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召喚されし者達  作者: カール・グラッセ
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勇者と伝承

「そうだな。まず、ワシらのご先祖様にあたる勇者の説明から始めるとしよう。王子、お前がして差し上げなさい。」


「なぜ私がこのような下郎共に…」


「その下郎共というのはどなたのことか?貴様はいったいいつからそのように偉そうになった?勇者も元々は一般民だったという。お前は自分のご先祖様も下郎と呼ぶほど偉くなったのか?」


「申し訳ございません!そのようなつもりでは…」


「言い訳は無用である。罰っして欲しくなければ考え方を改めること、それから皆様に勇者のことを教えて差し上げろ。」


「はい。わかりました!」


どういう罰なのか気になるくらい王子様は王様に謝罪し、今までと全く態度が違う。

めちゃくちゃ気になるんだが… まあ、いいか…


とにかく王様と王子様がそういうやり取りをした後、王子様はこちらに向き直り話を始めた。


「人族が王国というものを興す以前の遥か昔のことです。その頃には魔族・神族などはこの世に存在せず、人族のみが平和に暮らしていました。ところがある日、いつも通り平和な世に突如として隕石群が飛来してきました。それは地上のあらゆる場所へと落下し、色々な変化をもたらします。ある場所には疫病が蔓延し、ある場所には魔力というものが溢れ出たり、ある場所からは魔族が出現したり、神族が出現したりしました。人族は当初魔族や神族へ向けて友好の使者を発し和平を強調しましたが、両族共これを拒否。哀れ使者は殺害され人族は侵攻を受けることとなります。」


王子様は一息付き、飲み物を飲んだ。


「両族との力関係は圧倒的でした。魔族は魔力を操る魔法を使い、神族は神聖力を操る召喚を使い人族はこの大地から消え去るのでは?と疑われるほど虐殺され追い込まれていました。そんな中、神族は二派に分かれました。それは異世界から召喚した勇者達が人族を追いやることに対し疑問を覚え反抗を示し始めたことから始まります。神族側の勇者と人族側の勇者、両派の勇者同士の争いは人族側の勇者の勝利に終わり神族側の勇者は全滅。逆に魔族・神族に対して逆襲し現在の国の国境まで追い返し、当時の勇者達の意見を取り入れ魔・神・人の三国不戦条約が取り決められたと伝えられております。」


そこで王様が意地悪そうに王子様に質問した。


「王城にある召喚の間についてお前は覚えているか?」


「…覚えていません。」


「なんだ、情けない。召喚された方達に対して偉そうにする割には勉強不足だな。それでもこの国の王子か?別にこの国はお前ではなく、王女の婿を跡取りとしてもいいんだが?」


「申し訳ございません!精進します!」


「…まあ、よい。…少し話の続きをしよう。お主らが最初にいた場所こそ召喚の間と言われており、『人族が再び滅びの危機を迎えるとき、その前に自動的に勇者を召喚する間』と伝えられていたのだ。この部屋は当時の人族側の勇者達と勇者を召喚した神族の協力があって作られた。ここで問題になったのは召喚を行うにあたり必要な神聖力を使用できるのは神族だけ。勇者達も神聖力を使えたようだが、人族は使えない。人族が生き残るためにつくった筈の施設なのに人族が使えないという事態に陥ってな。その問題を解決するためにその勇者が人族を守るためにそのまま王族となり人族を指導した。というわけじゃ。それと追加して言っておくと当時の勇者はみんな『日本人』と伝わっており、当時の人族は違う言葉を話していたのだが、勇者に合わせて『日本語』が主に使われるようになったと言われておる。お主らと普通に話ができてるのはそのおかげというわけじゃな。」


そこまで話が済んだところで王様にも食事がきた。


「ちなみに召喚の間じゃが…。実は王族が神聖力を使い起動させるというのが最初に予定されていたらしいが、それには失敗して自動で勝手に召喚してしまうという代物になったと言われておる。そこで作ったワシのご先祖様が、呼び出された者に対して謝罪しできる限りの便宜を尽くしてやれ。と王族に言い伝えられておる。」


机の上に並んだ食べ物を口の中に入れつつ王様は続けて言う。


「おぬしらの事も聞いてみたいのじゃが…。その前に、王子、王女。二人とも自分達のことはみなさまにお話したのか?」


「「私達二人ともまだ何も…」」


「なんじゃ、王子だけではなく、王女までもが…。すまぬな。」


だからなぜそこで私を見て謝罪されますか。しかも頭まで下げられるとこっちが慌てる。

ここは敢えて声に出しておこう。


「王様、私はこの集団の長ではありませんし、ただのおっさんです。御存知の通り勇者ではありません。したがって王様を始めとして王族の方々にも謝罪していただくような偉い者ではございません。そのあたりご理解いただき頭をあげてもらいたいのですが…」


そう言うと王様は頭を上げてくれた。が、王様もそうだがアンナさんも「え?」と声をあげている。


「何?そなたはこの集団の長ではないと?では誰が長だというのだ?」


「たまたま誰かを中心として召喚され、周辺の人達はただ巻き込まれただけの集団です。なので、そもそも私達はほとんどお互いの顔を見るのも初めてですし名前も知りません。」


「そうであったか。そこまで無差別な召喚とは…これはまた申し訳ないな…」


「いえいえ、いくらご先祖様がされたこととはいえ、王様自身がされたことではないのでそこまで気にしないでください。」


「そう言ってもらえると助かる。ところでお互いの名も知らぬということであればどうじゃ?この場で名前などをお互いに明かしておかぬか?」


「そうですね。その方が全員にとって都合がいいかもしれないのでそうしておきましょう。」


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