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36  回想  夏の記憶 22

 海斗は、あれから母親と上手くコミュニケーションが取れずに悩んでいた。

母親は蓮の話題に触れようとしない。聞くのを恐れているのか。

もしかすると、海斗の方から話を切り出すのを待っているのかも知れない。

よそよそしく振る舞う海斗は、自身の心を自ら重くしてしまう。

やはり今日も母親には、おはようと行ってきます以外、何も言わず朝練へ向かった。


「なぁ、海斗、ちょっといいか?」

朝練の休憩で、海斗は北山に呼び出された。

校庭の水道で、辺りに誰もいないことを確かめると北山は口を開いた。

「蓮の事、なんか聞いているか?」

「いや。何も。」

「うーむ。・・・お前ら、また喧嘩した?」

「してないよ。」

喧嘩ならまだ、かわいい。

問題は、それ以上だ。

「そっか。だよな。今回は蓮が暫く休むと親から連絡があったらしいな。喧嘩なら自分で俺に言うだろうし、何で来ないのか詳しい事がわかんねぇんだよなぁ。

携帯も繋がらねぇしなぁ、海斗なら、なんか知ってんじゃねぇかと思ったんだが・・・。」

北山は、考え込むように手を顎においている。

「俺も、何度もかけたけど繋がらなかった。」

蓮は今、何をしているんだろう・・・。

無茶苦茶してなきゃいいけどな。

「なぁ。」

北山が、少し迷った顔をして海斗の方を見ていた。

「ん?」

「今回の事、お前らの、その・・・」

北山は言いにくそうにしている。

「なんだよ?」

「あぁ~、もう!ずばっと言うぜ?お前らが部室でしてたキスと何か関係があんのか?」

「!!!」

言い切った!とばかりの顔をする北山に、海斗は顔を真っ赤にして驚いていた。

「き・・北山・・・」

何で知ってるんだ?見られた?

海斗に動揺が走る。

どこまで知られてるんだ?もしかして皆知ってんのか?

「あぁ~、勘違いすんな!別に責めてる訳じゃねぇし。まぁ、そのなんだ・・・あれだ?」

真っ赤になって俯いてしまう海斗に、北山はふぅと大きなため息をついて、優しい声で言った。

「心配すんな。言いふらしてねぇし、知ってるのは俺だけだ。

お前らが例えそんな関係でも俺らの友情は、なぁ~んも変わんねぇよ。」

「北山・・・」

あぁ。北山は何もかも知ってたんだな。知ってて今まで言わずにいてくれたのか。

この前の七夕ライブの時も、喧嘩の仲裁に入ってくれたのは北山だ。

この“漢”は、ほんとに、もう・・・どうしてこう弱い時に救い上げられるんだろうな。

「お前らの事は、試験前の最後の部活で鍵を部室に取に行った時にな。いちゃついてるのが聞こえちゃってね。うん、まぁ、あれは刺激的だったが、邪魔するわけにもいかないだろ?」

「ははっ。」

北山のお道化た様子に海斗が笑う。

「おっ?ようやく海斗が笑ったな。」

「あっ。」

“ようやく、笑った”かー。

どうやら、俺はかなり落ち込んでいたらしい。

「お前には、適わないな。」

ふふっともう一度笑う。

「でさ、本当のところ、蓮と何かあったのか?」

北山は、真剣な顔で海斗を見つめながら言った。

海斗は、北山なら相談できると思った。

“そして、あの七夕の夜の様に、蓮と会って話がしたいんだ。”


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