いざオリオーンへ(5)
1月17日
半分寝落ちしながら文章作成したり修正していたせいか、文章がわかり辛く、かつ設定無視を指摘されたので修正させていただきました。
読者の方々には深いお詫びを申し上げます。
同時に指摘して下さった方、ありがとうございます。
情けない筆者ですが今後とも何かございましたら教えていただきたいと思います。
セシリーは俺の顔を代表の子と見比べながら少しだけ歩みよる。
「…知り合いか?」
思うことは色々あるし、聞きたいことも色々あるが、まずは…と思いこの質問をした。
「…はい。」
「今夜はこの辺りで野営だ。知り合いなら積もる話もあるだろう。するといい。」
「…ありがとうございます。」
他の婚約者達もセシリーの今まで見たことない様子と知り合いとの再会ということで静かにしている。
ここは神族だけという状態がいいかもな、と思いこの場を去ろうとするとちょうど声をかけられた。
「魔王様、ザインの処置。完了しました。」
俺の立ち去るタイミングを計っていただろう。
ミントが声をかけてきた。
俺は頷き、婚約者達を促してこの場を去った。
-----------翌日の朝方------------
ボッシュが俺のテントに走りこんできた。
「真一様!神族とセシリー様がテントから姿を消しました!」
俺は何気に驚いていなかった。昨日セシリーが姿を現せてときから代表の子は態度が変わっていたからだ。
「昨日の神族の集団でオリオーンまで到着できると思うか?」
「…飲料などない状態ですから、辿りつくにしろ数日かかりますし、尚且つ全員地理に明るくないとなれば…」
「やはり、難しいか。」
そこで思わずため息を吐いてしまう。
「だから動くなって言ってたのになぁ~ ボッシュ?」
「少数ですが、すぐ近辺の探索をさせます。」
「頼んだ。今からオリオーンへ真っ直ぐ向かうとして余裕はあるか?」
「ギリギリですね。余裕なしです。」
「わかった。会議へ向かいつつ探索はその少数に任せる。見つかったらいつでも知らせろ。」
「わかりました。」
ボッシュに指示を出し終え、フッと気付くとクオとナターシャがこちらを見ていた。
俺は近付き声をかける。
「そういう顔をするな。大丈夫。必ず見つける。だが… 戻ってくるかはセシリーの気持ち一つだ。」
俺の言いたいことがわかったのか二人とも頷いた。
ボケと突っ込み…というわけではないが、クオ、ナターシャ、セシリーは3人とも奴隷から俺に仕えるようになって常に一緒だったのでそれだけ心配だったのだろう。
この時気付いたのは種族違えどやはり気を任せられる者だと思ったら心配になるんだな、と思った。
セシリー次第というのは奴隷ではないのだからいなくなってもそれ自体が本人の意思ならば引き止めない、ということだ。そうこうしているうちに今度はレディとアンナまで来た。
どうやら彼女達も婚約者となって仲良くなっていたセシリーが心配らしい。
「セシリーを見かけたらみんなで叱ってやろう。」
「はい!」「そうですね。」「心配かけさせてるんだからね!」
多少、元気が出たのか3人とも返事は少し力強かった。
それから俺は食事を取り、すぐさま部隊を出発させる。
昨夜から現在までイースからの連絡はないがどうなったのか、などと思ったがとりあえずは会議へ向かうように俺も移動を始めた。
その日の昼は特に知らせもなく、夜にも新たな知らせはなかった。
知らせがあったのは翌日移動を開始して間もない頃…
「真一様!逃げ出した神族の者達がいました!」
「場所は?」
「この先で道を踏み外した者がいるようで助けようと崖を降りている最中です。」
「ちゃんとした降り方をしてるのか?」
「いえ、手のみで崖を降りようとしています…」
「ッチ!戦闘があるかもしれんと思っていたが戦闘ではなく人命救助かい!急ぎ行くぞ!ボッシュ、味方の羽族に準備させろ!」
指示を出したあと、俺は現場へと馬車の速度を上げさせる。
到着すると神族の子達は何人かは崖の上から手を伸ばし崖下へ落ちた者達を救い出そうと降りている最中だった。俺は自分の機嫌が悪いのも抑えずに命令する。
