謁見(1)
部屋から出るとジュリウスが待っていて人が部屋から出終わったのを確認し進み始めた。
ジュリウスを先頭に数歩後から俺達が続き他の人達がその後についてくる。そんな形でしばらく進んでいると通路に沿って、一定間隔でカンテラのようなものが掛かっているのに気付いた。それは火のように揺らめくことがなくしかし、煌々と辺りを照らしている。電気などの化学が発達しているのだろうか、それとも魔法などといったファンタジーなんだろうかそんなことを考えていると同じことを考えたのか武が洩らした。
「火じゃねーけど電気かな?」
「いえ、それは魔力ランプという灯りの道具です。あ、この扉を開けると王の間です。」
「魔力とか…。ファンタジーだね~。」
「いまだに異世界とか信じられん…」
他の人達もざわめいているけど、王の間への扉を開けて入ってるんだし多少緊張しようぜ…。
そう思っていると進んで左前に少し階段があって、立派な椅子が置いてあり、その椅子に座っている人物は精悍な顔付きをして立派な顎鬚を蓄えているおっさんが座っていた。その人物が立ち上がりこちらを向いた。
「異世界の者達よ。よくぞ参られた。私はこのイングリード王国の38代目の王となるレオナルド・メイソンという。」
その様子を見ていたジュリウスが慌てて片膝を付き頭を下げた。俺達も次々とその形にならって頭を下げると朗らかな声が聞こえる。
「頭を下げたままではワシの顔は見えんであろう?顔合わせなのだ気にせず面を上げよ。」
そう言われて俺達は顔をあげて王と顔を合わせた。
「まず最初に…。簡単に事情を説明させてもらう。勇者とは人族を救う偉大な存在で人族が危機に瀕すると召喚の部屋から自動で呼び出される。と言い伝えられておる。そして現在人族は魔族・神族との争いに負け続け絶滅の危機に瀕しておる。伝承は所詮伝承でしかないのかと思っておったところでそなたらが召喚されたというわけじゃ…。ゆえにワシらはそなたらの中にいる勇者に国の命運を賭け、救世を頼みたいと思っておる。事情は説明したので…ジュリウスよ。勇者の選定を始めよ!」
「はっ!」
声を掛けられたジュリウスが玉座の天辺に置かれた水晶を手に取りその場で掲げた。
「『我が望みに応えよ魔水晶!我は望むは勇者の存在!示せその位置を!』」
しかし、何も起こらなかった。
止まった空気…
凍りつく時…
その時謁見の間に広がった一つの声。
「まさかさっき騒いでた連中の中に勇者がいるのかもね。」
公彦が苦笑いしながら言ったこの一言に、騒いでいた連中を冷静に対応していたジュリウスが反応した。
「まさか!あんな勝手な連中の中に勇者がいるわけが…!」
「ジュリウス?いったいどういうことだ?召喚された者達はこの者達だけではなかったのか?」
「実は…」
あらましを王に話をしたところで王が頭を抱えた。
「神はイングリード王国を見放したのか…」
国の命運がさっきわめきちらしてたおっさん達の一人か、もしくはヒステリーを起こして「弁護士を!」と叫んでる女性達の誰かに委ねられるとしたら確かに頭を抱えたくもなるな…。と思っているとジュリウスが青ざめた顔で叫んだ。
「召喚の部屋から残りの者達を連れてまいれ!」
周辺のコートを着た人達はすぐさま喚いていたおっさん達を連れて着た。




