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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
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勇者と魔王再び(1)

高橋の命令が下され反乱軍の兵士達は戦闘準備を整えていく。

そんな中、人族の軍から六人の者達が近付いてきた。

レオナルド、ロキ、真一、ジュリウス、武、公彦である。

両軍のちょうど中間地点辺りに来ると歩みを止めると、そこから真一が口を開いた。


「ロキシードから来た者達、聞こえるか?俺は人族の魔王、真一だ。現在、魔術を使いお前達全員に聞こえるように話している。」


普通に話しているにも関わらず拡声器を使ったように辺り一帯に真一の声が響き渡る。そして、真一はそのまま続けて話し続けた。


「ここにいるのはお前達の王であるレオナルド、そして魔皇帝ロキ、人族の魔王の俺、俺の連れで勇者の公彦と武。さて、俺が言いたいことがわかるか?自らの王に対して歯向かう貴様らの相手を務めるのは俺達だ。それにお前達のかつての同胞の人族の軍三万人、人族の魔王軍もいるぞ。そして先程、矢文を射させてもらって降伏勧告をそちらの指揮官に申し込んだが、返事はなく貴様らは戦闘準備を整えている。…それでも向かってくるなら容赦は無しだ。手加減無しで全員逃がさず殺されるつもりで掛かってこい!」


真一が言い終わると今度は反乱軍から高橋が進み出てきた。


「…田中のおっさん、あんたさっき言ったけどこちらの人数はそちらの人数の倍はいるんだ。それに俺達は王様やジュリウスさんを殺すつもりはない。魔王のおっさんとそこの魔皇帝、それと魔族を駆逐できたらいいんだ。王様、ジュリウスさん、聞いての通りです。こちらへ来てください。丁重に保護させていただきます。」


高橋の発言を聞いてロキから殺気が漂いだした。その殺気を感じ取った高橋は顔色を変えて動揺を悟られないようにしようとしている。その高橋に対してレオナルドが口を開いた。


「…高橋よ。お主がジャックを唆して反乱させたのか?」


聞かれた高橋は首を横に振りながら否定した。


「いいえ!そんなことは言っておりません。第一、これは魔族から人族を守るための保護です!決して反乱ではありません!それは私が提案した時に、王子も納得してくださいました!」


高橋の言葉を聞いた真一とロキ以外の者達は一様に表情が固まり、そして怒りの目を向けた。


「王に対して刃を向けるってのが反乱ってのもしらねーのかこのガキ。」


「このような者のためにジャックは…」


「何も言葉が出ない…というのは今みたいな心境の時なんでしょうね。なんということを…」


「取り返しのつかない罪を犯した。そんなことにも気付いてないんだね。そして、それにどれだけの人達を巻き込んだかもわかってない… どうしようもない子だね。」


それを聞いた高橋は目を見開いた。


「…え?みんな何を言ってるんだ?僕はそこの魔王からみんなを守るために…」


そこまで殺気を出してはいたが何もいわず、話を聞いていたロキが口を開いた。


「…レオナルド、真一。俺達魔族が嫌いな人族っていうのはこういう奴らだ。わかるか?」


「すまぬ… ロキ殿の言われることはもっともじゃ。同じ人族ではあってもワシもジュリウスもこやつと気持ちや考えは違う。信じてはもらえないだろうか…?」


レオナルドの発言を聞いて少し目付きが和らいだロキだったが、そのまま高橋を見ると静かに怒った。


「おい、そこのガキ。お前は何で魔族を目の仇にしてるんだ?」


それに対して高橋は胸を張って言い返す。


「貴様らが魔族だからだ!」


そんな答えを聞くとロキは静かに首を横に振った。

そして、真一が代わりに口を開いた。


「おい、高橋君よ。お前さん、召喚された当時と変わったな。や、元々そういう人間だったのかな?なんにせよ… 魔族だから人族の敵っていつ決まったんだ?」


真一からの質問を聞いた高橋は信じられないとばかりに驚きの表情へと変わる。


「人族は神族と魔族から虐殺され、そしてこの地へと追い込まれたんだ。敵じゃなくてなんだ!!」


「それは何代も前の話であって今現在はされてない。」


「今されてないだけでいずれ…!!」


「いずれ何か敵対行動するかもしれないから駆逐?そんな阿呆な考え方やめておけ。それとな、神族だから、魔族だから、人族だからじゃねーだろ。種族関係なしに悪いことする奴は悪いし、悪いことしねーやつはどの種族にもいる。そして… 大勢を巻き込んで悪でもないロキを殺そうとするお前は俺にとってただの勘違い野郎なんだよ。いい加減悟れ。」


「お前も討伐対象なんだぞ!魔王め!!」


「俺が何をした?お前の中で俺はどういう悪だ?」


「お前は中年のくせに召喚された時から王様や王女様から認められてた!でも、違う!お前じゃなくて俺が認められないといけない。なぜなら俺が勇者だからだ!」


「勇者というものがどういうものなのか、その定義自体がお前と俺達と違っているんだろうな。じゃなきゃあ、ここまで勇者ってもので揉めることはありえない。」


「間違っているのはあんた達で、俺は間違ってない!」


「そうか、ではレオナルドやジュリウスさんも間違えてると言うわけだな?」


「お二人は騙されてるんだ!俺はそれから救う!!」


真一と高橋の問答がそこまで進んだところで、ロキは体中に魔法を発動させながら弾丸のような速度で高橋へと突っ込みそのまま蹴り飛ばした。


「真一。ありがとう。大体だけど、なんとなく判った気がするよ。…つまり、こういう奴が偉い奴だとダメなんだ。」


蹴り飛ばされた高橋はそのまま反乱軍の目の前まで飛ばされ、兵士達に助け起こされてそのまま下がっていった。そんな高橋を見てロキが他の五人に振り向くと謝った。


「あ、ゴメン。腹たってそのまま蹴り飛ばしたけど、このまま捕まえたほうがよかったよね…?」


五人はそれぞれ苦笑していたが、レオナルドはロキに対してウィンクした。


「いいや。ワシでも蹴り飛ばしておっただろうから構わんよ。さて… ワシらに向かって矢なり、刃を向ける者は全員、反乱軍である!!それとわかっていながら立ち向かってくるのなら容赦はせんぞ!!!」


大気を振るわせるほどの声量で魔術も使わずに周辺一帯へと響き渡るような大喝をしたレオナルドを見て、他の五人は眩しいものをみるような目をした。

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