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冬休み限定の博物館でのアルバイトが始まった。

シフトは朝9時から閉館の19時までの間、昼休みと15時から16時の各1時間を除いた3時間ごとの3交代制で組まれている。

なるべく多くの学生に社会勉強をしてもうおうというのが狙いの様だ。

今日は初日で、最初のレクチャーをするという事でアルバイト全員が呼ばれている。

「館内の説明をしますから、私に付いてきてください。」

鷹野は、海斗ほか数名のアルバイトを展示室へ連れて行った。

「皆さんには、館内に遊びに来てくれた子供たちのお世話をメインにしていただきます。字の読めない小さなお子さんの代わりに、パネルを読んであげたり、館内案内をしてあげてくださいね。分からないことや、困った事があれば近くの係員に相談してください。それでは、最初の展示へ移動しましょう。」

ぞろぞろと鷹野に付いて移動していく。最初は、館内のエントランス近く、最初の展示場だ。

そこは、いろんな石がガラスケースや展示スペースに置かれていた。

直に置かれた石は直接触れていいようだ。

鷹野は、学芸員らしく展示の解説をしていく。

「では、最初に地球誕生を現した鉱物の展示室です。こちらでは隕石を始め地上のいろんな鉱石を見ることができます。ここの展示品の説明は、パネルにもありますが、タッチパネルでも確認できます。ここでは隕石が珍しいので足を止めてじっくり見られる方が多いですね。では、次に行ってみましょう。」

次は、大小様々な何かが埋まっている化石が展示されていた。

『生命誕生』とパネルが掲げてあった。

地球の誕生は46億年前の事で、その後40~38億年前に生命が誕生したのではないかと言われている。

「先カンブリア代、複雑な化学進化の結果、海の中でバクテリアのような最初の生命が生まれました。」

化学進化と言われると、何だか実験のようだ。化学と生物って紙一重かも知れないと海斗は思った。

バクテリアかぁと、いう声が上がり、鷹野はさらに続けた。

「はい、そうです。40億年かけてバクテリアの様な物が進化した結果、今いるすべての生命が存在するのです。」

徐々にアルバイトの面々が博物館の世界に引き込まれて行くのが解るのか、鷹野はにっこりと笑った。説明はさらに続く。

「それからさらに時が進み、今から5億年前にカンブリア紀の海と言って多様な生命が誕生します。その後、オルドビス紀、シルル紀、デボン紀、石炭紀、ペルム紀と続きます。これらの時代の展示物が少ないのが非常に残念ですが、ペルム紀においては、爬虫類の哺乳類も登場しているんですよ。」

へぇと感嘆の息が出る。

ひと呼吸おいた後、鷹野は言った。

「さぁ、次は遊びに来た子供たちの歓声が一際おおきくなるメイン展示です。」

鷹野に連れられて、皆がメイン展示室に入る。

ほぉという溜息や、わぁと息を呑むのが、あちらこちらで起こった。

「ここに来るの、久しぶりだ・・・。」

海斗は上を見上げて呟いた。

それを聞いた鷹野は嬉しそうな顔をした。

「雪宮君は、彼がお気に入りなんですか?」

彼と言われても・・・。

巨大なT-REXが牙を向けてこちらを見ている・・・構図かな。

「俺・・・いや、僕は、どちらかと言うとスーパーサウルスの方がいいです。」

少し顔を赤らめながら答えると、クスッと鷹野は笑った。

恥ずかしくて、もう一度ティラノサウルスを見上げると、迫力ある頭部や骨格に飲み込まれそうな感覚を起こした。

本当に遥か昔は、こいつらの天下だったんだなぁ。

「恐竜時代の幕開け、三畳紀の地球はすべての陸地が一つになった、大陸パンゲアがあるだけでした。エオラプトルや、プラテオサウルス、爬虫類でない最初の哺乳類アデロパシレウスもこの頃に現れます。」

エオラプトルの標本を見ながら、最初の恐竜は小さかったんだなと思った。

思考を読んだのか、鷹野が声を掛けてきた。

「この子は約1mありますかね、イメージとしては約1mの2足歩行のとかげ?」

1mのとかげと聞き、イグアナを想像した。さらにそれを2足歩行化させ・・・。

デカイ。そして凶暴そうだ。変な想像にブンブンと頭をふった。

それより、人より先に2足歩行?

人類のすばらしい進化もトカゲに先を越された気がして、さらにブンブン振った。

クッと笑うのを堪えている鷹野は、口元を手で押さえていた。

「あの・・・。何か・・・」

「あぁ、ごめん。君の表情が余りにくるくる変わるものだから・・クックク。」

今度は手で目元をふきながら言った。

「目が離せなくてね。」

海斗は、途端真っ赤になった。

“そんな顔で、言うな。”

海斗は、心臓が飛び出そうな位にドキドキした。


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