腐れ縁の杯(3)
昨日、愛媛県のBRABRA FFコンサートへ行って来ました!
頑張ってブラボーと叫んでいたんですがノリが悪くて泣きたくなりました…
愛媛の蜜柑は日本一!という歌のフレーズもあるんですからノリも日本一であってほしかったです…
真一が懐から取り出した紙。
それは昼間から夕方にかけて休憩所でメモ書きしていたものだ。
そのメモ書きをテーブルの上でスライドさせ武の目の前へと持って行きメモ書きを渡す。
「こりゃあ、お前がロキ達に聞きながら書いてたメモだろ?」
「そうだ。」
「どうしろってんだ?」
「おおかた見当がついてんじゃねーの?」
真一のその言葉に顔を歪めた武はメモと真一を見比べていたが、しばらくすると溜息を吐いた。
「…お前、俺に立志伝やらせようってか?」
ニヤリと笑った真一は人差し指で武を指した。
「ご名答!」
この二人のやり取りを理解できていない公彦は首を傾げた。
「立志伝?」
「ほら、以前の世界のゲームであったろ?太閤秀吉の成り上がりをゲームにしたやつ。」
武が少し解説してやると視線を左上へと移動させ腕組みをして思い出すポーズを取ったあと何十秒後かにようやく手を打った。
「あ~あ~!あったあった!…でも、なんでここであのゲーム?」
「ようするに…だ…」
「魔族の特産品と人族の特産品。それぞれを互いの領地に運んで売っ払って商売して儲けろ…ってことだ。」
二人の返事に驚きを隠せなかった公彦は思わず聞いた。
「…そんなことできるの?だって、ゲームじゃないんだよ?」
「可能だよ。こいつならできる。」
「…お前が俺を買ってくれるのはありがたいんだが、なんでお前が返事するか…」
武が苦い顔をしているのを横目で見て真一はケラケラと笑った。
「向こうの世界でしてた元々の仕事をこっちで始めて、で取引先が増えた。ただ、それだけだろ?別におかしいところはない。」
「他人事だからって気楽に言いやがって…」
「他人事だからな。お前に頼むことだし、俺のことじゃないから。まあ、断ってくれてもいいんだぞ?ただし…」
「ただし?」
武が嫌なものでも見るかのような目付きで酒を飲みながら言葉を切る真一を見ていると、真一はそのまま真っ直ぐ前を見たまま言い切った。
「俺も含めて他の奴らがみんな困るな。」
「ただそれだけ?」
返事をしたのは公彦だったが、真一は気にせずそのまま頷いた。
「ああ。俺と公彦と武自身とレオナルドとジュリウス。それにロキやリーゼなんかが主に困るくらいだ。なあに、大丈夫。断られたら帳尻を合わせるのに他の奴らが何年か苦労すればいいはずだ。」
「えええええ!?真一君、それって武だけじゃなくて、僕も関わるの!?」
「あのなぁ…」
そこで言葉を切った真一は二人の方へと顔を向けた。
「この世界に召喚された後、俺がお前らにあれやって、これやって~って話したのって全部一応意味があるんだぞ?」
「はあ?」
「そうだったの?」
「お前ら俺が頼んでたことを一体なんだと思ってたんだよ…」
「えっと、この世界で暮らしていけるように仕事の斡旋…」
「ただ合った仕事を用意してただけだと…」
「つくづく俺って信用ねえのな!?」
「あはは、まあまあ!!」
「だってお前、中二病の古代勇者バカにできないくらいの中二病じゃねーか!」
「「…」」
「あ…」
酔ってたこともあってか武は売り言葉に買い言葉で真一を思い切り中二病者と断言してしまい、それを聞いた公彦と真一は沈黙し、真一は笑顔で武の肩を軽く叩いた。
「…拒否権というものを自分から放棄するとはさすが武だ。お前がマジでやりたくなかったらボッシュ説得してなんとかして俺が穴埋めするつもりだったんだけど、まさかお前が自分から拒否権を無くす言動を取るとは思わなかったよ。あ、とりあえず俺と公彦がお前に投資として預けてる金だけど、少なくとも五倍くらいにしてこい。期間は二年くらいかな?ああ、魔族領もそれなりの広さらしいからさ、乗り物はロキに頼んで借りるかもらうようにするからその点は安心しろ。」
