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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
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人族本陣(3)

宣言を行ったジュリウスはそのまま真一とロキを順番に見て話を続けた。


「今回、会談を再度してくださるようにはからって下さったロキ様と真一様には重ねて御礼申し上げます。」


頭を下げたジュリウスに対してロキは首を横に振りながら笑った。


「さっきも言ったようにお礼なら真一に言いなよ。真一が弱かったら会談する気も起きなかったんだしさ。魔族は強さが全てだ。私自身、魔族達の中で一番強いとされてるから魔皇帝なんて言われることをしてるしね。その魔皇帝からしてみると私より強い真一が肩入れしてる人族とは争うだけ無駄ってなだけだよ。」


「おいおい、さっきの組み手は互角だったろ。ロキを倒したわけじゃないんだからロキより強いってことはないぞ。」


真一が苦笑するとロキは真面目な顔になり首を再度横に振った。


「真一、俺もさ。そこまでバカじゃない。真一がさっき本気じゃなかったことくらいわかるよ。それに軍同士での戦闘の時でもそうだ。俺が全力を振り絞ったからって真一みたいに神族の天使族を壊滅させるなんてことはできないよ。」


「…あまり、その辺り話してもしょうがないな…」


何かを言おうとして言葉を飲み込んだ真一はそんなことを言う。

ジュリウスはロキと真一のやり取りがおさまったとみて話を続けた。


「では、改めて神族を除き、魔族・人族・人族の魔王での会談を続けたいと思います。ここからは我が王であるレオナルド様に話していただきます。」


ジュリウスが言い終わると、レオナルドが話し始めた。


「まず、魔族の方を騙すつもりはないので先に言わせてもらうのじゃが… 現在、ロキシードでは我がバカ息子が反乱を起こし国を乗っ取っておる。人族はこれに対してすぐさま軍全体を返し、反乱を治めるつもりじゃ。」


それに対してロキはレオナルドを見遣りつつ首を傾げた。


「…そりゃあ御愁傷様って言えばいいのか?息子なんだろ?でも、うちには関係ないよな?」


「つまり、急いで帰るけど後ろから襲わないという保証が欲しいんですよ。」


ジュリウスが言うと「ああ…」とロキは納得した。


「保障か~ 繰り返し言うようだけど、さっきの移動手段。あれを見せてる時点で魔族としては人族と争うつもりはないからレオナルドが王として在位している間は同盟ってのはどうかな?」


レオナルドはロキのこの言葉に対して息を呑んだ。

それは人族の歴史上、古代勇者が味方となった時より38代目のレオナルドまで魔族が人族と同盟などということがなかったことが起因である。古代勇者が交わした古代の不可侵条約。当時は古代勇者の力に神族・魔族は手痛い打撃を受けその力を恐れて条約を履行していたのだが、それは長い年月を経て様々な形で綻びを見せていた。現代に於いて、ロキシード内でナターシャやセシリー、そしてクオといった3族に限らずいたる種族の奴隷が売買されることはその一端である。なので、自分の力でその同盟を成し遂げたわけではないにしろ、自分の代で歴代の王達が成し遂げられなかった同盟という偉業がなされることはレオナルドが息を呑むに足ることだった。


そこまで思ったレオナルドは思わず真一を見た。

その見ている真一は召喚された当時の顔にシミや皺ができた顔ではなく、若々しい顔となって目の前にいる。自分の娘であるレディが召喚された者達の中で真一を見込み惚れ込んだのは真一に何かを見出したのだろうか、と思わず場違いなことにまで意識が飛んだ。


