表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/57

49

“可愛い弟っていうんなら、弟らしく甘えりゃいいんだよな?”

だが、残念ながら海斗には兄弟がいないので“弟らしく”がよく解らない。

“大体、鷹野さんは俺の気持ちそっちのけで、抱き締めたりするから期待しちゃうんじゃないか!”

「あ~っ、もう!」

朝から悶々としている海斗に、母親が台所から声をかけた。

「海斗、明日は父さん、出張先の海外から帰ってくるから。」

「えっ」

海斗は、目を見張った。


 いつもより早めに博物館へ行き、自習室で冬休みの宿題をする。

だが、今日は普段と違ってちっとも勉強は捗らなかった。

長テーブルに、伏せて窓の外をぼんやりと眺めていた。

鷹野は、そんな海斗をしばらく自習室のドアから見ていたが、ゆっくりと近づいた。

どうも、彼は海斗の事がほっとけないらしい。

海斗の正面の席にそっと音もなく座って、海斗が気が付くのを待っている。

はぁぁぁ~。

長い溜息を出した海斗に思わず笑ってしまう。

「あ・・鷹野さん。」

海斗は慌てて身を起こした。

「物凄く大きな溜息だな。溜息は幸せが逃げるらしいよ?」

「俺の場合は、少なくとも小さなストレスも逃げるからいいんです。」

「どこか、行き詰ってるのか?」

どれどれと、宿題を覗き込んできた。

「行き詰っているのは、人生です。」

海斗は、口をへの字に曲げて言った。

「おや。悩み事なら聞いてあげるよ?」

「お兄さんが、ですか?」

海斗は、そう言ってはっとした。声に棘があった。

鷹野の顔を見ると、困った顔をしていた。

「ごめんなさい。」

「場所を変えるかい?」

海斗は、頷いて立ち上がった。


控室の奥の部屋に二人は来ていた。

「ここなら、誰にも話を聞かれないと思うぞ。」

そう言いながら、鷹野は窓の外を見ていた。

今日も雪が降りそうな空模様だ。

「明日、親父が帰ってくるんです。」

海斗が、近くにあった椅子に腰かけた。

おや?と、鷹野は海斗の方を向く。

「親父は、今まで海外に出張して、家にいませんでした。」

蓮との事は、母親から聞いているかも知れないが、自分からは言ってない。

明日帰ってきたら、その事を追及されるかも知れない。

夏の苦い思いが蘇る。

「俺の恋愛。男同士じゃ、将来、子供が出来ませんから・・・でも親は、そんなところ、期待するでしょ?その辺りが・・・。」

「夏の彼は、別れたんだろう?もう、終わった事だと思うんじゃないのか?」

「・・・っ」

海斗は、ギッと鷹野を睨み付けた。

「俺は終わってません!蓮とは終わっても・・・俺は・・・また・・・」

「雪・・宮・君?」

どうして、気がついてくれないんだろう。

いつも近くにいて、俺の心を乱れさせる。

「弟なんでしょ?だったら、俺の事、海斗って呼んでくださいよ。」

鷹野は、少し戸惑っている。

「なんで、そんなにイライラしてんだ?雪・・・いや・・かいと・君?」

「君も・・・いりません。」

鷹野は、しょうがないなと言いながら、海斗の方を向いてリクエストに答えた。

「海斗」

優しく呼ばれて息を飲む。

「・・・・」

自分で言っておきながら、海斗は耳まで赤くなるのが解った。

「海斗、言ったぞ、返事は?」

「・・はい・・・。」

「何だよ?人に言わせて、照れるなよ。」

鷹野は、海斗の座っている椅子の前に腕を組んで立つと、背をかがめて海斗の顔を覗き込んだ。

「・・・。」

物凄く近くて、海斗はドキンとした。

「僕の事は、景さんで。さん付け忘れんなよ?」

そう言うと、ふいっと顔が離れていった。

「親父さんとの事は、親子なんだ。しっかり話をしたらいい。」

そして、やはり頭を撫でられた。この辺りが子供扱いなんだよな。

「海斗。親子喧嘩したら、いつでも慰めて応援してやるから。どんと、当たっておいで。」

「・・・はいっ。」

海斗はコクリと頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