表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/57

53

 海斗は自分の部屋のベットの上に仰向けに寝そべっていた。

手には、鷹野からもらった琥珀がある。

石を覗いてみると、呼吸を止めた羽虫が微動だにせずそこにいた。

「これが、俺。」

鷹野に言われた言葉を思い出していた。

止まっていたはずの時間は、動き出した。

“景さんは、その事に気が付いていないんだろうな・・・”

ごろりと身体を動かし横向きになる。

“初詣、一緒に行きたい・・・”

投げ出した身体の横に、これまた放ったようにおかれた携帯がある。

“誘ってみる?ほらほら、よく言うじゃん。一年の計は元旦にありって。

それは今後を左右する訳で・・・”

海斗は琥珀を置くと、今度は携帯のアドレスをいじりだした。

が、結局何もできずに携帯をパタリと閉じて琥珀を眺めた。


もう、こんな事を数時間程繰り返している。


「海斗~!ただいま!」

父親は、朝から年末の買い出しに行って、ようやく帰ってきた。

「あら?お父さんどうしたの?」

少し興奮気味の父親に、台所でずっとおせちを作っていた母親が声をかけた。

「ふっふっふ!当たったんだよ!くじが!」

「あら!なに?テレビ?それとも温泉旅行?」

母親は、ワクワクしている。

「じゃーん!隣町の水族館のペアチケットぉ~」

「あっそ。」

母親は、急に興味をなくし台所へ戻っていった。

海斗は、部屋からリビングに出てきて、苦笑しながら一部始終を見ていた。

「海斗、はい。」

「俺?」

「うん。これ、期間限定のオウムガイも見られるらしいよ?こういうの好きなんじゃない?博物館の人ってさ。」

海斗は、ペアチケットを受け取った。

もしかして・・・これは、チャンスかも!

「父さん、ありがとう!!」

とたん、海斗は笑顔になって自分の部屋に戻っていった。

こういうのは、勢いがいる。そう、ちょっとでも盛り上がってるこの時に電話だ!

海斗は、携帯を握り鷹野へかけた。

『あ、景さん、海斗です。』

『おぉ!海斗、大掃除すすんでるか?』

『え!?えぇ、まぁ、ぼちぼち・・・』

数時間悩んでいたので、ちっともやっていない。

『はは、一年に一度じゃ、なかなか終わらないよな。ところで、どうした?なんかあったか?』

『大したことじゃ、ないんですけど、水族館の・・』

『お!水族館ね。そうそう、僕もね、海斗に言おうと思ってたんだ、水族館のチケットあるから、一緒に行かないかい?』

言おうと思っていた事を先に言われてしまった。

同じ事を考えていたのかと、海斗はほっこりした。

『実はね、景さん、僕もチケットあるんです。』

『あぁ、そうなのか・・・誰か他の人と行くのかい?』

『いや、だから、景さんと。良ければ、どうですか・・・』

『あ。あぁぁ、いいね!うん、いい。うんうん。』

鷹野は電話の向こうで、少し慌てている。

そして、鷹野の大きなため息が聞こえた。

『ごめん。ちょっと変な感じになっちゃって。海斗が言ってくれたことが嬉しかったから。』

それは、鷹野の素直な気持ちなのだとわかると、海斗も嬉しかった。

『・・・うん。』

頬を少し赤らめて、海斗は頷いた。

『それから・・・それから景さん、よければ初詣、一緒に行きませんかぁ?』

少し甘えた声になっていたかもしれない。

いや、きっとそのせいだ。

『・・・っ!』

電話の向こうで、声に詰まった高野がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