ちょっとした変化
ロキシードに戻ってから武や公彦とのやり取りやら訓練が多くなったのだが、俺の悩みの種というのが最近できた。
クオ、ナターシャ、セシリーの三人である。
3人とも奴隷解放してあるにも関わらず出て行こうともしない。なので3人を居間に呼んだ。
「それで3人とも…。お前達を集めたのは解放したにも関わらずここになんでいるかなんだが…。」
そう言い3人を見やる。
3人はお互いに顔を見合わせ頷きこちらを見返してきた。
「僕は心よりお使えできる方、それが真一様だと思うのでこのままお使えしたいんです。」
「私は妻がいいの!」
「ナターシャずるい!私も当然妻に!ダメなら側室や妾でも!」
俺は3人の返事を聞いて頭を抱える。こいつらどこで何を見誤ってるんだ…
とりあえず、自作珈琲を飲もう。
ああ、古代の勇者が持ち込んだとされる珈琲がこちらの世界で製法が広まっててよかった…
あ~、現実逃避。うん、逃げるが勝ちとはよく言ったもんだなぁ…
「ご主人様?こっち向いてください~。」
「とりあえず、解放されてるんだからご主人様はやめろ。」
「私達は真一様の妻になるつもりでいますから残りますよ?」
「そうです!帰りません!というか、私は帰るところも家族もいないので絶対離れません!」
何気にセシリーが爆弾発言してるなおい…
「セシリーは故郷だと仲間や友達もいっぱいいるんじゃないか?家族はいないかもしれないが、帰るところや友人はいるんじゃないか?」
「真一様、私が奴隷として売られた理由は…。友人が好きな人が私を好きで、友人が私を妬んだ結果嵌められたのです。私がどうしてその友人の元に帰りましょう。戻ったら最後私は罪を犯して再度奴隷となることになってしまいそうです。それでも私に戻れとおっしゃいますか?」
「…わかった。ただし!妻ではないぞ!?とりあえず、居候だ!」
「今は居候でいいです!」
「セシリーは居候ということで残留となってしまったが、ナターシャ。お前はダメだろ。」
「どうして!?セシリーはいいのに私はダメなの?」
「や、お前は残りたいなら保護者の許可もらってこい。」
「お父様やお母様は殺されてしまっていないんだけど…」
「アルバートがいるだろ。奴はお前を探して迎えに行くんだと張り切っていたが?」
「アルはいいの~。私はもう大人だから自分で判断するもの。真一様にはメリットしかないよ?」
「例えば?」
「まず…、私若いし!尽くすし!真一様にくびったけ!どう?3拍子!」
「ん、アルバート呼んできて目の前で奴から許可もらえ。無理ならお前は帰郷だ。」
「酷い~!横暴~!」
「はいはい、行ってらっしゃい。クオは?お前はこんなところで人生を費やしたらもったいないぞ?王城に勤めたいなら推薦できる。」
「いえ!僕は尊敬できる方にお仕えしたいのです!」
「それ、最初にも言っていたな…。クオ、お前頭をどこかで打ったとかそういったこととかないか?お前が尊敬するのはレオナルド様みたいな王族であって、中年のおっさんでいいわけがない。少し時間をやるから冷静に考えろ。」
そう、同姓の俺から見てもクオは可愛らしいと表現があうくらいの男の子で性格良し、器量良しでいい人生を送って欲しいと願わずにいられないほどいい子なのだ。決してこんなところで腐らせていい子ではない。
「私達がいたらダメなの…?」
不安になったのかナターシャが聞いてきたがそれはちゃんと否定しておく。
「違う違う。俺にはやらなければならないこともあるし、お前達のことを見てやることもできない。お前達はみんな良い子だ。なので、余計にいい人生を送ってほしいと俺は思っている。こんなところで貴重なお前達の時間を使ってもらいたくはないんだ。第一、ナターシャやセシリーは俺と夫婦になりたい、などと言っているがもっと自分の年齢にあった男でもっと格好よかったり甲斐性があったりするほうがよかろう。」
「「じゃあ、どうしたら認めてくれるんですか?」」
どうしたものかと腕を組み考えていると俺の後ろにいつの間にか公彦が入ってきていた。
そこで公彦が爆弾発言しやがった。
「真一君の奥さんになりたかったら、真一君が断れないくらい押せ押せになったらいいらしいよ~。」
「ッ!公彦いつの間に!ってかそうじゃなくて、何を言ってる!?」
「だからこの子達のことを考えて打開策教えてあげてるんだけど?」
「ダメだダメだ!この子達には幸せな結婚生活、順風満帆な人生を送ってもらいたいんだ。何が悲しくて人生落ち目で陽の目がない人生に突き合わさなきゃならんのだ。」
「真一君、後ろ後ろ。」
ニコニコと公彦が指で指してくるので3人の方へと向き直ると…
3人が凄い勢いで俺に突っ込んできた。
「な、お前らどうした!?」
「私はここがいいの!!あなたの傍がいいの!わかった!?」
「私の幸せはここでしかありえないのです!ここから出ませんからね!!」
「僕の人生は真一様とともにあり、僕はここで人生を終えるんです!」
クオは同姓だが…
3人とも可愛い。しかも超絶に。
そんな3人に抱きつかれ涙目で見上げられて押されると…
「わ、わかった!認める!ここにいるのは認めるから!離れなさい!!」
「私達は妻として認めてもらわないと…」
「離れません!」
「そういうのを決めるのはお互いをよく知った後のほうがいいと思うんだが!?」
「じゃあ、妻として認めてくれる?」
俺は更に押され壁際に押し付けられる。
「お、落ち着け。落ち着くんだ!そうだ!ここにいるのは認める!でも、相手は俺じゃなくてクオならどうだ?お前達も知っての通りいい子だと思うぞ?」
「「…真一様?」」
汗が噴出しそうな状況で固まっていると家の入口から更に武が入ってきた。
「よう。ぉ~、カオスだな。3人とも口説き落とせたか~?」
「「「もう少しです!」」」
その瞬間に俺が正気に戻る。
「お・ま・え・か…」
「あ、やば…。ちょっと待て真一!!落ち着け!!悪かった!でも、お前も悪いだろ!?この子達ずっとお前を慕ってるんだぞ!?」
「た・け・し、そこを動くなよ?お前達、下がりなさい。お前達が巻き込まれて怪我したらいけないからね。」
「「先に認めてもらいたいです…」」
少し考えて返答する。
「2年… お前達の気持ちが変わらず、もしくは想いが逆に強くなったりでもいいが2年間まだ俺のことを求めたならその時は妻として認める。」
「やった~~~~!」
ナターシャは喜んでいるがセシリーは止まってる。
「どうした?」
「嬉しくて涙が…」
「ほらほら、可愛い顔が台無しだ。泣くんじゃない。」
「真一様… ありがとうございます。」
「よしよし。」
そんな俺とセシリーのやりとりやナターシャの喜びを見てクオ、公彦、武が拍手してくる。
「おめでとうございます!」「おめでとう!」「やっとまとまったか。おめでとう!」
「みんなありがとう。でも、武、てめえはそこから動くなよ!!」
「げ、なんで俺だけ…。あ、しかもマジだ。刀出しやがった!」
「新しい刀できたんだよ。安心しろ。試し切りだ。ほんの少しで済む。」
「いやいやいや、少しでも切られたら俺痛いし!」
「俺は痛くない。問題ない。」
「いや、俺のことを考えて欲しいな~って…」
「クオ達のこと考えるのでいっぱいいっぱいでな。運が悪かったと思って諦めな。」
「じゃ、俺帰るわ!またな!」
「待てや、コラ!」
俺と武が家から出たあと残された公彦が呟いたそうだ。
「うん、3人とも話がまとまってよかったね。あの2人もいつも通りだし、今日も平和でいい日だなぁ~。」
その後、俺と武は鍔迫り合いを行ったり斬り合ったり、時々魔術で辺りに被害をもたらしながら衛兵に包囲されジュリウスさんとアンナさんが止めにくるまで戦闘を続けた。




