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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
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来訪者

最近、雨による災害が多いですね。

こんな小説に目を通してくださってる方々で被害を受けている方がいないか気になっています。

どうか皆様の体や生活に支障がないようにと切に願う次第です。

城の休憩所での話が終わり、ロキやリーゼロッテはそのまま城の用意された部屋へと移り、レオナルドとジュリウスは未だ終わることのない事務作業へと戻るころ、真一・武・公彦達は城下町にある自分達の家へと歩いて戻っていた。


「なあ、お前らこれから暇か?」


真一が隣を歩く二人に声を掛けると少し考えたあとそれぞれ返事が聞こえてきた。


「暇と言えば暇だ。いや、待てよ… 彼女がもしかしたら家にいるかも…」


と、武が洩らすとその後頭部を公彦が叩いた。


「こっちは嫁さんも子供も向こうの世界だってのに隣で惚気るなよ!あ、ちなみに僕は大丈夫だよ。」


「そうか。実はうちに置いていってた酒があるんだ。それを飲まねーか?久しぶりだし祝いってことも兼ねて奢ってやるぞ?」


「なんだよ。普段は無料じゃないのかよ!」


「なんで俺がお前らに無料(ただ)で酒を奢らにゃならんのだ!第一俺は金がいるんだぞ!」


「じゃあ、真一君払うから金額教えてよ。」


「…まあ、出世払いってことで今はよしとしてやるよ。」


三人の家の別れ道にてそんな会話をしていると後ろからクスクスと笑い声が聞こえてきた。

真一達がその方向を見てみるとセシリーとナターシャ、そしてクオが会話を聞いていたらしく笑い声を抑えきれなくなり漏れてきたのだろう。三人ともそれぞれ必死に口元を押さえたりお腹を押さえたりしていた。そんな三人を見た真一達はわざとらしく咳払いをするとそれぞれ片手を挙げた。


「とりあえず… 30分後な。時間はお互いのスマホでわかるだろ…ってか時間同じだよな?」


お互いのスマホに表示されている時刻を確かめ真一達は各家へと歩いて行く。

そして、真一は自分の家へと歩いていき家の前に誰か人がいることに気が付いた。


(見たことは… ある… と思う。記憶に… ないような… あるような…?)


真一が内心どころか目に見えて首を傾げているのを見たクオが真一へ耳打ちした。


「真一様、フレデリック・ガルニエ様です。貴族の方ですよ…」


「フレデリック?貴族?ふ~ん?」


聞いた真一だが、どこで会ったかもよく思い出せなかった。

そのまま真一が会釈をしつつガルニエの前を素通りし、家の中に入ろうとしたところでそのガルニエが大声を挙げた。


「貴様!この大貴族のフレデリック・ガルニエ様がわざわざこんな一般市民の家中まで足を運んでやったと言うのになんじゃその態度は!!這い蹲って感激を表し歓待しろ!!」


そんな叫ぶガルニエを真一がチラリと見てみると目が合った。

すると真一の目を見たガルニエは気圧されたようで一度目を逸らし、次の瞬間には慌てて再度目を合わせてきた。そんなガルニエを見て鼻で笑った真一はわざと慇懃な態度を取りつつお辞儀を示した。


「ほほう。それはそれは失礼しました。それで大貴族のフレデリック様は一体なんの御用でこちらまでこられたのですか?」


真一のそんな態度を自分に対して謙った態度をとり始めたと勘違いしたガルニエは態度を大きくさせた。


「ふふ… 実はこの大貴族であるワシが最近名が売れ始めた人族の魔王だとか言われる真一という者にチャンスをやろうと思ってな!わざわざ来てやったのだ。ありがたく思うがよい!」


でっぷりと太った腹をさらに突き出すようにするとその腹がプルンと震え、見ていたクオやナターシャ、そしてセシリーが笑い転げそうになった。そして、ガルニエの発言を聞いた真一は軽く頭を下げると自分の鋭くなった目付きを隠すようにしながら質問した。


「大貴族様が私にチャンスを下さると…?」


「そうじゃ!」


「それはいかなるチャンスなのでしょうか?」


真一が頭を下げたまま話しかけるのを見たガルニエは、だんだん真一が自分に対して屈してきたと勘違い(・・・)し、ここに来て訪問理由をやっと話した。


「人族の魔王には養子が三人いて、義理の娘が二人と義理の息子が一人いると聞いた。そ・こ・で!その二人をワシの妾かもしくは下女として娶り、そして義理の息子には我が娘をあてがってやろうかと思ったのだ!どうだ!!大貴族たるワシとの縁をそれだけ強く持てるのだ。喜ぶがよい!恐らくそこにいる三人がそれぞれ義理の娘二人と義理の息子なのだろう?ほれ、早くワシの相手をせよ!」


言うが早いかナターシャとセシリーへと鼻の下と手を伸ばしてきたガルニエに対し真一は顔を空へと向けると一声吼えた。


「渇っ!!!」


「ひっ!!」


それは弱者が強者に媚びる態度ではなく、謙る態度でもなく、(たける)わけでもなく、ただ吼えただけだった。しかし、その一吼えには威がありガルニエはその威に堪えることができなかった。

そして、ガルニエは後ろへ数歩後ずさりすると尻餅をつき、真一はそのままの場所から一歩も動かずにそのまま顔をガルニエへと向けると話しかけた。


「そうですか。ですが、三人とも私と共にあり常に戦の中心へと向かわねばならぬ身です。あなたの手には納まりますまい。それと一言言っておきますが… 義理の娘二人は私の婚約者であり、義理の息子であるクオにはクオ自身で選んだ相手と思っておりますので念頭に置いておいてください。この三人や私の関係者に何かしら手を出した場合、この人族の魔王は命を懸けて守らせていただきます。どうぞ、御理解いただければと思います。」


そう告げると再度軽く頭を下げると、クオ・ナターシャ・セシリーを目で促しながら家の中へと入ろうとした。そんな真一へガルニエが食い下がるように呻き声をあげてきた。


「わ、ワシに対してこんな態度を取って許されると…」


ガルニエが台詞を言い終わる前に真一は無言で刀を召喚すると抜き放ちガルニエへと突きつけた。


「…私は自分が仲間と認めたらその仲間のために命を懸ける。それこそ、種族関係なしにな。そして、その敵となるならばこれも種族関係無しに斬り捨てる。人族だろうが血が繋がっていようと関係ない。全てを斬り捨てる。自分が例外だと思うなよ?大貴族様?」


「ひ、ひ~~~っ!!」


真一が低い声で言い放つとガルニエは小便を洩らしながら後ずさりしそのまま震えだした。

そして、真一はそんなガルニエを冷たい目で見捨てると三人を手で誘い家の中へと入り鍵を閉めた。


「やれやれ、家の中に入るのになんでこんな目に遭わないといけないんだ… ん?どうした?」


家の中に入った三人はそれぞれ真っ赤な顔をして立ち止まり、そして三人は揃って口を開いた。


「お帰りなさいませ、御主人様!ご飯になさいます?お風呂になさいます?それとも、わ・た・し?」


片手で自分の顔を隠すようにした真一は声を洩らした。


「…どうやら、ガルニエの前に消さないといけない奴がいるらしいな…」


三人が真一を必死に宥めている最中に時間となり武と公彦が来訪し、真一が再度暴れだしたのはしょうがないことだろう。

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