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37  回想  夏の記憶 23

 「北やん、そろそろ再開するぞ~」

東が体育館の扉から顔を出してこちらに手を振った。

北山は、今行くと東に答えた後、海斗にだけ聞こえるような小さな声で言う。

「今はちょっと、まずいな。」

「そうだな。なら部活の後、駅前にあるコーヒーショップで。」

「あぁ、分かった。じゃぁ、取りあえず戻るか。」

北山は、海斗の背中をポンと押した。

“元気出せ”

言葉こそなかったが、海斗にはそう思えた。


 駅前のコーヒーショップは1階のカウンターやテーブル席はいっぱいだったが、2階はがら空きだった。

海斗は、アイスティー、北山はアイスカフェモカを注文すると2階に上がり、隅のテーブル席に座った。

隣の椅子に部活用のバックを置くと、早速北山が訊いてきた。

「お前ら、いつから付き合ってたんだ?」

「実は、お前に見られた日からだんだ。」

あの日以外、部室ではキスはしていない。

「あの日、お互いの気持ちを確かめ合ったんだ。そして・・・キス・・・した。」

なんか物凄く恥ずかしい告白だ。

海斗は顔が真っ赤になった。

だが、意外に北山は冷静にそっかと頷いただけだった。

「蓮の来れない理由さぁ、この間、蓮の母親に俺たちがいちゃついてるとこ見られちゃって。」

「はっ!?」

北山は大きな声を出した。

物凄く驚き焦った顔をしている。

その顔が何だか可笑しくて笑いそうになる。

“お前が見られたんじゃないだろ”

「北山、驚きすぎ。」

「いや、普通は焦るだろ!?で、それから?」

北山は身を乗り出している。

「説教された。男同士で付き合うなって。蓮には近づくなって言われた。」

海斗は、ひどく傷ついたのを思い出し、カップに刺さっていたアイスティーのストローを無駄にグルグル搔き回した。

「それで、部活に来れねぇのかな?」

「それは、ないと思う、蓮の親は俺がバスケ部だって知らないようだった。」

「じゃぁ、なんでかいな・・・」

北山は、頬杖をついた。

「蓮は親に反発してたから、それで家から出してもらえないのかもしれない。」

「あぁ、あいつの性格ならありえる。」

「北山・・」

北山はアイスカフェモカをストローで吸いながら海斗の方を向いた。

「なんだ?」

「俺たち、間違ってんのかな・・・」

「あぁん?」

北山は顔を歪めている。

「自分の子供には、親の期待とか・・・やっぱあるだろ?

それを、男同士っていうのが、がっかりさせてるって解るんだよな・・・。」

北山が呆れ顔で言った。

「あ~。お前、それ、誰の人生だよ?お前の人生は、親の人生か?違うだろ。」

海斗は、少し呆けた顔で北山を見ていたのかも知れない。

今更、そんなありきたりな言葉で勇気づけられるとは。

自分も単純な構造をしているのかな。

「・・・。」

“俺の・・・人生。俺の・・生き方”

まだ不透明には変わりないが、今まで違う考えが出来そうな気がする。

その時、海斗の携帯が鳴った。

二人は、顔を見合わせた。蓮かもしれない。

急いで取り出すと、見知らぬ番号が表示されていた。

「誰だろう?」

通話ボタンを押すと、もしもしと言った。

『もしもし、海斗さんですか?』

年配の女性の声が返ってきた。あぁ、この声は!

『吉川さん?』

『そうです。蓮さんのお世話をしている吉川です。いきなりのお電話すみません。

海斗さんにお尋ねしたいのですが。』

いつもの吉川さんと違い、なにかオロオロしているようだ。

『何ですか?』

『今、そちらに蓮さんはいらっしゃいますか?』

『えっ?いませんが・・・』

海斗は不安になった。

その顔をじっと見ていた北山は眉をひそめた。

『実は、蓮さんが昨日から家に戻られてないのですー』

吉川さんは、泣きそうな声で言った。

蓮が家に戻ってない?

蓮!?何があったんだよ?


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