騒動勃発
ナターシャとセシリーが婚約者となった俺は… 相変わらずな生活を送っている。
とりあえず婚約者とは認めたものの隙あらば他にいい男を近付けさせようと画策してるのだが、召喚された人達の中でまともそうな男っていないんだよな… 強いて言えば武と公彦くらいか。
そんなことを考えながら俺は魔術道具をサクサク作っている。メサイア相手に大立ち回りした時に大半を使い果たしてしまったのだ。魔術道具を作っている時は基本的に作業場は立ち入り禁止としている。なので扉がノックされる時は来客か揉め事の時だ。
つまり今日は何かがあったのだろう。既に夕飯前だという時間帯に扉がノックがされた。
『コンコン』
「は~い。」
「田中さんはいらっしゃいますか~?」
「いません。死にました。さようなら。」
「いや、おもいきり本人が返事してるじゃねーか!」
「今、忙しいんだけどどうした?」
許可出してないけど、武が入ってきた。
「ったく、堂々と居留守使おうとするとかどーなんだよ。」
「忙しいんだよ。鍛冶に商売に訓練にって考えたら頭痛くなりそうだ…」
「おっさんなのに若い頃みたく色んなもんに手出しすぎたツケだな。」
「んなこと言ってたらこの筒やらねーぞ。」
「ん、何それ?」
「メサイアとの戦闘で俺がばら撒いてたやつだよ。ほら、話してたろ?」
「あ~、でもそれって何なん?」
「元の世界のダイナマイトみたいなもん。」
「はぁ!?お前…」
「フ、崇めるがいい。」
「バカじゃね!?」
「これのお陰で生き残った奴に対しててめーは喧嘩売ってんのかコラ。自分の身で威力確かめてみるか?あん?」
「いやいやいや、だって普通こんなんつくろーとかおもわねーべ?何があるからって前もって作る奴いるんだよ。」
「俺は使った!役に立った!」
「…逆に言えばお前しかいねーんだけどな…」
「で、結局話って何よ?」
「おう、そうだった。レオナルド王が呼んでるみたいだから王城に行こうぜ。」
「ん、何かあったかな?俺達だけか?」
「いや、公彦もそうだけど、召喚された奴ら全員とりあえず集まってくれってことらしい。」
「ふーん、何かね~。」
「とりあえず、行こうぜ。」
「ん、じゃ… こいつで終わりにしておくかなっと!よし!クオ~!」
「は~~~~~~~~い!!」
「バカと一緒に王城行って来るから戻りが遅いようだったらナターシャとセシリーの3人でご飯食べてろ。」
「わかりました… と、言いたいところですけど真一様がいないと2人とも機嫌が悪いので早めに戻ってきてください。」
婚約者となった2人は俺と過ごす時間を大切にしてくれるのだが、俺はできるだけクオや他の奴を同席させて甘い雰囲気は作らないようにしている。2人はそれが不満らしく俺がいない時などは結構イライラしてるとか… クオとしては回避したい状況なのだろう…が
「わりと真面目な話かもしれん。確約はできんができるだけ早くは戻る。」
そういうとクオが真面目な顔になる。
「何かございましたか?」
「まだわからんから王城へ行くのさ。」
「わかりました。2人には説明しておきます。」
「すまんが頼む。では、行って来る。」
「いってらっしゃいませ。」
俺と武は2人して家から出て王城へと向かう。
途中で公彦と落ち合い3人となって更に王城へと向かっていると俺のお店で働いてくれてる女性陣達と出会う。
「あら、店長。こんばんは~。」
「ぉ、藤井さん、山本さん、佐藤さん、こんばんは。」
「「こんばんは~。」」
「こんばんは。」「どもっす。」
「店長、何で私達まで呼ばれたか知ってます?」
「や、俺も知らないんですよ。みなさんもご存じない?」
「知らないです。」「知らないわよね。」
「とりあえず、王城に行きましょう。」
「「「は~い。」」」
そんな挨拶や会話を女性陣と進め歩きを再会していると武と公彦が突っ込んできた。
「お前、前の世界よりも手早くね?」「真一君、モテ期ってやつ?」
「んなわけねーだろ… ってか、下手したら俺が嫌われるからそういうことをあからさまに言うのやめろ!藤井さん達は非戦闘だし、何をやって生活費を稼いだらいいかっていう状態だったから俺のお店にスカウトして働いてもらってるだけだよ。」
「あ~、この人達がそうだったのか。」「なるほどね~。」
「あら、私達は店長だったらいいね~とは言ってますよ?ね?」
「うんうん。」
「店長、最初は怪しい人だと思ってたけど親切で優しい人っていうのがわかったし、私もありだと思うな~。」
「ほら、やっぱりモテモテじゃん!」
