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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
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競争

あまりにもあっさりと勇者と認められて逆に驚いている男子学生と王族の方々。


「何を驚いてる?君以外に勇者をやりたいってやつがいないんだから君が勇者で決定だろ?」


「あなた方は勇者になりたくないんですか?富や名声の象徴とも思えるんですけど…」


「あ、確認してなかった。武、公彦。お前ら勇者やりたい?」


あからさまに顔を歪めながら武が顔の前で手を左右に振る。


「誰がそんな面倒なことを、この歳になってやるんだよ。冗談じゃねー。」


「僕も遠慮しておきたいかな。短時間なら問題ないけど、長時間になるとどうしても体が付いていかないしね。」


「はい、二人の意思も確認したので勇者希望者は君以外にいません。帰還したい人も多数いると思うのでそこの…ごめん。勇者希望者の学生さん?お名前なんだっけ?」


「えっと…、高橋です。高橋雄介。」


「じゃあ、その高橋君。私達の希望は君にかかってるのでよろしく!はい、この話題終了~。」


この台詞に慌てたのは王様を始めとするこちらの世界の人達だった。


「そこの高橋が言うように富と名誉の象徴であるのに他に誰も志願者がいないのか?」


王様は驚きながら確認してくる。


「私達にとって勇者というのはやりたいこと、ではなく、戻るためには一人は必要な仕事みたいなものです。やりたい人がいるなら任せてもいいし、戻るまでの生活や暮らしを考える方が重要でもあります。慣れない世界、慣れない国、慣れない人種、慣れない環境、慣れない飲食、慣れない言語、慣れない習慣。全て異なる文化なので対応するのも大変ですからね。彼みたいに若いうちは血湧き、肉躍る展開なのかもしれませんが私みたいなおっさんは安定の方を考えます。それに勇者をやるというのは自分の生命を危険にさらせて他の人のために尽くさないといけないですしね。そこまで考えるとやりたいとは思えないです。」


俺の発言を聞いていた高橋君はそこまで考えていなかったのか、黙りこくっている。

他の人達は俺と同じ意見なのか相槌を付いて頷いている。


「勇者を目指すならそれなりに便宜を図るぞ!?」


王様が必死になりだした。実のところ武器で脅されて勇者目指さないと殺すと言われたらお手上げだったんだが、この王様そこまで性格悪くないらしい。ただ、次の手は悪手だった。


「そうじゃ!勇者が男性ならば王女と、女性ならば王子と結婚しこの王国を継げるようにしてもよい!ハーレムなども可とする!これならどうじゃ!?」


この発言を聞いて残りの男子学生1人、スーツ姿の男性4人、文句を言って騒いでいた中年2人、弁護士と騒いでいた女性3人、女子学生1人が反応を示した。釣られてるな~、などと思っていたら王様はしきりに俺達三人の反応を見ている。ロリコンじゃないから。王子様や王女様、はたまたジュリウスさんやアンナさんまでこっちを伺っている。や、12歳に興味示すほど女性に餓えてませんから。

俺達は俺達で苦笑しながら三人でお互いに顔を見合わせていたのだが、俺はその時フッと思いついたことがあり表情が変わった。その様子を見て武と公彦が「おや?」という表情になり「どうした?」とあんに聞いてきている。伊達に連れ歴長くないな~と思わず笑うものの、片手を上げて二人を制する。王様の方へ向くと相変わらずこちらの様子を見ていた王様と目が合ったのでそのまま聞いてみる。


「勇者は目指しませんが、両族を従えるために活動はするので私達にも便宜を図ってはいただけないですか?」


「おぉ、そなたらが協力してくれるならありがたい!便宜を図る!好きにしてくれ!」


なんだかうちらに対してだけやけにゲームの王様みたいに入れ込み具合が凄くてドン引きなんだけど…

その話を聞いた他の勇者希望者達がこちらを見てくる。


「なんだ、やっぱり勇者希望ですか?王女様欲しさに勇者を目指すなんてロリコンだったんですね。」


などと高橋君が言ってきた。少し考えて、ふむ、と頷いた俺は唐突に高橋君に近付く。

高橋君が頭の上に「?」が付きそうな顔をしているが気にせず近寄り…腕の振りだけでアッパーを行い高橋君の顎を下から上へ突き上げた。顔が上へ向き無防備な彼の手首を掴み俺の体を回転させるようにしつつ一本背負いをする。


「高橋君、異世界に召喚されるという突発的なことに対して対応してるのは素晴らしいけれど、他人をバカにするというのは残念だな。あ~、すまんね。敢えて床に落とすとき君の体を引き起こさなかったから息ができてないかな?返事もできないよね。ちなみに俺達はこういったときは体が動く人間なので自分の発言には注意した方がいいよ?」


実際、日本だとこの流れでも警察に捕まるのってこっちだからな~。などと思いつつ二人を見ると武は腹を抱えて大爆笑。公彦は少し呆れた顔をしている。

視線が気になり辺りを見回すと…召喚に巻き込まれた人達のうち男性陣で顔を背ける人達が多かった。

大方高橋君と同じような気持ちだったのだろう。

女性のほうは、危険人物を見るみたいな目で見てきている。まあ、これは元の世界でもお馴染みの視線なので気にしない。

こちらの世界の人達は…喜んでいる。や、間違いなく喜んでいる。だって、拍手付きの笑顔だよ!?


「えっと、お騒がせしておいてこういうのもなんですが…。両族を従えた人が勇者、でやり方は各自自由。お互いに邪魔するのは…可の方がいいのかな?期限は50年の間に誰かが両族を従えるまでってことで…スタート。」


あ~、中年にもなって年甲斐もなく熱くなっちゃって我ながらみっともないわ~。


手で顔に風をパタパタと送りながら自分自身で反省した。

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