移動
ここで初めてフードを取ったアンナさんの顔をはっきりと見た。
薄い空色のウェーブが掛かったセミロングの横から後ろ髪に目に掛からないよう分けられた前髪。
肌の色は白っぽいが俺達と変わらないくらいの肌色。
そして、目は髪と同じ薄い空色で文字通りキラキラと輝いて見え、唇は薄くピンク色で固く横一文字に結ばれている。
髪や目に色がある割には西洋人のような顔付きではなくアジア系ぽい。
身長もどちらかというとアジア系。
外見の感想を一言で言うなら… 壮絶に綺麗だ。
ぶっちゃけ、見惚れていた。
が、その瞬間。
「な~にアンナさんが可愛いからって止まってんだお前は!」
武が背中をバンバンと叩きながら笑ってきた。
「んなっ!バカ言ってんじゃねーよ!」
俺は叩かれたのをきっかけに動きだして武に反論したが、
「確かに凄く綺麗だよね。真一君にもとうとう春がきたのかな~。」
公彦が武とは反対側から肩に手を掛けて言ってきた。
「ちょ、公彦!?今はそういうこと言ってるような状況じゃないと思うんだけど!?それにアンナさんは初対面だし、俺達はわけわからん状態なんだから今はそっちの対応をする方が適切だと思うんだ。」
「…ん?」
「…へえ。」
武と公彦二人して変な返事をしつつなぜか二人は驚いている。
よくわからんが今はそんなときじゃない。
俺は一度深呼吸をして気持ちを切り替えアンナさんに話しかけた。
「失礼しましたアンナさん。お手数をおかけして申し訳ないのですが案内をお願いしてもよろしいですか?」
そういうとそれまで横一文字になっていた唇は少し笑みの形になっていてすぐさま声が出てきた。
「はい、わかりました。どうぞこちらへ。」
その声は鈴の音を転がすと言ったような表現が合うような声でしかも声量が出されてなくてもこちらの耳にすんなりと入ってくるような聞き取りやすい声。
アンナさんが案内してくれようと進みだしたが俺が動かないことに気付いた武と公彦が声を掛けてくる。
「真一。どうした?」
「あ~、俺は最後尾に付くわ。誰か迷子になってもあれだし。」
ちゃんと理由を言ったのだが武と公彦は再度二人で目を合わせて小声で話を始めた。
「あれ?これ決定?」
「決定じゃないかな?」
よくわからないことを言っているがそれは無視して他の巻き込まれた人達を振り返り声を掛けた。
「さきほどからこちらで話していることが聞こえたかも知れませんが、今後のことについて王とジュリウスさんが話をします。その間、別の部屋にて飲み物をいただいたりしようと思うのでみんなで移動しましょう。」
そう声を掛けるとみんなアンナさんの後ろについて行く。
いつの間にかいくつかのグループに分かれていてそのグループごとに固まって移動を始めた。
武と公彦は俺に付き合って最後尾を行くらしい。
なんにせよ… 疲れた。色んな意味で疲れた…。