「あ、いや… えっと…」
「大丈夫だ。二年なんてあっという間だし、連絡手段なんかも何かないか考えておくから。それとさっきも言ったようにこれには公彦のことも絡んでるんだし早目にな?」
「し、真一君、話し合おうじゃないか…」
「ん?他に何か?ああ、そうか。出発前に念のための遺言か何かかな?それともこの場で真っ二つにされたいっていう懇願か何かかな?」
刀を召喚しようとしている真一を見た武は慌てて止めた。
「わ、わかった!漢、武に任せておけ。お前らから預かる金額を五倍だとか簡単にしてやんよ!!…元の金額っていくら?」
最後の一言だけ恐る恐るになりながら武が二人に聞くと公彦が教えた。
「確かこの前、会議前に数えたら金貨一万を越えた~ロキシードで一番の金持ちになった~とか言ってなかった?」
それを聞いた真一はニヤッと笑った。
「ほほう。俺と公彦と武でそれぞれ一万越え。それを簡単に五倍か。五万×三として十五万か。楽しみにしてるわ。」
「あ、悪かった!訂正!三倍に…」
「まさか、漢、武が二言ってことはねえよな!?」
訂正しようとしていた武に向かって真一が顔を近付けながら言うと武は続きの言葉を言えなくなり黙ってしまった。それを見た公彦は大笑いしだした。
「あはははは!!二人共そのあたりも変わりないね。」
真一も片頬を崩して笑いながら手の平を左右に振った。
「バカ言え。さすがに年齢には負けるさ。まあ、五倍ってのは聞かなかったことにしてやるよ。拒否権なしも冗談だ。で、真面目な話、武。お前は魔族領使ってでの立志伝。この話を受けるか?断るか?」
懐から赤マルを取り出しながら火を点け、一息吸った武は天井へ向け煙を出しながら聞いた。
「マジで断るとどうなる?」
「公彦の帰還するための時間ってのが長くなると思う。」
「理由は?」
「金が大量に必要なのに金稼ぐのが一番上手いお前が断ったら、金稼ぎ下手な俺や公彦で金を用意しないといけない。それが理由だ。」
真一が武の持っている赤マルを奪い取り一本吸い出しながら説明すると武はそれに火を点けた。
「公彦はバカ正直すぎるから金儲けには向かないのはわかるけどよ。お前はそうでもないだろ?」
「俺はちと金が掛かることが他にあるからな。」
「クウェイの奴らか。」
それに頷きながら真一は煙を吐き出す。
「食料費なんかはばれたけど他に必要な金なんかも山のようにあるからな。」
「そういうところって真一君、優しいよね。」
「はっ。よせよ。優しい奴がなんの躊躇もなく人をどんどん殺すかよ。」
笑いかけた公彦の一言を聞いた真一は自分の片手を握ったり開いたりするのを見てそう吐き捨てた。
直後、武と公彦は言葉を失った。
この世界に召喚されて以降、『人族の魔王』と呼ばれるようになった真一はこれまで戦闘を幾度となく経験したし、自分達も経験した。自分達は人を殺すことに未だに畏怖するものを感じたり覚えたりしているが、真一はそういった様子が見えないのでそう感じていないのだろう…そう思っていた。だが、目の前の真一は明らかに人殺しである自分を嫌う言い方だった。
BRABRA FFコンサートでブラボーは頑張るけど、ブラボー係りにはなれたことなんですよね。
次回はなれるといいなぁ~…
今年はあと名古屋があるだけで、次の機会は来年になりますがみなさまも行ってみてくださいませ!
学割きくみたいで当日券も売り出してました。(席が空いてたらですがw)
関係ない話ばかりでしたが、瀬戸内では蝉が近日鳴きだしております。
熱中症にはご注意下さいませ…