「…」
俺は困って目線を逸らす。例え本当にそう思っていても慣れないので頼むから当人がいないところで話して欲しい内容である。
「あ、店長照れてる?可愛い~~~!」
藤井さんが俺に気付いて発言すると、山本さんや佐藤さんまで囃し立てる。
武と公彦は爆笑してるので武は殴っておいた。
そうこうしているうちに王城へと到着し、門番と会話し中へと入る。
入った先の広間にはジュリウスさんとアンナさんが俺達を待っていたようで頭を下げてきた。
「みなさん、こんばんは。遅くにご足労をお掛けして申し訳ありません。」
「いえいえ、ジュリウスさんやアンナさんこそご苦労様です。この時間帯に召喚された者達全員が集められていると伺ったのですが?」
「そうです。少し問題ごとがあり、相談ということで集まっていただいております。」
「なるほど、では集合場所へ向かいましょうか。」
「こちらです。」
俺とジュリウスさんが挨拶を交わし、アンナさんが案内を務めてくれた。
案内してくれたのは俺達が最初に召喚されて食事をもらっていた休憩所で、中に入るとそこには既にレオナルド王、ジャック王子、レディ王女、他の召喚された人達がいて俺達が最後に部屋に入った形となった。
「おお、よく来て下さった。真一殿はずいぶん久しぶりじゃの。」「ふん、生きていたというのは本当だったのか。」「真一様、ご無事でなによりでした!!」
そんな風に王族3人にいきなり言われて思い出した。
報告しに行くって言ってて、戻ってきて1週間まだ来てなかった!
自分の顔が蒼ざめる様な感覚を覚えつつ
「ご心配をお掛けしました。」
と、だけなんとか言った。そんな様子を見つつジュリウスさんがレオナルド様へと話しかけた。
「王よ。召喚された方々が集まったのでそろそろ今夜集まってもらった理由をお話せねば…」
「うむ… 実は最近入ってきた情報なのだが、このロキシードの付近で新たに魔王が誕生したということなのだ…」
その話を聞いて召喚された者ではないが休憩所で休憩していた一般兵士がざわめいた。
そんなみんなを片手を挙げてレオナルド様は静まらせ続きを話す。
「そう。新たな魔王だ。しかもその魔王はなんとたった1人で1万人もの部隊を余裕で壊滅させ、辺り一帯を更地にしてしまうほどの魔法を操ったという…」
「なんですと!それはなんと恐ろしい…」「そんな魔王がロキシード付近に…?」
休憩所はあっという間にざわめきが広がる。そんな中で王は言う。
「休憩所で話をしたのは召喚された者のみでなく、この王城を守る兵士諸君。君達の意見も聞いてこの新しい脅威にどう立ち向かうかを決めたいと思ったからみなに集まってもらったのだ。」
話を聞いているとさすがレオナルド様だと思う。王やその側近数人などで判断するのが普通ではあるが、それを敢えて話をしてみんなから意見を求めるとは… ある意味決定に時間はかかるが開かれた会議という印象も受けて一般民としては好感は持てる。
同じように思ったのか兵士達はお互いに顔を見合わせ王へと片膝を付き頭を垂れた。
「我ら王城の兵士達一同は例えどんな脅威が迫ろうとも変わらぬ忠義を王へと奉げます。」
「うむ、済まぬがお主らのその忠義。ワシへとではなく、王都に済むそなたらの家族や守りたい者達へと向けるがよい。守るべきはその者達が住む王都が1番よ。」
この言葉に感動したのか兵士達の頭が一層下がった気がする。いや、気がするのではなく実際そうなのだろう。こんな言葉を言われたら俺でも感動するしな。
「さて、召喚された方々へと聞きたいのじゃが… この魔王を倒すため協力してはくれぬか?」
「もちろんお手伝いさせていただきます。」「だな。」「そうだね。」
俺、武、公彦がすぐ賛同し、
「勇者の武勇伝の一つとしてみせましょう!」「おうさ!」
勇者・高橋(?)と行動を共にしている男子生徒が返事を返した。
他の召喚された人達はほとんど非戦闘員なので戦う意思は聞こえなかったが、
「できるだけのことはさせてもらいます。」
と、はっきりと発言したのは一緒に王城まで来た藤井さんを始めとする女性3人だった。
そんな時に門番の一人が休憩所へと走ってきた。
「失礼します!新たな魔王の代理人と名乗る者が使者として参りました!」
「うむ、さすがに使者をここで迎えるわけにもいかん。この場にいる来たい者だけ謁見の間へと移れ。兵士諸君でも来たい者は来て構わん。」
「ははっ!!」
こうして俺達は新たな魔王の代理人の話を聞くべく謁見の間へと移動した。




