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8  回想 夏の記憶 4

 部室では、1年生達と北山、東、真田はもう来ていて着替えを始めていた。

「暑ちーなぁ。」

北山は、持っていた扇子をパタパタ扇いでいる。

「今日はコート使えるんだっけ?」

真田は、体育館使用予定表を見ながら確認をしていた。

体育館は、2面しか取れないのでバスケ、バレー、バドミントンが交代で使用しなければならない。

今日は男子バレー部と体育館を半分に分けて使う事になっている。

「今日の片面は、男バレか。」

「まぁ、あんまり男子女子で組まれることは少ないな。両面で男子または女子が多い組み合わせだね。」

「その分、集中できていいけどな。」

北山は、パタリと扇子を仰ぐのを止めて軍師のように扇子を持つ手を前にして言った。

「野郎ども!今日は2チームに分かれて練習試合するぜ。」

真田が、苦笑しながら言った。

「アイドルの扇子でポーズ取られても迫力ないよ。」


突然、部室の扉が開き、蓮が入ってきた。

「よぉ!蓮ー・・・っ」

北山が声を掛けて、むむっとした顔をした。

蓮の目が据わっている。

東は、すぐさま一年生に指だけで、部室を出ろと合図を送る。

真田は溜息をついた。

「どうした。今日は何があった?」

蓮は下を向いた。

「・・・。何でもない。」

「何でもないって、引きつったその顔。以前他校と喧嘩した時と同じような形相してるぞ。」

北山が眉を寄せて言った。

「何でもない!」

一同が押し黙った。

真田は、蓮の正面に立つと睨んで言った。

「蓮、何に怒ってるのか知らないけど、周りに八つ当りするのはやめろ。」

蓮は、真田の目を見ているうちに冷静になってきた。

「わりぃ。ちょい頭冷やす。」

三人は顔を見合わせた。

「ーーー・・・分かった。じゃぁ俺たち先に行くわ。」

そう言うと、彼らは部室を出て行った。

蓮は、ひとり残された部室で、長椅子にぼんやりと座った。

さっきの光景が浮かんできた。

海斗が、女子から告白されていた。

こちらからは、どんな表情なのか分からない。

でも、笑い声が聞こえた。

これは、もしかして海斗もその気になったのだろうか?


これが、動揺せずにいられるだろうか?

ショックと暴君が一度に降臨した気分だ。

俺の心の中は、海斗でいっぱいなのに。

でも、海斗は男で・・・。

なんだか、絶望的なしょっぱい感覚が鼻をツンとさせる。

頬を伝ってぽたりと落ちる。

蓮は、膝を抱え込んで丸くなった。

報われない片思いは、長くすると辛いだけだな。

そう、分かっていても未練たらしい俺は、海斗への気持ちを断ち切ることが出来無い。


「・・・やっぱり今日は暴れてこよう・・・。」

顔を洗った後、蓮は体育館へ向かった。


 海斗が部活に合流したのは、丁度ウォーミングアップが終わった後だった。

「悪い、遅くなった。」

北山が、ホイッと海斗に赤ゼッケンを渡す。

「海斗、今日は練習試合だ。お前赤ね。」

「分かった。組み合わせは?」

「お前の他に、真田、宮部、田中と俺が赤。んで、青が蓮、東、柳瀬、河村、遠野」

「ん?なんで、2年がこっちに3人もいるんだ?」

いつもならバランスを取る為、北山は審判をして入らないのだが・・・。

「まぁ、やれば分かるよ。」

笛が鳴り、練習試合が始まった。

程なくして、北山の意は分かった。

蓮のマークには北山が付いている。

蓮のドリブルは乱れ、シュートは外しまくってる。

それだけならともかく、ディフェンスもゴール下のリバウンも当たりが強く荒すぎる。

“蓮が暴走してるのか。だから北山が入ってるんだな。”

普段は陽気な人柄しか見せないが、ここぞの踏ん張りや歯止めは北山じゃなきゃ出来無い事だ。

“蓮のヤツ”

ピピーッ。ボールが外に出て、審判の笛が鳴った。

海斗は肩で息をついている北山の背中に触れた。

「んん?」

「北山、交代だ。あの暴れ牛は俺が止める。」

にぃと笑いながら北山が、分かったと言った。



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