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鷹野は、ふわりと海斗を抱き締めていた。
海斗の心臓は、飛び出しそうな位早鐘を打っていた。
“ど、ど、どうしよう!!”
抱き締める腕は強くは無いので、抜けようと思えば抜けられる。
でも、海斗はやはり、鷹野の温もりが好きなのだろう。
振りほどくことも出来ずに、そのまま鷹野の腕の中にいた。
「・・・ぶ・・・いじょうぶ・・・・だいじょうぶ」
鷹野が耳元で優しく囁く。
“あ・・・なんだか、心地いい。”
しばらくすると落ち着いてきた。
心地よくて、ずっとこうしていたい。
トンっと鷹野の胸に背中を預けた。
すると、ふふっと笑う声がした。
「鷹野さん?」
「もう、大丈夫だよ。」
そう言って、鷹野は腕をほどいた。
「雪宮君、さっき、僕から逃げるようにして帰っただろう。
昨日の事があるから、また彼の事で思い悩んでるのかと思ったんだよ。」
半分当たって、半分はずれてる。この人は一体、鋭いのか鈍いのか・・・。
「ありがとうございます。」
「もう、落ち着いたようだね。」
「はい・・・。」
「まだ、彼の事、悩んでる?」
「・・・。鷹野さん、やっぱり昨日の事、全部覚えているんですよね・・・」
海斗は、視線を下げながら言う。
「あぁ。だから出来るだけ、君の力になりたいと思ってるんだ。」
「あの話、出来れば忘れて欲しいです。」
海斗は耳まで真っ赤にしていた。
「どうして?」
酔って覚えてないだろうと思ったから話したんだ。
「・・・。鷹野さん、俺が好きになったの、男なんですよ。だから・・・。」
「だから、さっきみたいに受け止めている。」
鷹野は笑っていた。
「俺は、鷹野さんにとって、どんな存在なんです?」
「そうだなぁ。かわいい弟?」
「・・・。もういいです。」
「そう、じゃあ、気を付けてお帰り。」
「鷹野さんは?」
「僕はもう少し、仕事が残っているんだ。」
そう言って、にっこり笑った。
よく見ると、鷹野は上着も羽織らず、先程、館内で見かけた格好のままだ。
余程、急いで海斗の後を追ってきてくれたのだろう。
「そう・・・ですか。」
「じゃぁ、また、明日な。」
鷹野は、そう言って海斗の頭をクシャリと撫でた。
「・・・。お疲れ様でした。」
海斗は、帰りのバスの中で考えた。
“なんだろう。弟って。ちょっと子供扱いされているような・・・”
確かに、鷹野からみたら、社会人と学生では違うのかも知れない。
“弟ポジションは、恋愛対象外って言われてるようだなぁ・・・。”
海斗は大きなため息をついた。




