王都ロキシード
-------あれから1ヶ月が経過した---------
俺達は自分たちが思うように勇者となるべく活動を開始している。
王都ロキシード
俺達がこの世界に召喚されて王城があるイングリード王国の王都だ。
人口100万人ほどで人族だけでなく他の魔族と神族に追いやられた種族が寄り集まってこの人数らしい。
街並みは中世ヨーロッパのような雰囲気で造られており、食べ物やなんかも以前の世界と同じような物が多く見られる。
この点はありがたかった。
食べ物が似たような物だったので受け入れ易く、食に関してはみんなカルチャーショックを受けずに済んだ。
問題は水に関して。以前の世界と違って浄水場なるものなど存在しないので自分達で一度煮沸したりなどして水を殺菌してからしようしないと酷い目にあってしまう。風呂などの文化も勇者が伝えていたようだが、変な寄生虫などいてもいけないので飲料水ではなく、生活用水に関しても煮沸した水を使用するようにみんな心がけている。
王城がありその入り口へまっすぐと人が歩く道が続き、両端に商店街が広がり賑わう。
そして住宅街が少し離れた場所にあり王城を中心として街全体を囲む塀の中で俺達は家を購入し住んでいる。どの種族が優遇されるなどといった人種差別もなく、宗教間の問題もない。ある意味理想郷ではあるのだが…
その理想郷も魔族と神族の侵攻により平和が脅かされつつある。
そんな中、高橋達は冒険者として活動し情報収集を行いながら魔族や神族と戦闘を繰り広げ、名声が少しでも高まるとわざわざ会いに来て皮肉を言って行く。名声が高まれば高まった分だけ勇者に近付いていると自信満々に力説していったほどだったしな。
武はあれから商売を始めた。
元々、日本にいた頃は自分で貯めた資金を元手に転売&売買を繰り返し利益を得て立派に社長業をしていたほどだったのでこちらの世界の品物や値段をひとしきり調べるとあとは成功まで造作もないことだった。
公彦は王者の剣筋こと剣道を竹刀ではなく西洋の剣を使いジャック王子に叩き込んでいる。
そして剣の腕を買われ剣士として王国に雇われる形で資金をもらい貯めて、貯まった資金は武に先行投資としてお金を貸与し、利益をもらって更に貯金したりしている。
2人ともやってることが異世界に飛ばされる前となんら変わりないみたいで何よりだ。
俺はというと、現在勉強に趣味に商売に育成に訓練と大忙しで時間がない。
まさかこの年齢にもなって勉強やら訓練すると思ってもいなかったので日々疲れが取れていない気がする。
だが仕方がない。
日本と違って魔法やら召喚やらが存在する世界。何も身に付けないで2種族を従えるとは楽観視しちゃいけない。現に最初は張り切っていた同年代のおっさん達は1ヶ月経過した現在、高橋達に頭を下げて雇ってもらっている。異世界という別世界のルールに付いていけなかったようだ。ああはなりたくないので今俺は必死だ。
朝起きて軽く食事を取った後、自分のお店に顔を出し店の品物を確認して店員に指示を出し、店の奥で店員に記録させてある在庫管理票を確認する。仕入れる物を決定し、武の店へと行き買い叩く。
それが終わるとそのまま王城へ行き勉強が始まる。
人族・魔族・神族など多種多様な種族の歴史、こちらの世界の法と制度、こちらの世界の多種多様な辞典。
使用される言語。そう、知らないことが多すぎて頭の中に納まりきらないほど勉強することが山積み。
なので、中年のおっさん、必死なんです。かなりマジです。
以前の世界でいう正午くらいの時間帯になりましたが休憩なんてありません。
ひたすら今度は…訓練です。
どうやら魔族・神族に迫害され逃げ続けていた人族は多種多様な種族と交流し、魔術が扱えるようになったらしい。
魔術については神官のジュリウスが一番上手い人族らしく、俺は学生時代と同様に武と公彦の3人と高橋と一緒にこの世界に召喚された女学生2人の計5人で手解きをしてもらっている。
これが夕方頃に終わり、ここから俺は自分の工房へと向かう。
ん、何の工房?そりゃあ、こっちの世界で俺は刀鍛冶始めたからね。
元の世界で休日のみ山奥の刀匠へ弟子入りして教えてもらっていたので必要なものも作業の工程もその作業の工程が何をするための工程なのかという意味さえもわかっていたのでなんとかできた。
最初は上手くいくか自分自身でも半信半疑だったが、最初に造った包丁が王城の料理人に大層喜ばれたらしく高値で売れた。
これをよしとした俺は自分で打った包丁などを店に出し売っているというわけだ。
売り物ができたあとは自分の武器なども作る。その他にも少しずつ武器を作る。
刀鍛冶が完全に終わった頃には既に20時頃になっている。
自宅へ戻るとすぐに声を掛けられる。
「「「ご主人様、本日もお勤めご苦労様でした。」」」




