旅人は酒と行く~つまみを求めて~
『グビグビグビグビ』
「ペハー、やっぱりこれに限るぜ」
俺の気分は最高潮だった。
俺は、酒を友とし、酒と旅する黄昏の旅人だ。
俺がこよなく愛する酒……もちろんウォッカだ。
あの喉にくる感覚と胃が焼けるような気持ち良さ……たまらない。
「さて、次はどこに行くか」
俺の旅は行きあたりばったりだ。
何も考えず、只々歩く。
そこで起こった出会い、別れ、争い、友情……全てが酒のつまみになる。
思い出こそが最高の酒のつまみだ。
俺のよく言う口癖だ。
砂漠を超え、凍土で生き抜き、海を渡り、小島に漂流し、泳いで大陸まで移動した……こんなに素晴らしいつまみが他にあると思うか?
あるはずが無い。
酒のつまみは思い出だ、食や女ではない。
美人な女と珍しい食べ物を囲みながら俺の思い出を語る……この時に酒を浴びるほど飲むんだ。
これもまた最高だ。
旅人は一か所に留まらず転々とする。
別れは日常茶飯事だ。
悲しく辛いときだってたくさんある。
でも、それを乗り越えなければ真の旅人とは名乗れない。
別れが辛くなったら酒を一杯『グビッ』って飲んでこう言ってやるんだ。
「世界は思った以上に狭いんだ、君の俺を思う気持ちが強ければ強いほど、またいつか会えるよ」
俺が旅をして来てこれで堕ちなかった女はそんなにいない。
次はどんなつまみに会えるのだろうか?
そんなことを考えながら俺は旅を続ける。
最高のつまみを求めて。
酒は好きでは無いが酒のつまみが好きな私です。
思い出は大切に。