勇者決定
「では、ワシとジュリウスで話し合いわかったことをみなさまに伝える。帰還のことについでじゃ。召喚の際に神聖力で召喚が行われることは伝承を聞いてわかったと思うが、帰還については召喚よりも更に多くの神聖力が必要となる。これを自然と溜まるのを待つと50年掛かるということじゃ。帰還する時は来たときと同じ魔方陣の中に入っておかなくてはならない。これも条件じゃな。」
「やはり50年掛かるのか…。」
と、つぶやくと王様が否定した。
「それがどうやら早めようと思ったら早めることも可能らしいのだ。だが…」
「条件が難しいということですか?」
「そうだの…。魔族・神族、両族の神器を使えば早まるのだが、現在両国とは不戦条約が破られ戦争状態じゃ。なので、帰還を早めようと思ったら両国を下し言うことを聞かせるようにしないと無理じゃ。」
「それって…。もしかして王様のご先祖様もしたのですか?」
「うむ、ご先祖様の仲間はそれで帰還したらしい。」
「仲間は…ということはご先祖様はこの世界に残ったんですか?」
「そうじゃ。どうやらご先祖様は魔族と神族を下すためにこちらの世界で重い病に罹ってしまったらしくてな。元の世界ではなくこちらの世界でないと生きていけなかったらしいのじゃ。だが、両族を下したところで病が発祥し一人残ったと…。仲間の誰もが病の名前を聞いて黙ってしまったという。その名も『中二病』!」
聞かなかったらよかった真実というものの一つを聞いてしまった気がしたが…
隣を見るとさすがにいつも悪ふざけしている武までもが「どうしよう?」とこちらを見ている。
公彦も「え?」と言って俺を見てきた。
や、俺も困ってるよ… 当時の仲間も困ったろうな…
「それはともかくとしてどうにかして両族を従えなければ50年後に帰還ということになる。そこでじゃ、勇者はいないかもしれんが勇者と同じことをしてくれないだろうか?」
「それはつまり両族を従えろ、下せと?」
「その通りじゃ。我らがご先祖様の勇者も元はただの一般民だったと聞く。ならばみなにもできるのではないだろうか、というのがワシとジュリウスの見解なのだ。」
「それは誰でもいいんですか?」
スッと立ち上がって声を上げてきたのは勇者だったらよかったのに~という発言をしていた男子学生だ。
「ほほう君には自信があるのかね?」
少し興味を覚えてみると発言した男子学生は少し得意げな顔で言った。
「勇者と同じように魔族と神族の両族を下す。それはこの俺にやらせてください!俺ならできますよ。」
おぉ~、できるのか。最近の若者はすげーな。自信満々だわ。と思っていたらその学生は俺のほうをちらちら見ながら
「そこの田中さんはできないかもしれませんけどね。」
と言ってきた。
うん、できないし、挑戦もしないから…
そう思っていたら外野が黙っていなかった。
「いいえ、こちらの方々が勇者様です!私にはわかります!」
そこでなぜ王女様が自信満々に俺と武と公彦を推してるのかがわからない。
何を言い出しているんだ…
男子学生が俺達を睨みつけてくる。
「王女様、そこの人達はただの年寄りですよ。騙されないでください。私が勇者です。」
「あ~、別に俺以外の誰が勇者でもまったく構わないんだが…。他には勇者なりたい人います?」
しばらく待ってみたけど他には誰もいないようだ。
「おめでとう!君が勇者だ。じゃ、頑張ってね。」