「羽族。人の忠告を無視して崖に落ちそうな子達を助けてやれ。」
崖と言ってもこの場合、数mしかなかったため羽族の救出はものの数分ほどで済んだのだが、セシリーの姿が見えず俺は再度荒れた。
「ボッシュ、セシリーの姿が見えないようだがお前は見かけたか?」
「私も見かけていません。」
「代表の子はどこに?」
「崖の一番下に落ちていたので助けた後は治療しています。」
返事を聞くと俺は羽族に治療を施してもらっている代表の子の元へと案内してもらう。
代表の子は俯いたままの状態で治療されていて俺が近付いても俯いたままだ。
「君達、神族の子達を救出したんだが、セシリーが見当たらない。セシリーはどこかな?」
「…」
質問した後も黙って俯く代表の子だったがしばらくして顔を上げると俺に向かっていった。
「…人族に攫われました。以前もそうですが、人族はすぐ攫う。あの方は今回で2度目です!なんでこんなことするんですか!?」
ボッシュが何か言おうと前に出るのを俺は押し留め、代表の子へ向かって言った。
「…一度目に奴隷になったのは友達に騙された、と聞いていたんだが?間違っているのかな?」
「誰がそんなことを!?」
「セシリー本人だよ。俺は奴隷を購入する時、奴隷になった事情を加味して決めた。友達に騙されて奴隷ってのは精神的にきてるだろうと思い、詳しく聞いてなかったが君は知らないか?」
「え…あの頃のセシリー様…?あ、まさか…」
何か思い当たることがあるのか、みるみるうちに顔が青ざめていっている。
俺はお構いなしに突っ込む。
「それとセシリーを奴隷解放を行ったのは俺なんだがな。一つ言わせてもらう。久しぶりに再会してセシリーを神族へ帰そうとする気持ちはわかるが、俺達の好意を無駄にしてセシリーをもう一度行方不明にさせたのは君だ。人族をそこで恨むというのは筋が違わんかね?」
「違う!一緒に私達は帰ろうとしただけ!攫ったのは人族だもの!」
こういう時、どう言えばわかりやすいか少し思案した俺は最適な台詞を思い出した。
「君達が声を掛けセシリーを連れ出す。そのセシリーが再度攫われたこと。人族にさらわれること自体を阻止できず崖に落ちて?落とされて?怪我をしたこと。今現在、君達は自力でオリオーンの神族の元へ行くことができず俺達人族に対して保護してもらわないおいけない。この状況、これはな… 君達に力がないからだ。」
その言葉を聞いて代表の子はビクリと身体を震わせた。
そして、俺は再度言う。
「思いを通すのに通すだけの力は必要。今回はなかった… 力の無さを恨みな。」
それを聞いた代表の子は俺を睨んだまま瞳に涙を浮かべ声を押し殺しながら泣き始める。
横で話を聞いていたボッシュが俺に話しかけてきた。
「真一様、かなりイライラされてますね。らしくないですよ?女の子を泣かせるなんて。そんなにセシリー様がいなくて落ち着きませんか?」
「当たり前だ!まったく… 無事に神族の元へと帰りつけるならまだしもさらに攫われただと?これが怒らずにいられるか!」
俺の怒声を聞いた代表の子は徐々に泣き止んでいき俺に話しかけてくる。
「…なんであなたがそんなに怒るんですか?セシリー様は神族ですよ?」
「あいつは俺の家族になってもらった。仮初めだとしても、だ。だとすると家族が行方不明で落ち着いていられるか!」
「…人族はオリオーンの方向へと騎馬で行きました。」
俺はその子に近付いていく。
その子はそんな俺に対してビクリと大きく震えているが俺は黙って近付く。
「教えてくれて、ありがとう。」
そう言いながら頭を撫でる。
「本当は怖かったんだろう?さっきはすまなかった。俺も自分を抑えられなかった。ちゃんと送り届けるから、今は大人しくしておいてくれ。」
そういうと代表の子は次第に大粒の涙を浮かべ声を抑えず再度泣き出してしまった。
「私こそ… 私こそごめんなさい~!!」
泣きながら抱きついてきたその子の頭を撫でながらアイコンタクトを行い、セシリー探索部隊をさらに出す。
絶対に不幸になんてさせない。
攫った人族に対して憎悪を沸かせつつ俺は代表の子が泣き止むまでそのまま頭を撫でていた。




