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二人の間に流れた沈黙は、長い時間か、それとも一瞬なのか・・・
鷹野は、ただただ海斗を見つめていた。
どうすればいいのか、言葉が出て来ない。
海斗は、この沈黙に耐えられなくて、目を泳がせた後、空を仰いだ。
下は向きたくなかった。
「やっぱり、迷惑でしたよね。」
海斗の声は、上ずっていた。鷹野の胸はズキンと痛んだ。
「いや、そんな事はない。」
迷惑なんかじゃ決してない。
「俺は男で、景さんに比べたら、半人前のガキだし・・・。相手にもならない・・・」
「っ・・・」
鷹野は迷いを見透かされた気がした。
「でも、俺は、自分で止められないくらい景さんの事が好きなんです。」
海斗の肩は、小刻みに震えていた。
「・・・海斗」
「だから、気持ちだけでも・・・言わせて。あなたに、会えて・・・よかった。」
「海斗。」
そう言いながら手を伸ばす。
鷹野は海斗を抱き締めていた。
マスターとの会話が蘇る。
『話をしたらドキドキして、甘えられたら何も言えなくなって、しょぼんとしてたら、慰めて、抱き締めて、大丈夫だと伝えたい・・・』
まったく、いつもその通りになっちまう。でも、何故かな?そうせずにはいられない。
あぁ。もしかしたら、この“恋”は理屈なんかじゃ到底どうしようも出来ない物かもしれない。
惹かれ合う引力には適わないのなら、迷っている事自体に意味は無い。
「海斗。」
だったら、もう、有りのままの心で受けとめようか。
「景・・さん・・・」
海斗も鷹野の背中に腕をまわした。
「海斗、僕は“大人”だから、今はこれが精一杯なんだ。」
鷹野は、腕の中の海斗の瞳を見つめながら言った。
小首を傾げた海斗は、よく飲み込めていないようだ。
「あ~~。だから・・・」
ふぅっと大きく息を吐くと、海斗の耳元で囁いた。
「僕も、海斗の事が好きだよ。」
海斗に腕に力が入る。両想いが分って、嬉しくて嬉しくて空高く舞い上がりそうだ。
鼓動が早くなって、顔が真っ赤になって・・・視界が潤んで・・・
「景さん!!」
「海斗・・・泣いてるの?」
「泣いてません!」
涙声で答える海斗に鷹野は優しく笑った。
次回は最終回で、プロローグみたいな感じでいこうかと思います^^
二人のその後をちらっとw




