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「先輩っ、こっち、こっちです!早くぅ!」
相楽は、真田の制服を引っ張って駅前のバーガーショップの角に隠れた。
はいはい~と、疲れ気味に真田は相楽に付いて行く。
「先輩たちは、このお店に入っていったのを見たんです!」
真田は、チラッと店内を覗いた。それらしき人物はいないようだ。
「本当かぁ?」
「間違い、あ~り~ま~せ~ん~!!!」
相楽の迫力に押され、真田は頷いた。
「で、どうすんの?入るの?」
「このまんまで入ると、目立つんで変装しましょう!」
相楽は、準備しましたと言わんばかりに紙袋を見せる。
「はぁ~!?」
変装する方が目立つんじゃないのか?等と言える雰囲気ではなかった。
数分後、チャラい格好の男女が二人バーガーショップへと入った。
二人は、バーガーのセットを頼み、トレーを受け取った。
1階の店内を見渡しても、探し人はいない。
「2階の様ですね。」
二人は店の2階へと上がった。
相楽は、ぐるりと見渡すと、真田の腕をツンツンとつついた。
「あっちにいます!」
「あぁ、本当だ。」
「ほ~らぁ~」
相楽は少し得意げだ。
「あまり近いと、怪しまれるかも知れないしな。」
二人は、少し距離を置いて席に着いた。
二人の視線の先には、海斗と、ピクシーがいて、二人はシェークを飲んでいた。
「今日は、いかがいたしましたぁ?」
少しお道化てピクシーが海斗に話しかけた。
ピクシーは今日も海斗に呼び出されたのだ。
「ちょっと、聞きたい事があってさ。」
「まったく、私はいったい、あんたの何なの?」
「相談窓口。」
「相談料もらうわよ?」
「シェーク奢ってるじゃん。」
「もっといいものがいい!」
「いいものって?」
「クレープとか、ケーキとか!」
「あぁ、そのうちね。考えとく。」
「よっしゃ!で、今日のお悩みは?」
現金だなぁ等と思いながら、海斗は昨日の事をピクシーに話した。
一通り、聞いていたピクシーは、ふぅんと答え、しばらく考えていた。
「可愛い弟ねぇ。」
「それってさ、どうなんだろうな?」
「そうねぇ、雪宮の言う通り、“今は”対象外なのかもね。」
“やっぱりなぁ”
海斗は、その答えに落胆した。
ズズと、ストローでシェークを飲みながら何気なく聞いてみる。
「ピクシー、この前、1年の子いたじゃん。」
「あぁ、泉ね。」
「今はお前にも恋人が居るから考えられないだろうけど、もし仮にフリーだったら、あの子の事、本気で好きになれるか?」
ピクシーは、大きく目を見開いて笑っている。
「えぇ?泉を?」
う~んとやはり考えて、
「そうねぇ。あの子は多分、違うだろうから、そんな関係にはならないわね。可愛い妹は、可愛い妹よ。」
海斗は、はぁぁぁと大きなため息をついて天井を見上げた。
“やっぱり、無理かぁ・・・”
「でもね、私の今の恋人は、最初のうちは、私とこんな風な関係になるなんて思ってなかったみたいよ。」
ん?と海斗は、ピクシーへ顔を向ける。
「可愛い女の子としか、見てくれてなかったの。」
「ピクシーの恋人って、どんな人?」
「ヘアスタイリストよ。私、最初はその人のお客だったの。」
うふふっとピクシーは笑っている。
「どうやって・・・落としたの?」
ピクシーは、瞳をゆらりと揺らした。
「告白したの。」
店内は、音楽がかかっていて、真田と相楽の席からは二人の会話は聞き取れなかった。
「仲がいいような、それほどでもないような距離感だな。」
「うん、そうですね。」
相楽はモグモグとバーガーを食べている。
「取りあえず、先輩を泣かせるような事は今のところないようですね。」
そう言い、今度はポテトを食べだした。
「ふっふふ。よく食うなぁ、お前。」
真田は可笑しそうに、相楽の食べっぷりを見ている。
「食べることは、大好きです。」
チューと今度は炭酸ジュースを飲んだ。
「俺さ、ジュウジュウ亭でバイトしてんだよ。今度食いに来いよ。」
「へぇ、先輩、お好み焼き屋で、バイトしてたんですね。あ!そうだ!」
相楽は急に思い出したような声を出した。
「わっ、なに?」
「携帯。出してください。」
「なんで?」
「いいから。」
真田は、携帯を取り出すと、ほいとテーブルに置いた。
見られて困るような物はないつもりだ。
相楽は、赤外線で自分の番号等を送り、
「いつも、先輩が肝心な時に捕まらなくて、苦労しました。さぁ、私にも先輩のを送ってください。」
「えっ?」
真田は、女子からの番号やメールアドレスをもらったことが無かった。
言われるがままに、送り返す。
「よし!これで大丈夫っと!」
海斗とピクシーを見ると、二人は席を立ち、それぞれの方向へ歩いて行った。
「じゃぁ、私もこれから部活あるんで、森野先輩を追いかけます!先輩、目撃情報なんかあったら、ちゃんと私にも教えてくださいよ!」
「あ、あぁ。」
「それじゃ、また!」
相楽は元気よく手を振って、ピクシーの後を追った。
“女の子のメルアド・・・ゲットしちまった・・・”
真田は、なんだか不思議な心地で携帯を眺めて突っ立っていた。