「ゴホン。」


咳き込んだジュリウスの反応で正気に戻ったレオナルドはロキに対して頷いた。


「人族としては是非もなし、と言ったところ… 魔族に対して何か保証できるものがあればいいんじゃが…」


そんなレオナルドに対してロキは後頭部をガリガリと掻きながら長い髪を指で弄んだ。


「人族からしてもらえる保証って言ってもなぁ…」


と、唸っていると後ろからリーゼロッテがロキの後頭部へチョップし、耳元へ口を近付け何かを話した。

すると途端にロキは真っ赤になり、椅子から驚いて立ち上がった。

その場にいるみなが何事かとロキを注目する中、ロキはハッとした後真一の方を見てレオナルドへと向き直る。


「…ゴホン。じゃ、じゃあなんだ… 人族の魔王という脅威に対して魔族は保証を一つもらいたい。」


言い終わった後、数秒沈黙し、辺りの者達はロキの次の言葉を待つ。


「人族の魔王自身に対して、何人か婚姻を求める!!」


ビシッと指を真一へと突きつけながら真っ赤な顔をしながらロキは叫んだ。

真一はというと首を傾げ、頷きながら話し始めた。


「ああ、そう言えばキンバリーとランドルフの二人と話してたんだが、希望者などいたら人族の魔王の領地に魔族を迎えたり、婚姻関係も含めてやり取りしたいって話してたんだ。ちょうどよかった。」


真一がそう話すと、公彦が思わずつっこんだ。


「真一君。違う違う。ロキさんが言ったのは真一君に何人か申し込むってことだよ。」


その言葉に周囲の他の面子はうんうんと頷き、真一は驚きのあまり叫んだ。


「はああああぁぁぁぁ!?俺に何人か嫁さんを送り込む!?ロキ、お前何を言い出してるんだよ!?」


「いや、真一!さっきの戦闘で真一がやったこと考えると普通だよ!!真一一人いるだけで戦闘をひっくり返すなんてことありえちゃうんだよ?保証として何人か婚姻関係結びたいなんて当たり前だよ!」


ロキが叫び返した。


「いやいやいやいやいや!!だからって何人かってどういうことだよ!一人でも十分だろ!!」


「送った一人が気に入らないって真一を怒らせるようなことになったりしたら婚姻の意味ないの!だからこういう時は複数人送るんだよ!」


「俺はもう四人も婚約者いるんだから勘弁してくれ!もういいだろ!」


「ダメです。王としてちゃんとしてもらうためにもう何人かいてもらわないと…」


「おい、ボッシュ!お前がなんでそこでダメだししてんだ!」


ロキに叫び返している真一の後ろからボッシュが真一にダメだしを入れたことでロキはガッツポーズを取り、後ろにいるリーゼロッテとハイタッチを交わす。ボッシュから視線をロキへと戻したところでそのハイタッチを見た真一は目を瞑り、頭をガリガリと掻きながら顔を横に振ってロキへと話しかけた。


「…俺はともかくとして、キンバリー達と話したように同盟が成った後、希望者は移動や婚姻を自由にさせてやりたいんだが、それはいいのか?」


「ん?ああ、他のやつら?別にいいよ。人族の魔王並びに人族と同盟ってことでそういうやり取り自由ね。」


その返事を聞いた真一は溜息を吐きながら話し始めた。


「そっちはOKか… で、俺の婚姻だけどそいつは待ってもらおう。」


ロキやボッシュが何か言おうとしてるのを片手を挙げて制した真一は続けて言う。


「むやみやたらに断ってるわけじゃない。今こんな若く見えるが俺は実際、そこの武や公彦みたいに45歳のおっさんなんだ。何が原因かはわからないけど若返った。ただ、それだけだ。原因不明で若返ったんだ。実際の顔を見られたわけでもないのに結婚後に実際の顔見て幻滅されても嫌だしな。」


ロキはしばらく黙って真一の顔を見ていたが溜息を吐いた。


「強いけど案外頑固なんだな… 真一の新たな一面を知ったから今回は待つことにするよ。でも、今回だけだからな?」


ニッと笑うロキの顔を見返した真一は少し戸惑った様子を見せていたが少しずつ表情が苦笑に変わった。


「まったく… お前のそういう天真爛漫なところは魅力的なところだと思うよ。でも、俺の婚姻以外の保証となると… う~~~ん… ああ、そうだ。俺が使う魔術に対して今のところわかっていることくらいは説明してやるよ。そいつを公開することで保証としてもらえないか?」


「「「「「えっ!?」」」」」


その場にいたほとんどの者達が同じ反応を返すかもしくは口をあんぐりとさせた。

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