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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
121/145

合流

武から反乱軍を前線だけでなく半分以上を森の入口付近まで押し返したという伝達を聞いたレオナルド達はここで一気に距離を離して置いておいた魔族の軍と真一の軍、両軍を人族の軍の後方へ詰めさせた。とはいえ、指揮官達はいまだにレオナルド達と行動を共にしながらお茶会を続けながら同盟の内容を煮詰めている最中だった。


「しかし、反乱軍に勝てるとは思ってたけど、思ってたよりもかなり早かったな…」


真一がそう洩らすとこの声を聞いていたボッシュが尋ねてきた。


「真一様の予想だとどのくらいかかると思ってたんですか?」


「そうだな… 一週間はかかると思ってた。ところが三日目には追い返したっていうんだから凄いわ。それに俺みたいに派手な魔術使ったわけでもなさそうだしな。」


「確かに… 真一様が魔術使うと辺り一面の自然が滅茶苦茶ですからね。」


「そこでそれを突っ込むな…」


主従でそんな会話をやり取りしながら人族の中央テントに入るとそこには武と公彦が揃って立って出迎えてくれた。


「お、俺をわざわざ出迎えてくれるとは。殊勝な心掛けじゃねーか。」


「バカ。誰がお前の出迎えなんてするか。レオナルド様や、ロキ様達がいるからだ。」


真一が声を掛けると武がいつものように軽口を返してくる。

そして、そんなやり取りを笑いながら見守るみんながいた。


「まあ、なんだ。勝つとは思ってたけど、思ったより早いことに驚いたのと… あと、よく怪我せずに勝ったな。」


真一がそう言うと、真一の後ろにアンナが来て武に事情を話した。


「ダガーさんが来てお二人の話を聞いてから、旦那様はずっと心配してたんですよ。」


「あ、こら!」


このやり取りで周りにいた者達は笑いを誘われ、和やかなムードが漂った。

そんな中、公彦から今回の戦闘の最中にあったやり取りが話されると和やかなムードから一転して反乱軍に関しての真面目が始まった。


「反乱軍の中に召喚された、高橋や工藤がいることは確実。ただ、今もこいつの婚約者さんが反乱軍の中にいるかどうかってのがわからないのは変わりなし。僕はまた下手すると真一君が反乱軍に忍び込むかと思ってたけど、ここにいるってことは他の手を打ったの?」


言われた真一は苦虫を潰したような顔をしながら首を横に振る。


「俺が行こうとしたらみんなが反対するから行けなくて… で、俺の代わりにってクオが…」


「そっか。クオが行ってくれたんだ?なら、大丈夫だね。」


「クオに何かあったら反乱軍、全部壊滅させてやる…」


「な、なんか物騒な台詞聞こえたけど… 真一君、クオはできる子だから大丈夫だよ。」


公彦に言われ、真一は顔を輝かせながら頷いた。


「そうだ!クオは凄いんだぞ!」


「…相変わらず、血は繋がってないのにクオ自慢がすげーなこいつ…」


武に呆れた顔を向けられてもクオの自慢が止まらない真一に対して、レオナルドが声を掛けた。


「真一よ、今はとりあえず反乱を抑えたい。自慢はまたにしようぞ。」


「…そうだな。」


このやり取りを見ていた、武と公彦が今度は驚きの声をあげた。


「真一君がとうとうレオナルド様にタメ口だよ…」


「こいつも偉くなったなぁ…」


「お茶会ではお二人の自慢話も結構されてましたよ。」


ジュリウスが二人に対して、マグカップに珈琲を入れて差し出しながらそう言うと二人は顔を見合わせた。


「こいつが俺達のことを?」


「ええ、我が王が聞いていて三人の関係を羨ましくなるくらいベタ褒めでした。」


「普段の真一君からは想像もつかないね。」


「ってか、ジュリウスさん、幻覚でも見たんじゃねー?」


「そこ!変な話はまたにしろ!今は真面目な話中だぞ!」


「お前がクオ自慢してるからだろうが!!」


ここで真一は一度咳払いをして、場の空気を締めるとテントにいるメンバーに向かい議題を投げかけた。


「まあ、本題に戻るけど… これから追撃してロキシードへ向かって反乱軍を追って追って追いまくる。そう動きたいところなんだけど、反対意見や他の意見は?」


ロキが挙手したので真一はロキに発言を促した。


「俺はともかく、魔族の軍自体はどこまで付いてこさせたらいいかな?同盟組むとは言ってもあまり軍そのもので人族の領地に上がり込むのもどうかと思うし… ゴメン。実際は食料なんかも気になるんだ。」


その言葉で真一がロキに頭を下げた。


「あ、すまん。食料は確かに必要だな。森を抜けたら俺の軍はクウェイまで近いから俺の軍から食料を分けよう。それと、軍は反乱が終わるまでは森の中で待機ってのでお願いしたい。もしも、だけどメサイアやら神族なんかが背後に来ると今度はこっちの方が窮地に立つからな。しばらく守ってもらえてるとありがたい。ってか、俺がどんどん話し進めちゃってるけどレオナルド、どうかな?」


真一に話を振られたレオナルドは一度ジュリウスを見ると頷き、真一を見ると返事をした。


「いや、この反乱自体ワシら人族の出来事。本来ならロキ殿にご一緒してもらってること自体謝罪すべきことよ。食料は人族の方から出す。真一が出す必要はない。それとそうじゃな、駐屯してもらうのに森の外でなく、森がいいんじゃな?」


真一に確認を取るために見ると、真一は頷いた。


「ああ。それと、食料は反乱を抑えた後に人族からうちに渡してもらうようにして、今現在はやはりうちから出すよ。ロキシード抑えないと食料がきついだろ?」


真一に顔を見て言われたジュリウスが苦笑しながら目線をレオナルドに向けるとレオナルドが目を見開いて今気付いた、とばかりに驚いていた。


「そうですね。備えとして多めに食料を持ってきてはいましたが、反乱を治めるまで食料が余裕あるかどうかと聞かれると… わからない、というのが本音です。なので、食料は一時的にお借りする形で真一様に出していただくほうがありがたいです。」


「うん、だろうと思った。レオナルド、気持ちはありがたいけどそういう事情もあるからうちから出すよ。」


「…すまん…」


レオナルドが頭を下げると、真一はケラケラと笑い飛ばした。


「これだけ付近に都市を造らせてくれたんだ。困ったときはお互い様だよ。お義父様方?」


この台詞を聞いたレオナルドとジュリウスは顔を見合わせ嬉しそうな顔をした。

再度咳払いをした真一はみんなを見渡しながら口を開いた。


「ところで追撃するに前に、先に武と公彦にどうやってこんな短期間で反乱軍を追い返せたのか。それを聞いてみたい。」


「え…」


「真一君、それがさ~…」


武が言いよどみ、公彦が教えてくれた内容を聞いたそのテントにいたメンバーは笑った。

いや、真一一人が笑わずに聞いていて一言ボソリと呟いた。


「富士川の戦いの平家… とはまた違うか。でも、音だけでそこまで… ふむ…」


一番腹を抱えて笑いそうな人物が真面目に唸っているのを見て、武と公彦は訝しがり、ボッシュは首を少し傾けながら真一を見た。


「レオナルド、ジュリウスさん、こういうのって… できますか?」


ここで真一が考え出た案が述べられた。

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