簡易投石器のような物を作り、発射するのにユーシア達に踏み板を思い切り踏んでもらい魔術ダイナマイトを飛ばしてもらおうとした。それを説明し、俺は使う道具を召喚しユーシアに見せていった。
「ようするに、これを神族の陣営の奥深くに投げ飛ばせばいいわけだな?それなら変にそんなことせずにこうしたらいい。多分、この方が俺達にとっては楽だ。」
横で話を聞いていたボッシュも頷いてユーシアに賛同した。
「ケンタウロス族の方々は狩猟が得意です。ユーシア殿が言われるようにお任せした方がいい結果になると思いますよ。」
ユーシアが言うには魔術ダイナマイトを長い縄で括り、ダイナマイトをハンマー投げのようにして回すほうが余程飛ぶらしい。
よく飛ぶということなら俺の考えているようにできると思った俺はユーシアの提案を受け入れることにした。




