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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
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セシリー救出(1)

クオも神族の代表の子へと向かって歩いて行くのを見た俺は捕虜に尋問をすることにした。

馬車に乗せた2人の捕虜は俺が近付いたのに気付くとギロリと俺を睨んでくる。

俺はそれを無視して猿轡を取ってやった。


「てめえ、俺達を誰だと思っていやがる!俺達は『オリオーン山賊団』の一員だぞ!?今ならてめえの命だけは助けてやる!さっさと俺達を解放しやがれ!」


俺は小刀を召喚しつつ、黙って近付き叫んでる男の額にその刃を少し当てて入れる。


「ぎゃっっ!!いてえ、いてえよ!!」


少し額に小刀が入ったくらいで騒ぐ男を見て自分の神経が逆撫でられるのがわかる。


「勝手に喋るな。質問はこちらがする。聞かれたことだけ答えろ。わかるか?わかるよな?どうなんだ?」


騒いでいた男は涙を流しながら歯を食いしばり声を抑え、もう一人の男は首を縦に振った。


「じゃあ、素直に答えろ。お前らの頭が言っていた『昨日のやつ』ってのはどんなやつでどこにいる?」


大人しくしていた山賊の方が俺の質問に答えだした。


「は、はい。『昨日のやつ』は2、3日前にメサイア第二部隊の方から連絡が来て、急遽攫うように言われた神族の女です。」


「場所。」


「オリオーンの中心にある町長の家に連れていきました。」


「…次の質問だ。お前らの頭は確か、『最初から大人しかったが最後には…』って意味深な言い方してたよな?…何をした?」


俺の声色が自然と暗い声となり、目付きが細くなる。山賊は2人とも震えだし、まともに返事が返ってこない。俺は自分の機嫌がさらに悪くなるのを感じる。


「何をした、と聞いている。」


「は、はい!他の神族の女共を人質としたら言うことを聞いてたんですが途中で何度か逃げ出そうとしたので何人かで殴り、無理矢理オリオーンへ連れて行きました!」


「あの子に対して何か性的な嫌がることをしたか?」


「してません!あの神族は俺達にとっては商品です!商品には手出しません!」


「殴ったりするってのも手出すうちに入るんだよ… 舐めてんのか。」


「ぎゃああああ!!」


思わず止めていた小刀を奥に入れてしまったようで刺された男の額から少し出血が多くなる。

その様子を隣で見た男は謝罪してきているが俺はそれを無視して質問を続ける。


「一応聞いておくが、『オリオーン山賊団』とやらは他にも何人かいるのか?」


「いないです!許してください。お願いします!」


とうとう小刀が刺さっていない質問に答えていた男まで泣き出してきたので俺は呆れた。


「お前らな… 家族を傷つけ攫われた奴が犯人が泣き叫ぶのを見てあっさり許すとでも?バカじゃねえのか?が、殺すのも処理事態が面倒なのは確かだから、お前らにはチャンスをやる。」


俺の言葉を聞いて山賊2人は少し目を開き、希望が見えたような目になった。


「俺はこれからオリオーンへと行き、連れて行かれた家族を救出する。無事にちゃんと家族が連れ戻せたらお前らは解放してやる。だが、俺がここに二度と来なかったら誰かがお前らを発見して解放するまで手足を縛った状態のままだ。つまり、お前達のさっき言った情報が間違っていたら俺の生存確率は減ってここに来れるかどうかもわからなくなる。いいな?」


山賊が必死に首を縦に振っているとクオが戻ってきた。


「真一様戻りました。例の神族の代表の子なんですが… 真一様が会わないことを伝えると泣きながら謝罪してきました。」


「あん?この山賊共は泣いて謝ってもおかしくないがなんであの子が?」


「どうやら自分が怖がって真一様を避けたのを気にしていたようです。」


それを聞かされて俺は思わず苦笑する。


「別に怖がって避けていたのはあの子だけじゃなく、他の子もみんな避けていただろうに。まあ、どうでもいい。クオ、居場所もこいつらから聞き出した。こいつらはセシリーを救出して本営まで連れ帰ることができたら、その後解放する。」


「…殺さないのですか?」


「ちと思うことがあってな。不満に思うかもしれんがここは見逃せ。」


「…わかりました。元より真一様に逆らうつもりはありません。」


「うむ。ミントを無事に戻れる場所まで馬車に乗せ連れて行って、山賊を降ろし、その後俺達は2人でオリオーンへと救出に行く。」


「…いよいよですね。」


そこから俺達の行動は早かった。

素早く馬車の御台に乗り込んだ俺は馬車の中にいるミントに声をかけいるかどうか確認を行い、クオは馬車を走らせる。捕虜は邪魔だが一人ミントがいる中に入れるというのも心配になるので俺とクオの横に置いておいた。

神族の子達を降ろした後なので馬車の速度が速く、来た道をあっという間に戻れる。

魔族領行きのカーネル達と分かれた道まで戻ってきた俺は捕虜2人に猿轡を再度噛ませ馬車から落とし、クオと2人で草むらへと捕虜を引き摺り転がした。

荷台の方へと顔を出した俺はミントに今後の指示を出す。


「ミント、言ったように俺とクオはこれからオリオーンへと向かう。お前はこのまま戻れ。」


そう言うとミントは泣きながら謝罪してきた。


「真一様、先ほどは申し訳ございませんでした。どうかお願いします。私を僕から解任しないでください。」


「…ミント、状況はお前の知ってのとおり逼迫している。お前を連れてオリオーンへ行くわけにもいかん。話は俺とクオがセシリーを連れて戻ってからだ。それと捕虜2人はここに置いておく。わかったら馬車に乗って本営に戻れ。」


しばらく泣いていたミントだが涙を拭いて馬車を本営へと走らせていく。

その馬車の姿を見送った俺はクオに声をかけてオリオーンへ顔を向けた。

もう少しだけ我慢しよう…

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