鍛冶と魔術
予約機能付けるの忘れてました。
すいません…(陳謝)
準備ができたクオが出立した後、ランドルフが真一へ声を掛けてきた。
「…真一様、先程の武器。あれは一体…?」
「俺達の住んでいたところで大昔に使われていた武器。『刀』と呼ばれている物だ。」
「あれはあなたが打たれたものですか?」
聞かれた真一は素直に頷き説明を始めた。
「そうだ。俺がこっちの世界に来て収入を得るため、また俺自身の武器として造って使ってる。」
「さきほどクオ殿に渡された物以外にもありますか?あれば見せていただきたいのですが…」
「ああ、構わない。」
すぐさま了承し、何本か刀を召喚した真一はそのうちの一本を手に取りランドルフへ渡した。
ランドルフは受け取ると刀を抜き、色々な角度にしながら刃を見たり、柄を見たり飾りを見たりとしきりに頷き、首を傾げ、一人で相槌を打っている。そんなランドルフを尻目に今度はキンバリーが声を掛けてきた。
「真一様、さきほどから何もない空間から刀を出されてますよね?召喚ですか?」
「いいや、初めて見るこっちの世界の奴らにはよく言われるけどこれも魔術の一つだよ。」
「その魔術は誰にでも使えると言われましたが、教えてもらえれば私でもできるのですか?」
真一は頷くと手招きをしてミントを呼んだ。
呼ばれたミントはすぐ傍まで来ると、
「『ᚠ』」
と小声で詠唱し、手にポットを呼び出すと真一の手元のマグカップへと珈琲を注ぎ、それを今度は何もないところへしまって見せた。
「ほぉ…」「ふぇぇぇぇ…」
キンバリーだけでなく、そのやり取りを見ていたリーゼロッテは関心を示し声をあげた。
そして次はジュリウスが声を掛けてきた。
「真一様、その魔術をみんなで覚えると行軍の際、食糧の輸送というものが省けませんか?」
「ん、それもできますね。ただ、大量に物をしまったり出したりするのはそれなりに魔力も必要だし、魔術の準備も必要になったりしますから、全部を召喚で済ませて輸送を完全になくすということはできないでしょう。この魔術をある程度の人間が覚えるというのも時間も手間隙もかかりますしね。」
「ふむ…」
そして、次にはレオナルドが気になるのか質問してくる。
「それにしても、そこの狐族の者までもが使えるとはのう…」
「文字や韻を覚えたら誰でもできますよ。」
そうやって質疑応答していると見終わったのかランドルフが刀を渡してきた。
「面白い武器ですな。斧やこちらの剣とは違い細く長い… しかし、強靭…」
ランドルフが唸りながら、まだ返した刀を見つめているので真一は面白みを覚えて別の刀を手に持ちランドルフへ渡した。
「ランドルフ。こいつを見てみろよ。」
訝しがりながらも渡された刀を鞘から抜き、翳して刃を見たランドルフは目を丸くした。
「これは…?」
「刀にルーン文字を刻んであるんだ。つまり、この刀は魔力を込めると魔術が発動する刀というわけだ。」
それを聞いた人族の魔王軍以外の者達はみんな驚きの声を上げた。
「武器に魔術…?」「そんなことができるの!?」
そんな声を尻目に真一は手に持っていた刀に魔力を通した。
途端に刀に炎が点く。
「こんな感じで斬ると燃やすを同時に行える。」
片手で木屑を拾い宙へと投げ目の前で斬り実際に見せると、また周囲から驚きの声が上がる。
「まあ、物と魔術を組み合わせるっていうのもまだまだ色々試験段階だけどな。こんな感じだよ。」
ランドルフは唸るとそこでガクリと膝を付き地面に突っ伏した。
その様子を見た真一は慌てて声を掛ける。
「お、おい!ランドルフ、どうした!?何かあったか!?」
それに対してランドルフは顔を左右へと振り頭だけ起こし叫んだ。
「真一様、この『刀』の打ち方を教えてくだされ!!」
「え、は…?」
「剣と違って刀は細長いが強靭でしかも美しい… 私もこれを造りたい!!」
若干顔を引き攣らせていた真一がようやくランドルフが土下座して頼んでいるのだと気付き、返事をしようとしたとき後ろで突然音がした。何事かと振り返るとキンバリーもなぜか土下座をしている。
「真一様、私は魔術を覚えたい!ぜひとも弟子にしてください!!」
「え、お前ら、ちょっと待て…」
戸惑っていると今度は後ろから肩を叩かれたので振り向いた。すると、ロキが笑顔で頷いていた。
「真一、俺からも頼むよ。それと俺自身も魔術のこととか知りたい。覚えたい。ダメ?」
「ダ…」
返事をする前に今度はロキと挟むようにして反対側から衝撃が加わり、ロキの方へと倒れこみそうになった真一は慌てて足を踏ん張ると首だけ後ろへ向けた。反対側からはリーゼロッテが何やら体当たりしてきた様子で真一は溜息を吐いた。
「そんなどつかなくても… いいよ。四人が悪い奴らじゃないってわかったから教えるよ。まあ、教えるのは性格が悪くないって俺が判断した奴らに限らせてもらうけどな。」
魔族四人はその場で飛び跳ねたりしながら喜び合っていた。




