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 新しい年が明けた。

初詣の待ち合わせ場所は、駅の西口の改札を出たところにしている。

海斗は、駅ビルのショウウィンドウに背を預けて行き交う人の波をぼんやりと眺めていた。 

 どの人も皆、着飾って正月を祝っているようだ。

海斗も今日は珍しく制服ではなく私服だった。

キャメルのダッフルコートにデニムパンツを着ている。

だが、寒さで吐息が白く揺れた。

 鷹野は待ち合わせの10分前にやって来た。彼も今日はスーツではなく私服だった。

アイボリーのライダースボアジャケットに黒のチノパン、同じく黒のマウンテンブーツだった。

ふんわりと巻いたマフラーが優しいイメージに仕立てている。

私服の鷹野は、いつもより若く見え、そして色気があった。

“私服の景さん、かっこいい・・・”

思わず海斗は、見とれてしまった。

「明けまして、おめでとう、海斗。」

挨拶をされて、慌てて返す。

「明けまして、おめでとうございます、景さん。」

頬を染めてペコリと頭を下げた。

「待たせてしまったかな?」

と申し訳なさそう顔をされて、海斗は首を振った。

「いや、そうでもないですよ。さっき来ました。」

本当は浮かれて30分も前に来ていた。

鷹野は、少し首を傾げると、前を向いて歩いて行こうとしている海斗の赤くなった耳にそっと手を伸ばした。

「!!!」

急に触れられて海斗は飛び上がらんばかりに驚いてしまった。

「なっなな、なんですか?」

「あ、いやごめん。耳が寒そうだったから・・・。でもやっぱりだ。

長いこと僕の事を待っててくれたんだね。」

鷹野は自分の首に巻いたマフラーをふんわりと海斗に巻いた。

途端、首や耳が暖かさで包まれた。

「ありがとうございます。毎回、借りてばっかりだな、俺。

このマフラーは、この前お借りしたのとは別なんですね。」

前回のマフラーはちゃんと返してある。

「あぁ、マフラーは好きなんだよ。色んな種類を持ってる。」

「服によって変えてるんですか?」

「あはは。僕はそんなにセンスがないから、気分で巻いてるよ。

でも、このマフラーは海斗の方が似合うな。」

「景さんも似合ってました。」

「海斗、よかったら、今年の冬からはそのマフラーを巻いてくれよ。」

「俺にくれるんですか?」

「あぁ、君が寒そうにしていると、僕が巻きたくなるから、ね。」

そう言ってにこにこしている鷹野は私服のせいか、いつもと違う雰囲気だ。

「ありがとうございます。」

海斗は、マフラーに顔半分を埋めた。嬉しさで顔がにやけて仕方がなかった。


 神社へ続く道は参拝客が大勢いて賑やかだ。

鳥居を抜け、参道の階段を登っていると、着物やおしゃれをした女の子達が、すれ違うたびにこちらを見たり振り返ったりしていた。

「なんだか、さっきから僕らの事を見られてるんですけど・・・」

海斗は、そっと鷹野に耳打ちした。

「そうかな?まぁ、気にするなよ。」

鷹野は気に留める様子もない。

“そうは言われても。”

すれ違う女子達は絶対、景さんを見ているのだろう。

“まぁ、仕方ないな。景さんはイケメンだから・・・”

そんな事を思いながら歩いていると、ふとした疑問がわいた。

“どうして、イケメンなのに彼女いないんだ?・・・いや、待てよ。いないとは限らない。

彼女がいるかどうか聞いてないし。”

じーっと鷹野の顔を見つめながらその疑問の答えを考えている。

「どうした?」

鷹野は、不思議そうな顔で海斗に声をかけた。

段々と海斗の顔は悲壮感を帯びてくる。

「か、海斗?」

海斗は頭でグルグル考えて、そして前から思っていた事を今日、実行しようと決めた。


 神社へのお参りが終わった。

参拝客は、お参りが終わると裏参道から帰っていく。

その途中に庭があり、鯉が放流されている池があった。

広い庭には、桜の木やもみじの木が植えてある。今は寒椿が花を咲かせていた。

「景さん、少しだけお時間は、ありますか?」

海斗の視線で、鷹野は彼が何が言いたかったのかを理解した。

「あぁ、いいよ。鯉でも眺めていくかい?」

そう言うと、二人は庭の中へ入っていく。ここは、滅多に人が来ない。

人混みから少し離れて、そこだけ時間がゆったりと流れていた。

「あぁ、ここには色んな色の錦鯉がいるんだねぇ。」

鷹野は、池に顔が映るくらい乗り出して見ている。

「景さん」

「ん?なんだい?」

海斗の声に顔を上げた鷹野は、はっとした。

思い詰めた顔をして、瞳を揺らしながら鷹野をじっと見つめている。


「俺、景さんの事が、好きです。」


二人の時が白く、そして止まった。

鷹野は大きく目を見開き、海斗から視線を外すことが出来なかった。

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