来襲
アンナさん、武、公彦が俺の家に急いで連れて来られ俺を宥めた結果ようやく俺が落ち着いた。
「…ったく、武!お前はまたクオ達に変なこと教えやがって…!」
「悪かったって!まったく、お前もいい加減据え膳食っちまえばいいのに変に落ち着いてるから面倒くせえなぁ~。」
俺と武のやり取りを見ていたアンナさんがふと気付いて質問してきた。
「あの…。私はなんで呼ばれたんでしょう…?」
「クオ達にとってアンナさんは真一君のそういう人ってことじゃないですか?」
「公彦!アンナさんが勘違いするようなことを吹き込むな!」
公彦の言葉を聞いてアンナさんが顔を赤くして俯いてしまった。
綺麗というか可愛いというか何と言うか俺のほうまで赤くなりそうになる… だが… 顔を左右に振る。
「アンナさんは若くて将来有望なんだ。2人とも失礼になるからからかうなよ。アンナさんに迷惑だ。」
「お前な~…」「真一君~…」「……(ジーーーーーー)」
武、公彦、アンナさん、三人からないわ~と言われそうな顔をされてしまった。
そんな時、突如として鐘の音が鳴った。
音を聞いたアンナさんが椅子から立ち上がり動こうとするので思わずアンナさんの腕を掴んで聞いた。
「アンナさん、この音はなんですか?」
「敵襲があった時に鳴る鐘です。でも、周辺の街や村でそういった報告はなかったのにいきなり王都なんて…」
「クオ、ナターシャ、セシリー。俺もそうだが、お前達にも動いてもらう。戦闘準備を済ませておけ!俺は一度王城へ出向き情報収集してくる。」
「「「わかりました。」」」
「へ~。お前が動くんだ?若いね~。」
「そんなこと言って、武はどうするの?」
「ん~、暇だし行くかな~。」
「じゃあ、僕も行くかな。」
「では、アンナさん行きましょうか。」
「はい!」
こうして俺達は4人で王城へと家を出発した。
家から道へ出るとそこには支度を整えた兵士達が同様に城へと向かい進んでいる。
「しかし、真一。お前、中年にもなって面倒臭がりなお前がこっち来てから楽しそうじゃね?」
「ぶっちゃけ、滅茶苦茶楽しいよ。以前の世界ならただの中年のおっさんで面倒ごとに巻き込まれないように無難に生きて無難に死ぬってのが流れだっただろうしな。でも、今を考えてみろよ。わけわからないうちにこの世界に召喚されて自分の得た知識や力を駆使してなんとか生きていってる。それに勇者だどうのこうのと若い子に挑戦吹っかけられるようなそんなんだぞ?前の世界じゃ考えられんからな。」
「あ~、最近真一君が忙しそうなのってもしかして…。楽しんでるだけ?」
「そうだよ~。今まで元の世界では死んでたけどこっちの世界に来て始めて生きてるって感じかな。わくわくしてしょうがない。老人が何かに挑戦する時、年甲斐もなくはしゃぐってのはこういうことか、と実感中。」
「気持ちが若くなってるところで身も固めてしまえ。まったく、モテ期が到来したってのにもったいねぇ…」
武に言われて思わず視線をアンナさんに動かすと目が合ってしまい、慌てて視線を逸らす。
「…あ~。真一君。ご馳走様。」
「公彦!」
「おや、そこにいるのは勇者を目指してるはずの田中さんじゃないですか。田中さんが言う勇者って商人のことだったんですか?包丁を売ってお金を貯めてるとか。あとは奴隷を買ってるとか聞きましたけど奴隷を何のために買ったんだか…。これだから中年親父は…」
「おやおや、口ばかり達者な高橋君じゃないか。夜盗に襲われた一団を救おうと颯爽と現れて、夜盗に負けて命からがら襲われた一団と共に街に逃げ込み衛兵さん達に助けられたと聞いたが、その時失った名声は取り戻したのかな?」
「うるさい!何もしないで王都に引きこもってる中年よりは勇者に近付いてるんだ!ただのおっさんの癖に偉そうなんだよ!」
「そのおっさんに偉そうに言われたくなかったら目に見える形で成果を見せるこった。若造。」
「…そんなのわかってる!」
武と公彦が俺と高橋とのやり取りを見て大爆笑。
アンナさんは驚いた顔をして俺を見ている。
「お前が挑発とはホント珍しい。何十年振りって姿を見たわ。」
「いやいや、やっぱり真一君もまだ若いってことだよ。ね、真一君。」
「真一さんがあんなこという人だったなんて…。凄く驚きました。」
「や、年甲斐もないとは思ってるから3人ともからかわないで…」
そんなことを言っていたら王城の入り口へと到着した。